アルティーリ千葉B1昇格のキーマン? 木田貴明が「Ubuntu(ウブントゥ)」を体現するとき

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「地区優勝が決まってホーム開催が決まりましたけど、ここで喜んでいる場合じゃないです。2年間本当に悔しい思いをしてきたので、今年こそ勝たないといけないと思います。(現行カテゴリーのB1に昇格できる)ラストチャンスですし、皆さんの応援があってこそいいプレーができていると思うので、今後とも応援のほどよろしくお願いします」
3月16日、前日の勝利でB2東地区3連覇を決めたアルティーリ千葉が千葉ポートアリーナでライジングゼファー福岡をスウィープし、3季連続のリーグ最高勝率も確定させた後、木田貴明はコート上でファンに対してプレーオフに向けた思いをこう話した。
これは本音だろう。クラブがB2に上がった2022-23シーズンからブラックネイビー軍団に加わり2年間、木田はリーグ最高勝率で地区優勝しながらB1昇格を逃すという天国から地獄に突き落とされるような体験を続けてきているからだ。個人的には、熊本ヴォルターズに所属していた2021-22シーズンのプレーオフ・セミファイナルでも、ゲーム2の前半に負傷して最後にコートに立っていられずB1昇格を逃すという悔しさも味わっている。「もう十分だ」という心境は想像に易い。
この思いだけでもB1昇格のキーマンの1人と言えそうな木田だが、今季の流れを掘り下げると、木田こそがアルティーリ千葉にとってズバリの「ザ・キーマン」と捉えられそうに思えてくる。一つずつ確認していこう。

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チームの日本人トップスコアラー、長期離脱からの復調ぶりやいかに?
まずは今季の木田のショットメークに関して、フリースローも参考に付して、どんな経過だったかを振り返る。2024年内の日程を終えるまではスターターに定着して平均12.1得点、3P成功率39.5%(同時点でリーグ6位)、フリースロー成功率90.9%(同1位)という成績を残していた。クォーターファイナルで対戦する熊本とアウェイで戦った開幕節第2戦では、3Pショット11本中8本成功を含む30得点。アルティーリ千葉の快進撃につながる起爆剤と形容できる大活躍だった。
しかし全60試合の日程を終えた時点では平均10.8得点、3P成功率36.1%、フリースロー成功率85.0%といずれも若干下降している。大きな要因は、1月13日のバンビシャス奈良戦ゲーム2から3月2日の山形ワイヴァンズ戦ゲーム2まで、約2か月の離脱だ。木田がこの離脱の影響をプレーオフまで引きずるかどうか? それによりチームのパフォーマンスも大きく変わるだろう。ここに木田をアルティーリ千葉のカギと捉える理由がある。
故障により波が大きくなった木田の今シーズンは、全体のアベレージよりも以下のように分解した方が傾向をつかみやすそうだ。こうして見ると、終盤戦の木田は上昇過程にはあったが、上がりきっていないような印象ではないだろうか。
☆木田の2024-25シーズンのアップダウン
■開幕~2024年内 平均12.1得点、3P成功率39.5%(同時点でリーグ6位)、フリースロー成功率90.9%(同1位)
■復帰後4試合 4.3得点、3P成功率6.7%、フリースローはアテンプトなし
■最後の11試合 平均10.6得点、3P成功率36.6%、フリースロー成功率74.3%
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3月8日の愛媛オレンジバイキングス戦ゲーム1でコートに戻ってからもなかなか自分のリズムを取り戻し切れず、復帰から3試合の3Pアテンプトは12本全てがミス。しかし、福岡戦ゲーム2の1Qにブザービーターとなる3Pショットを沈めたところから確率が上がり始め、最後の15試合で全体的なパフォーマンスが急激に上昇してきていた。
復活の狼煙のような、復帰後初の3Pショット成功を受けて、木田はこんなコメントを残している。
「入ってなかっただけで、自分の中では良いショットを打てていました。ゲーム感覚を取り戻していく過程で練習を積み重ねていくうちに、たぶん入ってくると思います。入ってこなくても打ち続けていかないとダメだとも思っているので。でも、今日1本入ったのは、自分の中ですごく良かったです」
上位との対戦が多かった終盤戦で身も心も温まってきている木田。しかし、相手のディフェンスもより厳しくなるだろう。プレーオフではどんなショットメークを見せられるか? 本番を迎えてからのお楽しみだ。
文/柴田健
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