中学(U15)

2023.04.15

四日市メリノール学院中・稲垣愛ヘッドコーチ指導者インタビュー「基礎基本の徹底で選手の成長を促す」[リバイバル記事]

コート外での“気付く力”がルーズボールやリバウンドに表れる


――稲垣コーチは、選手に考えさせることを大事にしているそうですね。その一環として黒川心音選手に、一時期はタイムアウトから交代まで全て任せていたとか。


そうですね。結局、私がプレーするわけではなくてコートでやるのは選手たち。試合の中で、自分たちで修正しなければいけない場面がたくさんあるのがバスケットです。だから選手たちが自分の頭で考えることを大事にしています。
 黒川は足も遅いし運動能力は高くない子でしたが、その能力の不足をほかの能力で補える。バスケットIQが高くて、私の指導歴の中でも「こんな子がいるのか」と驚くような選手でした。あの子にはもう一皮も二皮もむけてもらいたかったので、ベンチワークなどいろいろなことをさせたんです。しかも最初にそれをやったときにはまだ2年生でしたから、先輩たちに向かって交代も言わなければいけなくて大変だったと思います。

――考えさせることのほかに、指導の上で大切にしていることはありますか?

先ほども話に出ましたが、“気付く力”です。誰かが困っているときに、それに気付けるかどうか、パッと動けるかどうかがバスケットにも表れます。3年ほど前、学校に1本の電話がかかってきました。聞けば電車の中で缶チューハイが倒れていて、それを見た中学生がさっと自分のかばんからタオルを取り出して、床を拭いて缶を拾ったと。それを見た大人が感動して、学校に連絡をくれたんです。その生徒は今の高校1年生で、当時は中1でした。そういうことが自然とできる子は、将来社会に出たときにも絶対にかわいがってもらえますよね。それが一番大事ですし、気付く力こそがルーズボールやリバウンドの差に表れるのだと思います。

――今後に向けて、稲垣コーチ自身の目標を教えてください。

直近ではJr.ウインターカップの連覇。そこに挑戦できるのはうちだけなので、そのチャレンジを子どもたちと楽しみたいと思います。去年の先輩たちや開催してくださる関係者、応援してくれる方々に感謝の気持ちを持ってひたむきに戦いたいです。
 指導者としては、子どもたちに3年間やり切ったな、楽しかったなと思わせるような指導をしたい。選手が楽しくないと思うのは指導者の責任だと感じています。
 あと技術的なことで言えば、徹底してファンダメンタルを身に付けさせること。後々、高校や大学でもバスケットを続けてくれたらうれしいし、その中でファンダメンタルは裏切りません。この先、どこに行っても通用するように、一人一人に基礎からしっかり指導していきたいです。



Profile
いながき・あい/三重県出身/愛知大時代、PGとして2年連続の東海リーグアシスト王。4年次にはインカレ初出場を果たし、卒業後は国体選手としてプレー。その後、外部コーチとして朝明中を指導するようになり、全中準優勝などの好成績を残す。2017年、創部のタイミングで四日市メリノール学院中に移り、18、19年と全中に出場。その後、全中、Jr.ウインターカップをそれぞれ2度日本一に導いている



取材・文/中村麻衣子(月刊バスケットボール)

タグ: 四日市メリノール学院中

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