ブレックスネーションに彩られたジェフ・ギブスのラストダンス「正しくプレーできた15年間だった」

ラストプレーは盟友・竹内公輔との1オン1
ギブスは、ゲーム1で17得点とシーズンハイ14リバウンド、ゲーム2ではこちらもシーズンハイの36分29秒の出場と同26得点。加えて8リバウンド、5アシスト、さらには通算1002本に到達させる3本のスティールも記録した。通算1000スティールは歴代3人目の大記録だ。こうしたスタッツに残る数字だけでなく、何度もチームを救ってきた分厚いスクリーンをかけたり、起点となってパスを散らしたりとさまざまな面でインパクトを残した。この2戦で見せた姿はまさに“ヴィンテージ・ジェフ・ギブス”と呼べるものだった。まだまだプレーできるのでは──ゲーム1後にギブスにそう尋ねると、彼は「もちろん」と回答してゲーム2に向けてこう続けた。「明日はできるだけ多く試合に出て、今日より良い活躍をして、できれば勝って終えたいなと思います」。白星とはならなかったが、「できるだけ長く出て、今日(ゲーム1)よりも良い活躍をする」という目標は間違いなく達成された。
中でもハイライトシーンとなったのはゲーム2でのラストプレー。残り15秒を切った場面でボールを受けたギブスは、一瞬プレーを続けることをためらった。本来、すでに勝敗が決した後にはプレーしないのが暗黙の了解だからだ。しかし、安齋HCはギブスに「最後に見せてやれ」と言わんばかりにハンドジェスチャーを出す。
待ち構えていたのは、トヨタ自動車時代を含めて8年間共にプレーした竹内公輔だった。「さぁ来い!」──竹内は手をたたき、両腕を広げてギブスを待ち構え、ほかの選手たちは右サイドに固まり、アイソレーションシチュエーションに。ドリブルとレッグスルーを数回突き、ギブスは左手でクロスオーバー、最後は力強いドライブで竹内を抜き去り、26得点目となるワンハンドダンクで試合を締めくくった。
終盤にはコート上の10人全員が現・元ブレックスという状況も訪れ、ギブスのフリースロー時には会場から大きな拍手が送られた。
「チームメイトだった公輔、ナベ(渡邉裕規)、(鵤)誠司、遠藤(祐亮)、マコ(比江島慎)たちとは試合前にちょっと冗談を言いながら、でも、試合になったら真剣にやり合う仲なので、本当にそういう時間も楽しかったです」

旧友たちに見守られながらのラストゲームは、ギブスにとってかけがえのない思い出になったことだろう。
2010-11シーズンの来日からここまで長い日本でのキャリアを想像できたか。ギブスにそう問うと「正直に言うと、2、3年日本でやったら以前に所属していたチームに戻ろうと思っていたのですが、日本に来てここが本当に好きになって、ファンの皆さんも本当に素敵で、チームにも残ってほしいと言われました。いろいろなことがありながらも日本に魅力があったので、ずっとプレーしてきました」と語った。宇都宮やトヨタ自動車の環境、日本のファンの前でのプレーはギブスにとって心地よかった。
そして、気付けば15年が経っていた。その間に彼の子どもたち、特に来日当時6歳だった長男のトレイは21歳の立派な青年となった。「もう髭は僕よりありますよ(笑)。宇都宮の皆さんはトレイが成長する過程を見ていたと思うので。練習に連れて行ったりもしましたし、(そう考えるとこの15年は)長かったと感じます。対戦相手やファンの中でもトレイを知っている人たちからは『大きくなったね』『もう大人だね』という声はよく聞きますから」
ギブスは感慨深げにそう振り返った。今年で45歳を迎えるギブスだが、その1/3を日本で過ごしているのだから、彼の人生も大きくステージが変わった。それだけ長く、しかしあっという間の15年間だった。
写真/B.LEAGUE、月刊バスケットボール 文/堀内涼(月刊バスケットボール)