吉田舞衣(シャンソン化粧品シャンソンVマジック) - FIBA女子ワールドカップ2022予選日本代表候補名鑑

写真/ⒸJBA

「合宿に参加させていただけるということを聞いたときは、正直リーグを経験してから1年しかたっていないし、なんで自分が…と思ったりもしたんです」と謙虚に話す吉田舞衣は、今回招集されたメンバーの中で赤穂ひまわり(デンソーアイリス)、馬瓜ステファニー(トヨタ自動車アンテロープス)、オコエ桃仁花(富士通レッドウェーブ)が学年として同期。しかしその中で、大学を経てWリーグ入りした唯一のプレーヤーであり、経験のなさから、まず最初のステップは自身の立場を確立することだったようだ。恩塚 亨HC率いる日本代表合宿は、さまざまな刺激を得る機会になった。


代表候補としては昨年の東京2020オリンピックを前にした合宿でも名を連ねたものの、今回の合宿は心の準備を追いつかせるような意味合いが強かったのかもしれない。「バスケットボールの技術面ではもちろん、自分が思っていた気持ちや性格的に考えてしまうところを、恩塚さんにいろいろなお話をしていただいて、どちらかというとメンタルの面でいろんなことを学ばせてもらえた合宿でした」と話している。

 


Wリーグでは2020-21シーズンからプレーしている。拓殖大学からアーリーエントリーでシャンソン入りした1年目は、6試合ですべてスターターとして出場し平均16.0得点のアベレージを残した。3P成功率36.6%も、まずまずというよりも1年目としては今後を期待させる上出来の数字だった。ルーキーとして開幕からプレーしている今シーズンも、1年目の数値には届いていないものの平均12.4得点、3P成功率31.8%とハイレベルなパフォーマンスができている。


シャンソンというチームの雰囲気の良さが悪い意味での緊張感を解き、自分らしさを発揮できている要因になっているというのが本人の分析。「最近やっとですけど、チームの中でもひるんだりしないでプレーできるようになりました。李さん(シャンソンの李 玉慈HC)もバスケットのことだけではなく考え方とか気持ちの持っていき方の話もたくさんしてくださるので、悩んだりうまくいかないときももう一度自分でちゃんと受け止めて、じゃあこうすればいいという切り替えができていたと思います」


謙虚な中にも自信が徐々に芽生えてきたという文脈のコメントだが、実績としては、最大の武器である3Pショットを軸として、逆に自信や思い切りの良さがなければ披露できないパフォーマンスを出してきている。だからこその代表候補入りだということは自身でも感じていることだろう。「自分はやっぱりシュートを見てもらってこの合宿に呼んでいただけた」とも話し、「まだまだ不安もあるけど、(合宿に)来る前よりは充実しています」と笑顔を見せていた。

 

 

 吉田の立場からすれば、世界で銀メダルを獲得し、アジアでは無敵の強さを誇る現在の代表メンバーを“格上”と感じるのも無理はない。「最初はノーマークでも打つのに緊張しちゃうようなところがあった」と明かし、「同じシューターとして、私はオリンピックもアジアも行っていないのに、上の方たちと一緒にプレーできたのはすごいと思ってしまって…」と素直な心境を語る。


会見での吉田の言葉からは、百戦錬磨の“お姉さん方”に対する大きな敬意と、自身の課題に向き合う葛藤のようなものが同時に感じられた。「(先輩たちが)どんなパスが来てもどんなチェックが来ていても、打つという気持ちを決めて迷わずに打っている姿とか、かわして打つときも体がブレなかったりとか…。ただただ打っているだけではないなというのがすごいと思いました」。ここで得たヒントやインスピレーションは、間違いなく田のパフォーマンスをグンと伸ばすジャンプ台になる。早ければその成果が、2月10日(木)からのFIBA女子ワールドカップ2022予選の場で確認できるということになる。最終ロスターに残ったら、世界をぎゃふんと言わせる一撃をきっと決めてくれるだろう。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)

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