月刊バスケットボール5月号

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2021.02.19

弓波英人(NCAAディビジョンIジョージアサザン大学3年生) - 夢の続きを描く2021年の春(2)

2018年の夏、弓波英人はジョージアサザン大学入りを実現した。手にしたのは奨学金がつかないウォークオンとしての立場。シェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)がジョージア工科大学在籍時に置かれていた立場と同じということになる。
文/柴田 健(月バス.com) 

 

「ちょっと無理かな…」と思ったディビジョンI入りだったが、歓喜のときはやってきた(写真=AJ Henderson/Georgia Southern Athletics)

 

しぶとくつかみ取ったウォークオンのスポット

 

 パインレイク・プレップ高校でバックコートの中心的存在として活躍してきた弓波だったが、小さな頃から夢見てきたNCAAディビジョンIのカレッジでプレーするという夢は、簡単に手にすることができるものではなかった。
「本当に最後の最後まで決まらなくて、ようやく得られた今の立場は奨学金のないウォークオンです。身長が168cmでスキルや身体能力も抜きん出ているわけではないですし。ただ高校のコーチが以前ディビジョンIのコーチだったので、いろいろなコネクションがありました。コーチからは『絶対にお前は(ディビジョンIの)どこかでやれる』と言われていました」
学業も優秀だった弓波にすでに言葉の壁はない。バスケットボール面の実力はコートで示し、実績も残してきた。それでも、バスケットボールのエリートの世界から、積極的なお呼びの声はかからなかった。
「ディビジョンIでやることが一つの夢でした。でも正直、自分でもちょっと無理かな…とも思いましたし、両親にも学業で良い大学に入るように言われていました」
ただ、それでも最後まで粘っていた弓波に、パインレイク・プレップ高校のコーチ陣は手を差し伸べた。どんな形でも…――それまでチームを支えてきた功労者のそんな思いと努力を買ってくれていたのだ。
「スカラシップのプレーヤーが決まった後にウォークオンを探す期間があるのですが、その時期にコーチがいろんな大学のコーチに『ウチにいいヤツがいる』と連絡をしてくれて。いくつか話があったのですが、本当に『ウォークオンで入っていいよ』と言われたのがジョージアサザン大学(以下GSU)でした」
GSU入りを知らせる連絡は、高校でスペイン語の授業を受けていたときに電話でもたらされた。奨学金を得られるかどうかはそのときの弓波には問題ではなかった。NCAAディビジョンIでプレーすること。それが実現するのだ。「アシスタントコーチから電話がかかってきて、『ウォークオンのオファーをあげるよ』と言われて、ソッコーで、親にも連絡する前に『行きます』と言いました! そのあと授業を抜け出して連絡を入れましたが、スペイン語の先生もそういう状況をわかってくれていて、『入れた!』と伝えたら一緒に喜んでくれました」
晴れて2018年の夏、NCAAディビジョンIのバスケットボール・プレーヤー、弓波英人が誕生する。



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