進化を止めない東山、3ガードを軸に目指す悲願の日本一
3ガードそれぞれの強みをチームの強みに
京都府のインターハイ予選を1位通過し、本戦への出場権を手にした東山。絶対的エースの瀬川琉久、2年生スコアラーの佐藤凪、四日市メリノール学院中で昨年度の全中とJr.ウインターカップを制したスーパールーキー中村颯斗の“新・三銃士”を中心に、破壊力抜群のオフェンスを展開する優勝候補の一角だ。東山は過去にも京都ハンナリーズの岡田侑大を擁した2016年のインターハイとウインターカップ、日本大の米須玲音を擁した2020年のウインターカップ、そして昨年のインターハイと4度決勝に進出。しかし、未だ全国の頂点には立てていない。特に瀬川と佐藤は昨年からスタメンとしてコートに立ち、岡田や米須といった先輩たちから優勝のへ思いを託されながらも、それを目の前で逃している。今年度に懸ける思いは人一倍だ。
「瀬川と佐藤が残っている点はもちろんストロングポイントですが、昨年度とは全く違うチームになるので、違うからこそ生まれるケミストリーをこのチームの長所にしていきたいです。瀬川、佐藤と1年生の中村がしっかりとコートで共存することで、得点力や起動力の面はもちろん、状況判断できる選手が増えるという面でも、よりレベルの高いバスケができる可能性をすごく感じています。まだ、今年のチームの完成形が見えていないところはあるのですが、瀬川、佐藤、中村の3ガード体制には逆に完成形を決め付けたくないです。彼らそれぞれのストロングポイントがチームにとってのストロングポイントになるようなバスケットを見付けていかなければなりません。それは難しいことではありますが、もしできたとしたらすごく的が絞りづらいチームになってくると思うので、すごくやりがいがあります。試合を重ねながらもっともっと突き詰めていきたいです」
大澤徹也コーチは新チームに大きな期待を寄せる。
特に近年は瀬川や佐藤のようなタレントが全国から集まるようになり、東山は全国大会の常連校になった。だが、かつては同じ京都府内のライバル・洛南が大きな壁として立ち塞がり、日本一はおろか、全国大会にすら出場できない時期も続いた。風向きが変わり始めたのは今から12年前。何かきっかけがほしい──そんな思いを持った大澤コーチは心機一転、ユニフォームを「ミズノ」に変更した。2012年4月のことだった。「なかなか洛南に勝てず、全国に出られない中で何かを変えたいと思っていました。そんなときにミズノさんが一番に声を掛けてくれたんです。そのおかげなのか、あの年は広島でウインターカップが開催されたのですが、そこに京都府の第二代表として出場することができました。それ以降、徐々に風向きが変わって2015年には2年生だった岡田侑大を中心に、僕が東山の指導者になって初めて洛南を倒したんです」。大澤コーチは当時をこう振り返る。
強力な個人技をさらに洗練させる新作シューズでインターハイへ
以降、東山は全国でも安定した強さを誇るチームとなっていったわけだが、コート外での華やかさも目を引く。大澤コーチのアイデアでチームウェアに英語のスローガンを入れたり、当時のバスケットボール部では全国的にも珍しかった細身のウォームアップウェアを採用したりと、毎年趣向を凝らしたウェアデザインが、現在の“カッコいい東山”のイメージを作り上げていった。「まずは選手ファーストで機能面はもちろん、外から見てもカッコいい今の東山らしさを出したいとミズノさんにリクエストしています。例えばウェアの英語のスローガンは、込めたいメッセージをこちらから日本語で渡して、それに対して3パターンくらいの案をくれるんです。ウォームアップウェアも『もっとシュッとした細身のものが良い』とリクエストしたら、『じゃあ、陸上競技のウェアを応用しましょう』と提案してくれたり。今の子たちって体のラインがしっかりと出るウェアを好むじゃないですか。僕らもスマートに着られるかどうかはすごく気にしているので、そういう意味でもミズノさんが作ってくれるウェアは東山コンセプトに合っています。すごくありがたいです」と大澤コーチ。昨年のウインターカップでは、赤を強調した新ユニフォームをお披露目するなど、進化は止まらない。
そして、来月に迫ったインターハイではウェアと共に、選手の足元にも注目してほしい。東山にはミズノのシューズを着用している選手も複数いるが、インターハイではその新作がお披露目される予定だからだ。ミズノにとって実に7年振りとなる新作「WAVE TRANSISTA(ウエーブトランジスタ)」は、これまでのモデルとは一線を画すデザイン性と機能性が詰め込まれた。まずはデザイン。大澤コーチの話す「スマート」さが表現されたシャープなシルエットで、ブランドロゴは主張し過ぎないワンポイントに。カラーもホワイトをベースにシンプルさを追求し、統一感ある美しい仕上がりになっている。
「シューズはシンプルなデザインで、派手過ぎないカラーのものが好き」
東山の選手たちが口をそろえて答えたそのままのデザインだ。「これならみんなで履いたら統一感があって良いなぁ」。デザインやカラーリングに厳しい大澤コーチからも自然とそんな言葉がこぼれた。
機能面も大きくアップグレートさせた。商品名に含まれる「トランジスタ」という言葉は、トランジションや1対1を重視するシューズコンセプトが反映されたもので、特にかかとのホールディングは多くの選手から好意的な言葉が発せられた。ある主力選手は「実際に履かせてもらって、横の動きに対してすごく安定感がありました。僕は止まる動作を大事にしているので、すごく良いなと思いました」と答えている。まさにその言葉どおり、「ウエーブトランジスタ」はクロスオーバーやサイドステップなど、1対1を仕掛けるときに発生する左右の動きに対して、かかとを中心としたシューズ全体が連動するかのような一体感を発揮し、シューズ内での足のズレを軽減。ソールとフロアの接地面を広げることで、急激な切り返しにも安定してついていくことができる設計になっている。
また、クッション性やグリップ、そして片足約340g(27.0cm)という驚異的な軽さが、時に履いていることすら忘れさせるほどのストレスフリーなプレーにつながるのだ。
「個人的な意見ですが、今の子どもたちにはグリップ性が優れている、止まる動作がしっかりとできるシューズを履いてもらいたいなと思っています。バスケットって究極のところ、1対1の勝負なんですよね。いろいろな戦術はありますが、最終的にはどんなプレーも1対1に行き着きます。そこで必要になるのがステップを踏むときの一歩の速さや一瞬の駆け引きですよね。そして、そういうときこそ、止まれる選手であるかどうかを僕は意識して見ています。スピードがある選手、縦に切っていける選手は多いですが、そこからいかに止まれるか。それを考えたときにグリップ性の高いシューズを求めますし、子どもたちに履いてもらいたい。それに、全員が履いた姿をパッと見たときにシューズのシルエットが何だか東山の選手にすごくしっくりきたというか。僕らが求めていたようなデザイン、機能のシューズになっているのかなと感じています」(大澤コーチ)
自身も東山高校バスケ部のOBで、卒業後は日本大でプレーした元トップ選手だからこそ、そして、現在は日本一を目指すチームを作り上げる指導者だからこそ、大澤コーチの言葉には熱がこもっていた。来るインターハイで、東山の選手たちがいつにも増してキレのある動きを見せていたとしたら、足元で輝くミズノの「ウエーブトランジスタ」が、その大きな助けになっている。