【2019年5月掲載】山崎稜インタビュー「オフェンスでもどんどん点を取れて、ディフェンスでは相手のエースを止められる選手が理想」

栃木への移籍を決断
理想の選手像を追い求める
──その年の秋にBリーグが開幕し、2シーズン目に栃木ブレックス(元宇都宮)に移籍しました。
声をかけていただきました。栃木が強いということも分かっていましたし、環境面を含め、ほぼ即決でした。前年のチャンピオンですし、周りにはすごい選手しかいないというのは覚悟して来ました。自分がこのチームで何ができるのかを考えましたし、そのレベルに追い付かなくてはいけない、人一倍練習しなければということは思っていました。同じレベルに早く立たなきゃという気持ちがありました。
──これまでのバスケット人生の中で挫折などの経験はありましたか?
中学生のときに少し嫌になってしまった時期はありましたが、それ以降はあまりないですね。少しそれますが、アメリカに行って試合に出られない期間に、身体能力の高い選手たちの中で何なら勝負できるかというのは考えなくてはならなかったです。そこでやっぱりシュート。それが生きる道なのかなと思いましたね。そのために打ち込みもしました。その成果が出て、試合に出られて、コーチも信頼してくれて。アピールというか、これまでも自分で何かを示していって、プレータイムを勝ち取っていきました。上には上がいるということを思い知らされたので(笑)。いかに自分を出していって、自分を示していくか。そうしていかなければプレータイムはもらえない。これはアメリカに行ったから分かったことです。
──栃木には田臥勇太選手をはじめ、優れた選手がたくさんいます。彼らから学んだことは何ですか?
このチームのすごいところは一人一人のディフェンスをする気持ちです。試合中も常にその意識が高いです。それは田臥さんやジェフ(・ギブス)、(竹内)公輔さんたちのようなベテランの選手がやっているから、よりすごいと感じています。ベテランの彼らがそういった姿勢なのに、僕らのような若手は一瞬も気を抜いてはいけない。彼らがやっているんだからやらなければ、という気持ちにさせてくれます。
──2019年1月26日の試合では川崎ブレイブサンダースを57点に抑える圧巻のディフェンス力を見せました。そういった部分にもお話にあった意識は出ていますね。
そうですね。逆に強い相手だからこそ抑えてやろう、失点を少なくしようという意識になります。今年は得点もかなり多いですが、栃木は大量得点で勝つチームではなく、ディフェンスでいかに相手を抑えて勝つかというチームだと思っています。1月の川崎戦のように強い相手に対しても、そのディフェンスができるのはすばらしいことです。
──試合中に意識していることは何ですか?
安齋(竜三)ヘッドコーチ(現越谷HC)から言われているのは、プレッシャーをかけ続けて、常に足を動かすことです。そうすることでチームのリズムも生まれますし、そういったプレーができているときは、僕自身の調子も徐々に上がっていきます。チームのリズムが良いときにこれを続けていけば、より流れも良くなりますし、逆に全然得点ができていないときでもプレッシャーをかけ続けて、少しずつでも流れを作っていければなと考えています。それが一番の役割だと思っています。
──レギュラーシーズン(以下RS)は57試合に出場し、プレータイムも倍増しました。このRSは山崎選手にとって、どのような期間でしたか?
プレータイムを伸ばせたことで、いろいろな経験もできて良かったと思います。ただ、スタッツの面で見ると何一つ納得できないです。オフェンス面で結果を残せなかったとしても、ディフェンスをやり続けなければならないと先ほど話しましたが、それが60試合全てでできたのかなと考えてしまう部分はあります。そこを売りにしていこうとしている中で、ディフェンスがイマイチだったり、自分のところで失点してしまったり、相手に良いプレーをさせてしまったところが多々ありました。それが悔しいというか、納得がいかないというか…。もどかしさは残りましたね。
──100点満点で評価すると?
30点か40点くらいですかね。全然ダメです。自分の中で手応えがある試合というのがあまりなかったなと思います。もっとできたのにというふうに思った試合がほとんどで。RSが終わって振り返っても意味がないですが、そうなってしまったなと。
──では最後に。これから先、どのような選手・人間になっていきたいですか?
今はディフェンスを意識してやっていますが、オフェンスでもどんどん点を取れて、ディフェンスでは相手のエースを止められて、といった選手が理想です。栃木でいう遠藤祐亮さんのような。僕の目指す選手像として、遠藤さんが当てはまるなと思っています。いわゆる2ウェイプレーヤー(オフェンス、ディフェンス共に活躍できる選手のこと)と呼ばれる選手ですね。そこが今目指しているところです。
人としてはどうですかね? どのくらいまでバスケットをするかにもよりますが、セカンドキャリアは全く考えていないです。…理想としては、公務員になって安定を求めたいです。これまではチャレンジというか、そういうことが多かったので、その反動ですね(笑)。穏やかな人生を送っていきたいです。

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)