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2025.11.01

石橋侑磨(モンゴル、ザブハン・ブラザーズ)の挑戦——異国の地で描くビッグピクチャー

想定外は想定内——新天地モンゴルでの暮らし


——モンゴルでの生活についても聞かせてください。周りには富士山よりも高い山があってゴビ砂漠にも近いようですね。馬に乗って遊牧生活を送る方々がたくさんいらっしゃるとも聞きました。なかなか想像がつかないのですが、どんな生活ぶりなのですか?

まず、気候が大きく違いますね。10月半ばで夜は氷点下10℃以下になっています(笑) 雪は10月頭から積もり始めていました。今朝のウランバートルは、ちょっと寒いなと思ったら外は氷点下8℃。日本とはかけ離れていますね。

ほかの部分でも、こちらには日本に似ているものさえないなと僕は感じますし、いろんな意味で「日本は本当にすごく暮らしやすい国なんだな」と実感しています。犯罪や事件が多いということではなくて平和な国なんですけれど、こちらで暮らしていると日本の環境は当たり前ではないなと感じます。

日本はすごく便利ですね。こちらはウランバートル市内こそ栄えていて何でもありますが、クルマで1時間離れれば道路にいろんな動物がいるし、両サイドは砂漠。寒すぎるからかクルマ社会で、トヨタや日産など日本車もよく見かけますが、渋滞も相当ひどいです。僕が暮らしているホテルからアリーナまでは、普通ならクルマで10分程度の距離ですけど、夕方の渋滞時間にはそれが平気で3040分かかるようになります。しょっちゅう事故も起きていますよ。


©B.LEAGUE





食事に関しては、モンゴルには韓国文化が結構入っていて、コンビニでも韓国のカップラーメンやおにぎりがほとんどです。レストランもコリアンレストランが多いですね。

——そうすると、日本食はなかなか食べられないわけですね。

そうです。

——バスケットボール面の環境はいかがですか?

モンゴルではバスケットボール人口に対して使える体育館がすごく少ないようです。体育館を使いたい人はたくさんいるのに施設が少ないので、限られた時間でしか使えません。自分たちのチーム練習はおおよそ2時間。月・水・金は夜68時までフィットネスと筋トレをやって、そのあと10時まで練習しています。

面白いのは、体育館が10時までと言ったら本当に10時まできっちり練習するんですよ。日本だと10時まで使えると言われたらその時刻が完全退館ということが多いじゃないですか。そういう時間の厳しさはあまりなくて、10時半ぐらいまでシューティングしている選手もいます。その後の予約が入ってないからなのか、そのあたりはルーズで(笑)

ただ、ワークアウトをしばらく延長できるのはいいんですけれど、困るのは食事です。自分の家であれば食料を買って帰って料理もできますけど、まだ自分はホテル生活が続いているので食事が思うように摂れないんですよね。

——レストランもその時間にはもう閉まっているとか?

開いていてもラストオーダーがすでに終わっていたり、お酒メインのお店だったりで。それでももちろん食べなければいけないので、どこかに連れていってほしいと頼めば、基本的にファーストフード。月・水・金の夕飯は本当にこのパターンで、チームメイトに運転してもらってファーストフードでテイクアウトしてホテルで食べるパターンですね。だから栄養面ではちょっと心配しています。自分で買い物に行けるときは、スーパーで果物やビタミン系のものを買ってくるようにして、できる限り補っていますけれど…。

もし外食するときは、極力「韓国料理屋さんにして!」と言っています。韓国料理にはいろんなメニューがあって、小皿で野菜をたくさん食べられるじゃないですか。そんなふうに注意しながらこちらの環境にあわせようと必死に生活しています。

——コート上よりも日常生活の方が、もしかしたら大きなチャレンジかもしれないですね。

オンコートももちろん大きなチャレンジであることは間違いありませんけれど、モンゴルの文化的なおおらかさみたいなところに適応するのにも、確かに苦労しています。日本は本当にしっかりしているなと思いますよ。時間とか書類の提出期日とかですね。

実は、最初のオファーではモンゴル入りして34日で家を用意してくれるということだったんですけれど、すでにホテル暮らしが1か月です。毎週のように「来週には家を準備できるから」と言ってはどんどん延期されていて。自分の方で必要な書類があってお願いしても、「明日渡すよ」と言われて1週間過ぎてしまうといったことがもう普通なんですよ。だから、日本が当たり前と思っちゃダメというのを本当に痛感しています。

——なかなかの難敵ですね…。

いや、でもそういった面でも自分は基本的に、すごくいい経験をさせてもらっているなとポジティブに捉えています。行ってみて何が起こるかわからないという前提でモンゴルに来ていると自分でも納得しているので、この国のスタイルに合わせていくのが自分の使命だとも思います。

——日本人はたくさん住んでいますか?

日本語を喋っているのはあまり聞かないので詳しいところはわからないですけど、ウランバートルには僕が暮らしているのと同じ日系のホテルがいくつかあります。たまに、ロビーにいる人たちの会話から日本語が聞こえてくることはありますよ。日本からの観光客が意外と多いのかもしれません。

——ザ・リーグの公式戦は、モンゴル全土で開催されているのですか?

それもいろんな方に質問をされます(笑) 日本だったら飛行機を使ってホーム&アウェーで開催するのが一般的ですけど、ザ・リーグでは加盟10チームがウランバートルにあるUGアリーナという会場で基本的に全試合を行います。1日に最大3試合で、女子リーグを同じ日に開催することもあります。開幕初戦だけはダルハン市というところにある体育館でしたけど、それ以外は全部UGアリーナです。たぶんほかの地区では体育館が抑えられないのでしょうね。

僕らのザブハン・ブラザーズも、ユニフォームには「ザブハン」と書いてあるんですけど、結局活動は全部ウランバートルです。ザブハン県(ウランバートルから約1000km離れている)は本当に草原のど真ん中のような場所で、体育館もあるのかなぁ…。

──練習も全チームが同じ体育館でやるんですか?

僕らは基本的にUGアリーナか、すぐそばにあるサブアリーナのような体育館でやります。2時間ですが、同じ施設で時間をずらして別のチームも練習していますね。ウランバートル近郊の別の施設を使うチームもあるようですけれど。

──他のチームの日本人選手とも顔を合わせることがありますか?

はい。ソルジャー(片岡)と猪狩さんには会場でたまに顔を合わせます。僕らの試合の前後に猪狩さんたちやソルジャーたちの出番があったりすると、入れ替わるタイミングで会えることがあるんです。まだゆっくり時間を取って会う機会は作れていませんが、LINEで繋がっているので、連絡を取り合ってぜひ会いましょうと話しています。







文/柴田健

タグ: 仙台89ERS

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