渡邊雄太帰国会見全文「間違いなくベストシーズンだった」W杯欠場の可能性も言及

出場時間が削られる中で感じた“苦しさ” “頑張った先に何かご褒美が”と信じていた


――トレードデッドライン後、チームがいろいろと変わる中でのモチベーションはどんなものだったのでしょうか?

「正直モチベーションを保つのはすごく大変というのはもう事実です。チームによっていろいろあると思うんですけど、ブルックリン・ネッツでもステイレディーというグループ、試合に出ていない選手たちが練習前に集まったり、練習後に残ったりして人数が多かったら5対5だったり、少ない時は1対1だったりをするグループがあるんです。最初僕はそこに入ることはなくてトレード後はほぼ毎日そのグループで、キャム・トーマスだったり、パティ・ミルズだったりと一緒にやってきたんですけど、そこは正直最初自分にとってすごく苦しかったというか、今まで試合に出られていた分、今までやってきたことをまた一からやらなきゃいけないのかというしんどさはすごくあったんですけど。

たださっきも言ったように自分にとってもそれが今まで当たり前だったんで、試合に出られないっていう状況の中で腐らずにやってきた結果が、今シーズンのトレード前のあれだと僕は思っているんで。だから今もまた一からやり直しという風に思ったんですけど、また頑張った先には来シーズンかはわかりませんが、何かしらのご褒美が出て自分に返ってくるんだっていうふうにしてやるようにはしていました」

――昨年の四国インターハイでは開会式に出て選手たちに声をかけるというシーンがありましたね。5シーズン目という節目のシーズンを終えて、子供たちに何を伝えたいか教えてください。

「自分が小さい時にずっとNBAを夢見て目指して、年齢を重ねていき中学2、3年くらいになると、NBAというと、ちょっとバカにされるような状態もあったりして。そういう中でも自分は信念を曲げずに、そこだけを目標にしてやり続けてきたんで、今、別にNBAでなくてもいいんですけど、目標や夢に向かって誰が何と言おうと夢を持ち続けるということを子どもたちには大切にしてほしいなと思っています。

僕も諦めない、諦めなかったからこそ今があると思っているので、小さい子どもたちにも夢を持つだけじゃない、持つだけではなくて、落ち続けるっていうことを大切にしてほしいなと思います」

――クロージングラインナップに出たことは大きな経験とおっしゃっていましたが、具体的にはどんなところが違うのか、また何が足らないと感じたのかを教えて下さい。

「48分の試合の中で、1ポゼッション1ポゼッション、1ショット1ショットが大事になってくるのはもちろんなんですけど、残りの5分以降とか、そういう時間帯は、やっぱりその一つのシュートだったり、一つのミスだったり、リバウンド、アシストが勝敗に直結するようなプレイになってくるので、そこでのあのプレッシャーの中で、自分を出せる楽しさというか、しかも、昔からテレビで見ていたKDやカイリーが同じユニフォームを着てプレーしているということ、あのヒリヒリした感覚は初めて味わえた感覚でしたね。

その時間帯で出た時に、自分の中での役割ができるなと感じられた反面、まだディフェンスの面では強度を上げられるなと感じていました。あからさまに僕を狙ってくるという時間帯があったので。そこで自分が狙われてもしっかりと対応することと、その時間帯で僕が対応するのは相手のエースなので、そこで抑えるだけのディフェンス力というのは、付けていかなければいけない技術かなという風には思ってます」

――デュラント、カイリーの名前が出ていますが、一流選手はここが違うと感じたことはありますか?

「練習の初日から、彼らはスーパースターと言われるのは理由があるんだなとわかって、カイリーもそうですし、特にKDなんですけど、彼はチーム練習でも個人練習でも一切ダラダラした瞬間がないんです。毎試合もほぼフルで出ている選手なので個人練習の時間の長短はありますが、ドリブルにしてもパスにしてもシュートにしても、やると決めた時間の中で一瞬でも気を抜いたり、ダラダラした瞬間は1回も見なかった。あれだけ身長と技術があればNBAで活躍できるのはあたりまえだと言う人がいるかもしれないですけど、その裏には努力があるんだなと改めて今シーズン、彼と一緒に生活できて、感じた部分でした。本当にあそこまで自分の練習を大切にする人は、ちょっと見てこなかったかなっていうぐらい本当に彼のワークアウトには圧倒されまし」

――地元香川のファンにメッセージをお願いします。

「いつも本当にたくさんの方々に応援していただいて、それがいつも僕の力になってるんで、今後もぜひ応援していただければなと思います。今回も僕も香川にはしばらく帰ろうかなと思っていて、香川でゆっくりできたらなと思っています」


文/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

タグ: NBA 男子日本代表渡邊雄太FIBAバスケットボールワールドカップ2023

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