月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.04.10

渡邊雄太(ラプターズ)ブルズ戦で3Pショット1本を含む7得点 - インタビューあり

ヘアスタイルも少し変わった渡邊。明るい表情でメディアに対応していた(写真をクリックするとインタビュー映像が見られます)

 

 日本時間4月9日(アメリカ時間8日)にフロリダ州タンパで行われたトロント・ラプターズ対シカゴ・ブルズの一戦で、渡邊雄太が攻守両面で存在感を示す活躍を見せた。渡邊は16分54秒プレーし、3月11日の対アトランタ・ホークス戦以来10試合ぶり(出場しなかった試合を含めると15試合ぶり)となる3Pショット成功を含め、フィールドゴール3本すべてを成功させて7得点を記録したほか、2リバウンド、1アシスト、1スティールと攻守両面で価値ある貢献をもたらした。
カイル・ラウリー、フレッド・ヴァンヴリートに加えこの日はディアンドレ・ベンブリーも欠場したラプターズは、登録プレーヤーが8人だけ。その一人として効率的な仕事をできたことには大きな意義があるだろう。
しかもその活躍はオフェンス面だけではなかった。ニック・ナースHCはこの試合で、渡邊に相手の得点源であるザック・ラビーンとボックスワンでマンアップする役割を担わせたが、渡邊は期待に応えてその時間帯には厳しくプレッシャーをかけてラビーンを苦しめていた。試合後の会見ではナースHCにアメリカの記者からその点についての質問が飛び、ナースHCは「ユウタにとってはやりがいのある仕事ですよ。コートの端から端までぴったりくっついて追いかけ回すように伝えましたが、素晴らしい仕事ぶりでしたね(That’s a great assignment for him. We told him to go off nose to nose, 94 feet. And Yuta does that assignment really really well.)」と答えていた。

 待望の3Pショット成功を含めオフェンス面で成長の兆しを感じさせた上に、普段通りのディフェンス面での充実した仕事ぶりも伴っていたこの日の渡邊のプレーぶりは、コーチ陣にもチームメイトにもアピールしたに違いない。
試合後の会見にはナースHCに続いて38得点に19リバウンド(うち9本がオフェンスリバウンド)と大いに奮闘したクリス・ブーシェイが、そして最後には渡邊も姿を見せた。そこで直接得渡邊に、昨今の活躍につながったであろう背景について、方向性の異なる質問を3つさせてもらった。以下がそのやりとりだ。

 

――NBAとGリーグの行き来をしていた頃は、NBAに対してどこか構えてしまうところがあると言っていましたが、今シーズンはそういったことはなくなりましたか?

 

 いい意味で慣れも出てきているので、変に緊張することもないです。前の2シーズンは基本的にずっとGリーグにいて、コールアップされてもあまり機会ももらえず、もらえたときは本当に人数が少なくてチームとしては僕を出さなければいけないみたいな状況が多かったので、正直気持ち的に難しい部分がありました。ありがたいことに今シーズンはずっとNBAにいさせてもらっているので、去年感じていた変なプレッシャーのようなものはなくなってきていますね

 

――フレッド・ヴァンヴリートとディアンドレ・ベンブリーは大学時代に対戦したことがありました。ヴァンヴリートはハワイで痛い目を見せた相手だったと思いますが、そういったことが何か助けにはなっていますか?

 

 チームメイトはみんないいやつばっかりで、みんなと仲良くさせてもらっています。ベンブリーとは大学時代にかなり対戦しているので、そういう話もよくします。特にA10(アトランティック10)カンファレンスの、僕が2年生のときにブルックリンで行われた試合(A10トーナメント準々決勝)で、僕たちが前半20点くらい勝っていたのに最後に逆転されて、僕たちはNCAAトーナメント行きを逃して彼らはそのまま優勝して(NCAAトーナメントに)行った話とか。フレッドとは一回だけハワイでの話をしたんですけど、ジョージ・ワシントン大に負けたことは覚えていましたが、さすがに僕がそこにいたっていうのは覚えていなかったですね。

 

――オフェンス面では、ファン心理としてはまだかまだかといった感覚で見ていた人も多かったと思います。コーチ陣からはどんなアドバイスをもらっていましたか?

 

 やっぱりリング周りのフィニッシュ力が僕にはまだついていないので、そこの部分は重点的に練習していました。メンバーがそろっていたときは、やっぱり出ても短い時間で交代というような状態だったので、僕の意識としてはまずやっぱりディフェンスで僕がやらなければいけないことをやって、チームに貢献できればと思っていました。

 ただ、それだけで生き残っていくのは難しいですし、それは僕が一番わかっているのでリム周りのフィニッシュ力をつけて…。3Pは、タッチ自体は悪くないと思っていて確率は上がってくると思うので、あまり心配はしていないです。もう少し積極的になっていくところはなければいけないなと思っています。

 

 最初の2つのやり取りから、渡邊がラプターズではすでにNBAでの居場所を確立できていることがうかがえる。そのような環境が、渡邊にプレーに集中することを可能にしているのではないだろうか。

 最後のやり取りはかねてからナースHCも会見で話してくれていたことだ。この日の試合で渡邊は、ボールを持ってラウリ・マルカネンと左コーナーでマッチアップし、バックビハインド・ドリブルをうまく使ったクロスオーバーでベースライン際を抜いてレイアップを成功させていたが、こうしたプレーは目前の状況を打開して得点してくる能力がついてきている証しだろう。コーチ陣との間で課題を共有し、改善に努めていることが実ってきているのだ。

 

 なお、この日の試合はブルズが122-113で勝利した。これにより、イースタンカンファレンス10位のブルズ(22勝28敗)と11位のラプターズ(20勝32敗)に順位の変動はないが、両者のゲーム差が3に広がり、プレーオフ進出を争うプレーイン・トーナメント(カンファレンスの10位までが出場できる)への出場権争いで、ブルズが一歩前進した形になっている。

 

☆次ページ: ニック・ナースHCの試合前会見

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