NBA

2021.05.19

渡邊雄太(ラプターズ)の2020-21シーズン総括 - 「とにかく楽しいシーズンでした」

2021-22シーズンはトロントの町でさらなる飛躍に期待

 

 翌日行われた渡邊自身の会見でも、同じ質問を本人にさせてもらった。「本当に中身の濃いシーズンだったので、一言にするのは難しいですが」と切り出した渡邊は、「とにかく楽しいシーズンでした」と答えた。「思ったよりチームは勝てなかったですし、(本来のホームとは)違う町にいたり、コロナのプロトコルで選手が途中でプレーできなくなったりとか」。そうしたしんどい時期に、「チームは一つにまとまって同じゴールを目指していましたし、僕自身もいろんな波がある大変なシーズンでした。今思い返しても本当に中身の濃い、楽しい1シーズンだったと思います」

 

2020-21シーズンは渡邊にとって飛躍のときとなった(写真をクリックするとインタビュー映像を見られます)

 

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ラプターズは今シーズンを通じて、本来のトロントではなくフロリダ州タンパに臨時のホームを構えて72試合のレギュラーシーズンをプレーした。その影響は大きく、ラプターズは開幕からの10試合で2勝8敗と低調なスタートを切ることとなった。
渡邊の活躍が特に脚光を浴びるようになった1月から2月にかけて徐々に復調し、2月19日にミネソタ・ティンバーウルブズをアウェイで破った時点で勝率が今シーズン始めて15勝15敗の五分に到達。2日後の21日にフィラデルフィア・セブンティシクサーズを倒した時点で16勝15敗と勝ち星が先行した。
ところが2月26日の対ヒューストン・ロケッツ戦前にチーム内で新型コロナウイルス感染が発覚し、ナースHCを含むコーチ陣6人がベンチに入れず、スターターのパスカル・シアカムも欠場という事態を迎える。パンデミックの直撃を受けたラプターズは、このロケッツとの試合こそ勝利したものの、続く15試合で9連敗を含む1勝14敗という泥沼にはまり、以降本来の力を見せることなくシーズンを終えることとなった。
そのような厳しい経過の中、渡邊は故障欠場した時期もあったが、特に4月以降急激にパフォーマンスを高め安定した出場時間を得るようになった。定評のあったディフェンス面での奮闘に加え4月には4度2ケタ得点を記録し、特に16日の対オーランド・マジック戦ではキャリアハイとなる21得点で勝利に貢献。急成長を見せた渡邊にラプターズは本契約をオファーし、18日にサイン、翌19日に発表するに至った。
ラプターズにとって厳しいシーズンだったに違いないが、渡邊の活躍はその中で明るい希望をもたらす要素の一つだったのは間違いないだろう。ナースHCの前述のコメントからも、ポテンシャルの高さに対する評価と今後への期待が感じられる。
ラプターズはオフに入ってからもしばらくはタンパを拠点とするだろうことを、ナースHCは明かしていた。しかし来シーズンに関しては、トロントに戻って本来の状態でシーズンを過ごすことについて楽観的な見通しを持っているようだ。トロントには日本人の大きなコミュニティーがある。現地記者は、もしも渡邊が実際にトロントでプレーすることになれば、ファンベースに非常に大きなインパクトがあるだろうと話してくれた。「普通に良いシューターのレベルから恐いシューターになってほしい」というナースHCの要求は高いが、若手の育成支援体制についてもラプターズは定評がある。2021-22シーズンには、トロントの町で爆発的な人気を獲得する渡邊の勇姿を見られるかもしれない。

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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