月刊バスケットボール1月号

大学

2024.07.10

日本勢の初優勝なるか? 第3回WUBS展望

810日(土)から3日間、国立代々木競技場第二体育館で開催される世界大学バスケットボール選手権(World University Basketball Series=WUBS)までいよいよあと1ヵ月を切った。第3回となる今年のWUBSは、7つの国と地域を代表する8チームが出場。日本からは、インカレ(第75回全日本大学バスケットボール選手権大会)チャンピオンで昨年のWUBS準優勝の白鷗大、今春の第73回関東大学バスケットボール選手権大会で連覇を達成した日本体育大の2チームが単独チームとして出場するほか、日本学生選抜も名を連ねている。


昨年のWUBSは、チャイニーズ・タイペイのチャンピオン国立政治大(NCCU)が2度目の出場で初優勝を成し遂げた。日本の王者として出場した東海大をDay11回戦で下して波に乗り、Day2の準決勝ではNCAAディビジョン1のラドフォード大(アメリカ)を撃破。最終日(Day3)決勝でも白鷗大に勝利した。

白鷗大は初戦でペルバナス・インスティテュート(インドネシア)に大勝した後、WUBS初代チャンピオンのアテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)を準決勝で倒しての決勝進出だった。最終日のNCCU戦も、前半終了時点で54-33と突き離されながら、後半の猛反撃で最終的に90-846点差に詰め寄り、大いに決勝の舞台を盛り上げた。

Day3はこの一戦以外も、心の動く場面がいくつもあった。7-8位決定戦では、高麗大がシドニー大を破り、WUBSにおける韓国勢初勝利を挙げ歓喜の瞬間を迎えた。前日その高麗大との日韓大学王者対決を59-50でモノにした東海大は、最終日にはペルバナス・インスティテュートを100-48と圧倒。大応援団の前で日本の大学王者の面目を保った。

3位決定戦のラドフォード大対アテネオ・デ・マニラ大戦では、試合前にラドフォード大のメンバー紹介を行う際、大会直前の故障で出場できなくなったフレッシュマンの山﨑一渉(仙台大附明成卒業)をアナウンスする粋な計らいも。ユニフォーム姿でコートに登場した山﨑を、温かな拍手と歓声が包んだ。もちろん、フィジカルで高さもスピードもある両チームの激突自体も見どころ満載。最終的にはラドフォード大が77-68のスコアで勝利して3位の座に就いた。

日本勢はこれまで王座獲得には至っていないが、今回はどうなるか。組み合わせを見ながら、第3WUBSをまずは810日(土)のDay1に行われる4試合から展望していこう。


第2回WUBSのDay3に行われた3位決定戦では、故障離脱でプレーできなかった山﨑一渉もユニフォーム姿でコートに登場した(写真/月刊バスケットボール)

GAME1 11:10 Tip-off
ペルバナス・インスティテュート(インドネシア) vs デ・ラサール大(フィリピン)

オープニングゲームは、インドネシアとフィリピンの大学王者同士の激突となった。ペルバナスには2023-24シーズンに国内プロリーグIBLでプレーした学生アスリートが複数在籍しており、一方のデ・ラサールにはフィリピン代表の若手のホープが在籍している。

ペルバナス側で注目すべきプレーヤーは、インドネシアの大学王者を決めるリガ・マハシスワ(LIMA)の2023年度ファイナルでMVPに輝いたガード、グレーンズ・タンクランだ。ペルバナスはフィジカルの強さとスピードを持ち味としているが、昨年のWUBSではチーム全体としてターンオーバーの連発から致命的な連続失点を喫する場面が多かった。タンクランがWUBSの舞台でMVPレベルのプレーメイクをできれば結果は異なるはずだ。


インドネシアの大学界最高のガードとして来日するグレーンズ・タンクラン。昨年はターンオーバーが多く決定力も発揮できなかったが、今年はどうか?(写真/月刊バスケットボール)

一方のデ・ラサール大では、フォワードのケビン・キンバオとセンターのメイソン・アモスというフィリピン代表プレーヤーが見逃せない。2人ともオリンピック予選のロスターにも名を連ねており、キンバオはフィリピン代表が戦った3試合すべてに出場している。アモスは、実は昨年の大会にアテネオ・デ・マニラ大の一員として出場していたストレッチタイプのビッグマンだ。この7月に突如デ・ラサール大への転入を発表したばかり。現在フィリピン国内では相当大きな話題となっている。


パリオリンピック予選でラトビアに勝利するなど世界の注目を浴びたフィリピン代表。そのロスターに名を連ねたケビン・キンバオ(前列左#28)とメイソン・アモス(前列中央#21)が、デ・ラサール大に所属している(写真/FIBAOQT2024)

この試合は、彼らの活躍を通じて東南アジアのバスケットボール界の今後を垣間見る機会となりそうだ。名前を挙げた3人以外にも、Bリーグのアジア枠を狙えるポテンシャルを持つプレーヤーたちがいるので、ぜひとも注目してみてほしい。

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GAME2 13:40 Tip-off
NCCU(チャイニーズ・タイペイ、前回優勝) vs 日本体育大(関東1位)

この一戦は、ディフェンディング・チャンピオンのNCCUに関東の王者で初出場の日本体育大が挑むという構図になる。両チームには能力の高い留学生ビッグマンが複数所属しており、得点力の高いバックコート陣もそろっている。好ゲームが予想される組み合わせだ。

NCCUは昨年のWUBSで、身長208cmのビッグマンで大会MVPに輝いたムハマド・ラミン・バイェを核としたオフェンスと、変幻自在のハーフコート・ゾーンディフェンスで3つの白星を重ねた。今年の大会で同じ戦い方をするかどうかはわからないが、サイズもあり運動能力も高いバイェが昨年同様の破壊力を発揮するとなると、日本体育大にとってはいずれにしても非常に大きなチャレンジとなる。


昨年のWUBS決勝でのムハマド・ラミン・バイェ。白鷗大相手に30得点、13リバウンドの大活躍だった(写真/月刊バスケットボール)

対して日本体育大は、高さに頼らず平面的なバスケットボールで対抗するのが持ち味のチームだ。ポイントガードを務める土家拓大や2024年度男子U22日本代表チームに名を連ねているパワーフォワードの小澤飛悠らがコートを駆け巡ってハイペースな展開で商機を狙う。

見どころの1つはビッグマン同士のせめぎあいだ。NCCUにはWUBSMVPバイェが、日本体育大にはスプリングトーナメントで2年連続MVPに輝いた身長206cmのセンター、ムトンボ ジャンピエールがいる。この「MVP対決」が実現するとなると、特にジャンピエールにとっては、国際舞台で実績を挙げている相手に対して自らの実力を測る機会になる。それは今後のキャリアを考える上でも大きな意義を持つだろう。


日本体育大が平面的な展開でリズムをつかむには、小澤飛悠の得点力が欠かせない要素になる(写真/月刊バスケットボール)

また、昨年のNCCUはビッグマンだけでなく、2024-25シーズンに滋賀レイクに加入するユー アイジェ(游艾喆)らを擁したガード陣も非常に有能だった。平面的な展開を指向する日本体育大のバックコート陣がそこにどう対抗していくかも、面白い見どころになるだろう。

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柴田 健/月刊バスケットボールWEB

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