ラマスジャパンがフランス撃破! 世界を驚かす準備完了

八村は力強さと落ち着いたプレーぶりで日本代表をけん引した(写真/©JBA)

 

大きな自信をもたらす歴史的勝利


これはものすごいことが起きるかもしれない――そう思っている間に、試合はどんどん日本のペースになっていく。11-12の時点から第2Q序盤にかけては日本に14-5のランが飛び出し一気に25-17となる。この間比江島 慎(宇都宮ブレックス)、シェーファー アヴィ幸樹(シーホース三河)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)とメンバーが変わって入ってきても、コート上の緊迫感が途切れず全員が集中していた。
日本代表はさらに、金丸晃輔(島根スサノオマジック)の得点を皮切りに第2Q残り2分51秒に比江島がゴベアとのミスマッチを突くドライブからレイアップを決るまで15-7のラン。この時点で40-24とリードを広げ、クォーター終了時点でも46-30とそのリードを保つことに成功した。

 

 ここまで日本のターンオーバーはまだ記録されていなかった。完璧な前半戦を終え、歴史的な勝利が見えてくる。しかしフランス代表側から見れば、これは来日初戦の最初の20分間。第3Qには違う姿を見せてきた。

 

 ヒートアップしたフォーニエに8得点を奪われ、ゾーンディフェンスもうまく攻略された一方で、強度を強めたフランス代表のディフェンスを攻めあぐんだ日本代表は、このクォーターでは15-28と押し返された。第2Qの貯金をほぼ掃き出した日本は61-58でまだリードしていたものの、ここまで追い上げられると、終盤に向けて優位なのは、圧倒的な経験値があるフランス代表だと見るのが妥当だ。

 

 しかし勝負としては、ここまでくればどちらが勝ってもおかしくない。最終クォーターで勝負できる、しかもわずかでもリードを保ってこの位置に立てたということは、日本代表にとって非常に大きな価値がある。

 

 緊迫した状況で迎えた最後の10分間、日本代表はギアを一段階上げる。幕開けは比江島の3Pショット。インサイドにアタックした八村からのキックアウトを受け、追いすがるディフェンダーをドリブルからのステップバックで交わしての非常に難度の高いショットだった。

 

比江島は勝負どころでビッグショットを決め大きな仕事をした(写真/©JBA)

 

 続くフランスのオフェンスがターンオーバーで終わった後、八村がこれも難しい振り向きざまのベビーフックをディフェンダーの頭越しに放り込む。次のディフェンスでは馬場がインサイドへのパスをうまくはじき、これが相手のキャッチミスを誘ってボールを奪い返した。その返しのオフェンスでは、八村のドライブ&キックからコーナーでパスを受けた比江島が3Pショットを沈め、さらにファウルも誘ってフリースローを成功させる。

 

 残り時間は8分25秒。9-0のランで日本代表が70-58と12点差のリードを築き上げていた。

 

 フランス代表は浮足立つことなく攻め返す。ここからの約5分間、日本は4-16と強烈な巻き返しを食らい、残り3分46秒にバトゥームが左コーナーから3Pショットを決めたところで74-74…。しかし日本代表の方も浮き足立ってはいなかった。

 

 しかも是が非でもほしいところでディフェンスの好プレーが出た。日本がリードを奪い返したプレーは、ナンド・デ-コロのパスを死角から飛び出してインターセプトした馬場が、カウンターでダンクに持ち込んだプレーだった。

 

 最終的にこれが決勝点。日本代表はその後も馬場が果敢なドライブからフリースローで加点し、さらに八村が1本、渡邊が2本フリースローを加えた。対してフランスはフォーニエが重要なフリースローをミスし、また残り13.7秒からのオフェンスでインバウンドプレーからのクイックヒッターを成功させることができず、チャンスを逃した。最終局面では、馬場の積極性と八村、渡邊の落ち着いた存在感が際立った。

 

 男子日本代表は八村、馬場が合流する前の3試合を1勝2敗、フルメンバーそろっての2試合を2連勝で締めくくり、いよいよ東京オリンピック本番の日程に入る。直前までの合宿では連係もいっそう改善されることだろう。「世界を驚かせる」のはこれから。しかし、まずはこの勝利で、日本のファンを少なくともちょっとは驚かせ、また大いに喜ばせたのではないだろうか。



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