Bリーグ

2023.03.25

桜井良太インタビュー「たくさんのお客さんの中でプレーするのが選手としての一番の喜び」[リバイバル記事]

初めて壁にぶち当たった」トヨタ自動車時代

――大学時代は東海地区の最優秀選手賞などの多くのタイトルを獲得し、卒業後にトヨタ自動車に入団しました。

学泉に誘ってくれた小野さんは僕が入学するときにトヨタに行ってしまいました。そんなこともあって、「大学のときは誘ったのに指導することができなかったから、ウチのチームに来て今度こそ一緒にバスケットをしよう」と小野さんに誘っていただいて、トヨタに決めました。でも、僕が入団する年に小野さんは日立(現SR渋谷)に行ってしまったので、僕は高校、大学、実業団と誘ってくれた人の下でプレーしたことが一回もないんです。僕が行くとみんないなくなっちゃうっていうジンクスがあるみたいです(笑)。

――何というキャリア(笑)。トヨタ自動車では1年目からリーグ優勝を達成しました。入団していきなり優勝するというのもすごいことだと思うのですが。

個人としてはキャリアで初めての日本一でしたが、正直、「やった、優勝したぞ!」というのはあまりなくて、とにかく試合に出たいという気持ちでいっぱいでした。挫折というか、初めて壁にぶち当たったのがトヨタ自動車に入ったときです。当時のチームには折茂武彦さんや渡邉拓馬さん、齋藤豊さん(東京ユナイテッド)、ポジションは違いますが高橋マイケルさんという日本代表クラスの選手がたくさんいました。それこそ12人中10人くらいが代表か元代表みたいなメンバーで、当時は僕も代表活動に参加させてもらっていたんですけど、代表活動には行くけどチームでは全然試合に出られないというもどかしい時間が続いていました。それがすごく恥ずかしくて、どうしたら試合に出られるかを考えたんです。オフェンス面では当時のチームメイトを上回れる自信がなかったので、じゃあどうするかと。そういう葛藤の中で今、東京エクセレンスのヘッドコーチをやっている同期の石田剛規にいろいろ相談しました。当の石田はケガであまり試合に出られていなかったにもかかわらず、図々しくも僕はバスケットIQが高い彼にいろいろ聞いていたんですよ。

1年目は『とにかく試合に出たい』と、それだけでした。それで1年目の終わりくらいにジョン・パトリックHCから「ディフェンスで相手のポイントガードに付いて、とにかくフルコートでプレッシャーをかけてくれ」と言われました。あとは速攻で走って点を取ること。それがあって2年目には15分から20分くらいの出場時間をもらうことができたので気持ちにも余裕ができて、そのシーズンの優勝は喜ぶことができました。

――ディフェンシブなプレースタイルにシフトしたのはトヨタ自動車時代だったのですね。

そうですね。劇的に僕のプレースタイルが変化した時期でした。今までは点を取ることを求められていた選手が、全く違うスタイルに180度ガラッと切り替わったんです。そう切り替えることができた理由は、いろいろなことを認められたからですね。トップリーグに入ってくる選手って、それぞれが中学や高校からチームの中心だった選手たちだと思います。それこそ所属チームの点取り屋だったような選手の集まりなわけですが、いざトップリーグに入ったときに自分よりも得点スキルの高い選手もたくさんいるわけで、そうなったときにチームの中で何ができるのかと考える必要があります。

それでも自分は点取り屋だと信じてやり続ける選手もいるだろうし、違う役割を見付けてチーム内での自分の居場所やプレータイムを勝ち取っていく選手もいます。僕は後者にシフトしましたけど、金丸晃輔選手(三河)なんかは僕が代表チームでPGをやっていた当時、スクリーンプレーからポッとパスを出せば100%シュートを入れてくれるんじゃないかというような感覚がありました。そういう選手もいるんですよね。

そう考えるとトップリーグに入っていろいろな道に進む選手がいる中で、僕はディフェンスや泥臭いプレーを頑張る方にシフトしていったのかなと思います。

――先ほど桜井選手が挙げた「認められた」というのは自分の進むべき道を認め、ほかの選手の実力を認めることができたという意味合いですね。

そうですね。この選手には負けたくないとか、いろいろ思うことはあると思うけど、チームをコントロールするのはヘッドコーチの役割なので、ヘッドコーチの指示に対してみんなで同じ方向に進んでいく必要がありますし、その方向から外れてしまう選手がいるとチームは真っすぐ前に進みません。 一人一人の意見がある中で、チームには全員が同じ方向に進んでいくためのサポートができる選手が必要で、いろいろな場面を見てきたからこそ僕は今のチームでそういう役割を担っているつもりです。



取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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