Bリーグ

2025.09.29

#8の刻印――長谷川智也(アルティーリ千葉)の不思議な物語

2024-25シーズン——「このチームの太陽に」を有言実行し、A千葉のB1昇格の原動力となる


直近の2024-25シーズン、長谷川は開幕前から「僕はこのチームの太陽になります。外から見ていて、このチームにはそういうキャラがいないように思っていたんですよね」と話し、持ち前の明るさでA千葉に元気をもたらした。ユニフォームはそれまでと同じ#8。現代科学では太陽系には8つの惑星があるとされている…などと長谷川本人は全く意識もしていなかっただろうが、見る側としてそう考えればやっぱり「ハチづいて」いると思えてきた。


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B2での最初の2年間に10317敗、勝率.858という圧倒的な強さを示しながら、2年連続でセミファイナルを勝ちきれずにB1昇格を逃したA千葉の関係者が受けた衝撃は大きかった。チームのメンバーはもちろんのこと、フロントスタッフもA-xxの愛称で呼ばれるファンも含め、そのコミュニティー全体に重苦しい空気が漂っていた時期もある。

しかし、オフの公開練習の時点から「僕が来たからには必ずB1に昇格させます!」と明言した長谷川のアプローチには、全てを一変させる力があったようだ。プレシーズンゲームと天皇杯で、それまで1度も勝てなかったB1クラブから2勝を挙げた流れを経て、A千葉はレギュラーシーズン開幕の頃にはすっかり自信を取り戻していたように見えた。

長谷川の「#8の刻印」がどこかに現れて、A千葉の運命を変えることはあるのだろうか?

A千葉はこのシーズンに、前年自らが打ち立てた歴代最高勝率記録を再び更新する573敗、勝率.950という成績を残し、東地区3連覇を達成。ホームでは30勝0敗で、これは2020-21シーズンに群馬クレインサンダーズが打ち立てた29勝0敗という史上初の無敗記録を勝利数で上回る快挙だった。勢いよく突入したプレーオフでは、クォーターファイナルとセミファイナルをどちらもスウィープで勝ち抜け、ついに念願だったB1昇格が実現した。

長谷川個人の成績を見れば、このシーズンは出場時間がキャリア最少の平均44秒にとどまり、派手な数字を残したとは言い難い。A千葉がB1昇格を決めたセミファイナルの信州ブレイブウォリアーズ戦ゲーム2では、出場機会もなかった。しかし、キャプテンを務める大塚裕土が「対戦相手の視点から僕ら自身には分からないいろんな意見を聞かせてくれて、ものすごくありがたいです」と話せば、杉本慶も「ゲーム1メンタリティー(毎週の初戦で必ず勝つ意気込み)をずっと言われていました。その辺は長谷川智也の仕事です。ちゃんとやってくれますから」と、絶大な信頼を語っていた。アンドレ・レマニスHCは、2年連続で心を打ち砕かれるような敗北を味わった後のシーズンで、「トモヤはトレイ(ポーター)と一緒にチームに加わり、まるで粉々に砕けた破片をつなぐ金継ぎの金粉のように、このチームに新しい価値を生み出してくれました」と、長谷川の存在の大きさを表現した。

このようにチームの信頼を得、B1昇格に大きく貢献した2024-25シーズンの長谷川だが、果たして「#8の刻印」は存在したのだろうか?

A千葉のB2昇格以降3年間のレギュラーシーズンにおける通算成績に、興味深い数字が見つかる。その3年間はちょうど、長谷川がA千葉を相手に闘志を燃やし、また同志として戦った時間と重なるが、A千葉はその期間に通算160勝20敗という好成績を残していた。その勝率は

.88888888….....

となる。

長谷川が現在所属しているA千葉の3年間の格闘を象徴する記録に、同じ期間の
長谷川自身の足跡と運命を刻むかのように、長谷川の#8が無限循環小数の形で並んでいた。

このオフ期間に、長谷川自身に背番号#8について聞いてみると、以下のような言葉が返ってきた。

「サンロッカーズ渋谷から大阪エヴェッサに移籍するときに#22から#8に変えたんですけど、知り合いの占い師さんとの会話でいくつかラッキーナンバーを教えていただいた中に#8がありました。コービー・ブライアントの番号でもあるし、自分の中でしっくりきたんですよね。その後実際に、#8が自分にとってのラッキーナンバーだなと感じることが何度もあって、今まで続けているんですよ」


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8月26日に行われたA千葉の公開練習では、長谷川は変わらぬ明るい笑顔でシューティングに取り組んでいた。今の状況も、かなり「しっくりきている」様子だ。

となると、この先も
「#8の刻印」は生き続けるのだろうか。

2026年秋に幕を開けるBプレミアに向け、一つ興味深い事実がある。2026-27シーズンは奇しくも、長谷川が初めて背番号#8を纏った2019-20シーズンから数えて8年目のタイミングなのだ。

間もなく開幕を迎えるB1最後の2025-26シーズンはその序章。「太陽神・長谷川」がどんな輝きでA千葉の前途を照らしていくか。何やら面白い見どころを提供してくれそうだ。



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文/柴田健

タグ: アルティーリ千葉 長谷川智也

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