月刊バスケットボール7月号

Bリーグ

2026.06.01

大塚裕土(アルティーリ千葉)が千葉に残す現在進行形のレガシー

4月22地のホームフィナーレ後に行われた引退セレモニーより(©B.LEAGUE)

アルティーリ千葉を創設直後の2021年からキャプテンとして率いてきた大塚裕土が、53日にららアリーナ東京ベイで行われた千葉ジェッツ戦を最後に、現役生活を終えた。「創設5年で日本一」という当初の目標を現実として狙える位置まで導き、シューターとしても最後までの眩しい輝きを放ちながら。


ブラックネイビーのユニフォームで活躍した5年間は、16年間にわたる大塚のキャリア全体の3割以上を占める。1チームで過ごした期間としては最も長く、それ以前にオールスターMVP、天皇杯制覇など多くを成し遂げていた大塚が、新たな価値や哲学を体現した期間でもあった。


こちらも引退セレモニーより、我が子から愛情いっぱいの手紙を受け取る大塚(©B.LEAGUE)





歴史に残る快進撃、失意の敗北

B3で戦ったクラブ創設初年度の2021-22シーズン、大塚はホームとする千葉ポートアリーナでの初戦(シーズン自体としては3試合目となる1016日のアイシン アレイオンズ戦)で、いきなりそれまでのB1キャリアハイを上回る25得点を記録してチームを83-72の勝利に導いた。この勝利を含め開幕から8連勝と好スタートを切ったこのシーズンは、優勝こそ逃したものの377敗(勝率.841)の2位でトライフープ岡山との昇格決定戦に臨み、100-69の快勝でB2入りを決めた。大塚は「このような試合を最後にお見せすることができてよかったです」と、クラブとして一つ目のハードルをクリアした喜びを言葉にした。

2022-23シーズンはB2東地区をリーグ最高成績で初制覇。B1昇格に向けたプレーオフの戦いを前に弾みのつく結果を得たことについて、大塚は「このクラブにはタイトルがなかったので、こうして一つ手に入れられたことには大きな意義がありますね」と自信を深めた様子だった。ところがプレーオフでは、長崎ヴェルカとのセミファイナルでゲーム3にもつれ込む激闘を落としてしまう。大塚と共同キャプテンを務めていたレオ・ライオンズが、初戦のティップオフ早々に故障離脱したことで大幅なゲームプラン変更を余儀なくされ、その試練を乗り越えることができなかった。ゲーム3で杉本慶が脳震盪に見舞われたアルティーリ千葉は、B1昇格を逃しただけでなく3位決定戦でも西宮ストークス(現・神戸ストークス)にスウィープで敗れてしまった。


長崎ヴェルカと激闘を演じた2022-23B2プレーオフセミファイナルより(©B.LEAGUE)

ただ、クラブとして失意のエンディングではあったものの、西宮との最終戦には3008人の観衆が足を運んでいた(ゲーム12295人、2試合合計5303人)。地域からの期待と愛情が大きく、深く育っていたことは明らかだった。

全てを終えた後、大塚は「目標を達成できなかった悔しさを(3位決定戦までの)1週間で解消することができませんでした」と心境を明かしたが、「このクラブのミッション達成に向け、自分がしっかりリードして来シーズンもしっかりやっていきたいです」と前を向くコメントを残している。実際、大塚はオフに入ってもほとんど休みをとらず、3位決定戦終了から数日後には再起に向け練習を始めた。夏場の公開練習で顔を合わせた際には気力も充実した様子で、「新B1基準(Bプレミア参入資格を満たす条件)となる平均4,000人の集客達成に向け、まずはレギュラーシーズンで一番の勝ち星を挙げて、たくさん面白い試合を皆さんにお見せできるよう頑張ります」と意欲をみなぎらせていた。

迎えた2023-24シーズン、アルティーリ千葉はレギュラーシーズンにおいてB2歴代最高勝率を更新する564敗(勝率.933)という成績で東地区連覇を達成。ホームゲームの平均入場者数では、新B1基準を大きく上回るB2トップの平均5005人を記録した。大塚は個人としても初タイトルとなるベスト3P成功率賞を受賞。出場時間が2022-23シーズンの平均2712秒から2021秒に減ったにもかかわらず、3P成功率を36.4%から44.0%、平均得点も8.6から9.2へと上昇させていた。リーダーとしての責任と向き合いながら、同時にシューターとしての自らの価値を証明してみせた。

しかしこのシーズンも、チームは越谷アルファーズとのセミファイナルでスウィープ負けを喫し、B1昇格を逃してしまう。直後のコート上では、感情の波に飲み込まれこぼれ落ちる涙を止められない大塚の姿があった。キャプテンとして2年連続で目標を達成できなかった悔しさは想像も及ばない。

ただ、この経過を失敗、不幸と断じるなど、誰にできるだろうか。究極的な望みをかなえることができなかったとはいえ、物語は終わったわけではない。大塚が率いたチームが一歩ずつ前進を続けられていたことを示す兆候が、それまでの旅路を埋めている。

シーズンのエンディングも前年とは違った。山形ワイヴァンズとの3位決定戦はスウィープで勝利し、チーム最高成績となる3位フィニッシュ。最終戦の4Q3Pショットを沈めて、大塚より少し早く現役生活に終止符を打った岡田優介の雄姿にも飾られながら、この先も長く語り継がれるだろうシーズンを勝って終わることができた。この3位決定戦の2試合では計9669人(ゲーム14557人、ゲーム2では5112人)の入場者数を記録したが、これは前年の3位決定戦に比べて82.3%増だ。コロナ禍の地道なクラブ運営と大塚が率いた3年間のチームの戦いぶりが、地元のバスケットボール熱をさらに高めたことを、目を見張るばかりの急拡大を続けるファンベースが証明していた。

3位の座を確定させた後の取材で大塚は、「B2で戦っている僕たちの試合にこれだけたくさんの方々が来場してくださるのは光栄です。決して当たり前ではありません」と、ファンに対する謝意を示すとともに、「一つの負けがこの世の終わりみたいな受け止め方で、許せないような緊張感がありました」とチームの戦いぶりを振り返っている。自身のパフォーマンスについては、「プレータイムが減ってスターターを外れても結果を出すのがプロ。年齢も関係ありません。3P王、2P成功率50%以上、得点のキャリアハイ更新…。結果を残す力があるところを見せられたのは自分自身の成長だと思います」。前向きな言葉から、大塚の心がすでに次の挑戦に向かっていたことが伝わってきた。

ウブントゥの体現、B1昇格

2024-25シーズンのアルティーリ千葉は、まさしく神がかり的な強さでレギュラーシーズンを突き進むとともに、20241017日にはBプレミア参入のライセンス交付を実現した。大塚は「パートナー、行政、A-xxの皆さんが日ごろから支えてくれているおかげで、Bプレミア入りが決まったと思っています。本当にありがとうございました」と感謝を素直に言い表した。

新たな時代に一歩を踏み出したアルティーリ千葉は、大塚のリーダーシップの下、歴代最高勝率を2年連続で更新する573敗(勝率.950)とリーグ初のホームゲーム30勝無敗という快記録とともに東地区3連覇を達成。大塚は個人としても、自身2年連続となるベスト3P成功率賞(成功率39.6%)を手にした。

このシーズンの開幕前に取材させてもらったとき、大塚は自身の役割が変わり出場機会も限られてくるだろうことを念頭に置いていたからだろう、決してすっきりと明るい表情をしていたわけではなかった。それでも、「コーチ陣が自分を使わずにはいられないような実績を出していきます」と自身に言い聞かせるように語っていた。

60試合を通じて有言実行を貫いた大塚は、「シューターとしての自分の存在意義を証明できた」と、少しほっとしたような表情で話したが、振り返ってみれば、この姿勢をチームメイトたちに示し結果としても残したことには、現在に続く大きな意義があったように思える。

大塚は黒川虎徹ら若手にシューティングを指導する立場であり、かつチームのパフォーマンスに責任を持つ立場。実は、黒川はこのシーズンで規定外ながら大塚をしのぐ44.5%の高確率を残しており、アルティーリ千葉はチームとしての3P成功率37.1%がB2全体1位だった。シューターの生きる道をしっかりと歩みながらキャプテンとしてチームを率いた大塚の背中に、チーム全体がついてきたことを象徴するような結果だ(黒川に関しては今季B1で規定に達した選手全体の16位となる38.2%を記録し、著しい成長が今も続いていることを感じさせている)。

そうして迎えたB2プレーオフ、アルティーリ千葉はクォーターファイナルで熊本ヴォルターズを、セミファイナルでも信州ブレイブウォリアーズをスウィープしてB1昇格を決めた。

大塚は昇格決定の瞬間をベンチで迎えたが、このときも涙が頬を伝った。


B1昇格が決まった直後の大塚は、感慨無量の様子だった(©B.LEAGUE)


「このチームを勝たせようとして頑張ってきましたけれど、最後はみんなに勝たせてもらいました」。素直な感謝の言葉は、そのままアルティーリ千葉が掲げる「ウブントゥ(Ubuntu=他者の成功があってこそ自分の成功があると考える哲学思想)」の力を表していた。アルティーリ千葉は大塚なしに語れない。しかし同時に、大塚もこのチームあってこそのヒーローであることを自覚していた。チームとして豪快なパフォーマンスを出し続け、ファイナルでも富山グラウジーズとの同時優勝という形でB2チャンピオンの称号を手にすることができたのは、互いを認め合うそんな関係性があったからに違いない。


©B.LEAGUE





文/柴田健

タグ: アルティーリ千葉 大塚裕土

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