西田優大がキャリアハイ30得点!若手がけん引する“新生・シーホース三河”の確かな成長
3月19、20日のサンロッカーズ渋谷戦を連勝で終えた時点で、シーホース三河は21勝17敗の西地区4位、ワイルドカード3位と、チャンピオンシップ進出の可能性も視野に入っている。
カイル・コリンズワースや橋本晃佑といった本来大きなロールを担うはずだった選手がケガで欠場する中でのこの成績は、及第点とも呼べるものだ。
■若い力が躍動し、攻防にアグレッシブなプレーを連発
迎えた3月23日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦。11月の対戦では1勝1敗と星を分けたライバルとの“愛知ダービー”でも、三河は若手が起点となった見事な戦いぶりを見せた。
1Qは名古屋Dが強度の高いディフェンスからスティールやディフレクションで三河のリズムを乱すと、攻めてはこの10分間だけで8選手が得点する的を絞らせないバランスの良さを見せ、2Qには最大13点のリードを取った。
反撃の口火を切ったのは2月に選手登録を行ったローレンスⅡだった
しかし、ここから三河が反撃に転じていく。前半だけで3Pシュート3本を含む19得点を挙げた西田優大と、名古屋 Dの強固なディフェンスをドライブでこじ開けたアンソニー・ローレンスⅡを軸に、攻防に名古屋Dのお株を奪うようなアグレッシブなプレーが連発。前半終了までに4点差に迫り、後半には開始早々の10-2のランで一気に逆転した。
その後は一時、名古屋Dに流れを渡しかけるシーンもあったが、「今日はディフェンスで相手のターンオーバーを誘発でき、そこから走ったり、オフェンスにつなげるケースが多かった」と鈴木貴美一HCが振り返るように、最後までディフェンスの強度を落とさなかったことが、最終盤で再び三河がリズムをつかむ大きな要因となった。
最終スコアは93-87での勝利。この1勝で三河は22勝17敗としたが、ワイルドカード2位に着ける秋田ノーザンハピネッツも同日の試合に勝利(24勝15敗)したことで、今節でのランキングの変動はなし。
その秋田とは4月16、17日に敵地での連戦が控えている。そこまでに順位変動が起こる可能性も十分に考えられるが、一つの節目となりそうなのは、この秋田戦だろう。
■西田優大を筆頭に将来性豊かな集団に
この試合で特に際立った活躍を見せたのが西田だ。日本代表としても頭角を表してきた23歳は、約36分の出場でキャリアハイの30得点。3Pシュートに関しては7分の6を射抜くモンスターパフォーマンスだった。「気付いたら点を取っていたという感じです。打てば入ったし、それを理解してチームメイトもよくパスを回してくれたので、その結果がスコアにつながった」(西田)
そんな西田について、鈴木HCは「本当に頼もしい」とし、「日本代表として、(国内の)レベルの高い選手たちと練習して、海外の選手とも対戦したことで余裕が出てきたと思います。最初の頃は少し迷いながら、遠慮しながらプレーしているように見えましたが、今は練習から『自分がやるんだ』という気持ちでやってくれているので、そういうメンタル的なところが一番変わったと思います」と、大きな成長を感じている。
西田だけではない。2月の選手登録から瞬く間に主力となったローレンスⅡはこの試合で29得点を奪い、さらに不動のスタメンとしてインサイドを任されるシェーファーアヴィ幸樹や角野亮伍ら20代前半の選手たちがチームに新しい風を吹かせている。
西田(左)やシェーファー(右)の活躍が三河更なる飛躍のカギを握る
若手の活躍には「2年前くらいまではベテランの選手たちがやりたいプレーを軸に、若手がそれに合わせていたような感じでした。それが、今は若い選手が主体でやっているので、ファストブレイクやボールスクリーン、スペーシングを有効活用するようなバスケットができています。まだまだ伸びしろもあるので非常に楽しみ」と、鈴木HCも手応えを感じている様子。
ただ、「持っているものはすごく良いんですけど、まだそれがかみ合わなくて大事なところでミスをしたり、してはいけないターンオーバーやファウルをして接戦を落とすこともあったんです」と成長痛のような悩みも。西田も「何をすればチームが良い方向に向くのかの答えは、シーズン序盤に出ていたのですが、それがなかなかチームとして遂行できませんでした。それが負けが込んだりする結果になっていた」と同様の難しさを口にした。しかし、「最近はそれがしっかりと遂行できるようになってきたので、そこが変化だったと思います」とも。
ターニングポイントは3月16日に行われた琉球ゴールデンキングス戦だったそうだ。「その試合は自分たちのシュートがなかなか決まらずに負けてしましたが、ディフェンスはすごくよかったですし、チームとしてすべきことはできていたと思います。そこからは何をすれば戦えるのかをチームとして理解できたというか、すべきことが遂行できるようになったと思います」(西田)。そこからの3連勝だったというわけだ。
彼らのような若い選手に元B1得点王のダバンテ・ガードナーやオールスター選出経験もある細谷将司らベテランと、長野誠史やジェロード・ユトフら中堅組の融合が深まれば、“新生・シーホース三河”がリーグの勢力図を変化させる可能性は十分にある。
昨季まで長く主軸を担ってきた金丸晃輔が退団し、本格的な世代交代の最初のシーズンとなった今季。来たるチャンピオンシップへの進出争いはもちろん、来季以降も三河の成長に注目していきたい。
取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)
写真/©︎B.LEAGUE