長谷川智也(越谷アルファーズ)、執念の「ザ・ショット1&2」——B2プレーオフセミファイナル サイドストーリー
苦悶するキャプテンを指揮官は信頼した
ただし、それでも安齋HCが長谷川を信頼し、買っていることは、シーズンの序盤戦から感じられてもいた。昨年10月22日に千葉ポートアリーナでA千葉を89-71で破った後、この試合でミドルジャンパー1本を決めての2得点に2リバウンド、1アシストを記録した長谷川を、安齋HCは以下のように高く評価していた。
「(長谷川の活躍は)僕が期待していたところ。プレータイムもどんどん少なくなって自分のプレーが出せていない悔しさもあったはず。でもチームをベンチからまとめるすごく重要な仕事をやりながら、今日はチャンスが来た時にしっかりと自分のプレーを遂行してくれました」
得点はもちろんだが、そのほかのダーティーワークが指揮官の信頼につながった。「そういうところを既存の選手たちが頑張れるようなってきたというのがすごくうれしいです。それを見た新加入の選手たちがもっともっと伸ばしていくようなチームになればいいのかなと思います」
長谷川が最終的に55試合に出場したことからも、安齋HCの信頼感は感じられる。コートに立つ時間はキャリアローの12分6秒だったが、毎試合、長谷川が必要だったのだ。
「キャップ(長谷川)がコートに入ったときの安心感は特別」。アルファメイトからのそんなメッセージがSNSで発信されたのも一度や二度ではない。一方では、出場時間が抑えられた長谷川の平均4.0得点は直近4シーズンの最低値ではあったが、3P成功率は38.8%と高い水準を維持。形としては、安齋HCが信じて投入したキャプテン長谷川が短時間に執念のハッスルを提供することで、アルファメイトもチームを信じられるという構図になっていた。そこに高確率のショットメイクが伴えば、チームにエナジーをもたらす爆発的な瞬間が訪れる。安齋HCはそれを感じていたのだろう。
まさしくそんな流れが起こったのが、セミファイナルGAME2だ。長谷川はGAME1では出番を得られなかった。しかし、越谷ベンチ裏の一画を中心に陣取るアルファメイトたちは、長谷川がいつものようにベンチで声を出し、活発なジェスチャーで選手たちを鼓舞する姿を見逃してはいない。B1昇格がかかったGAME2で、きめ細やかな貢献をし続けたキャプテンにチャンスが巡ってきたときに、彼らのボルテージはひと際高まった。
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そんな瞬間が最初に訪れたのは第1Q残り40秒だ。長谷川のスティールから始まったオフェンスのセカンドチャンスで、長谷川自身の3Pショットがさく裂し、越谷が16-15とリードを奪う。アルファメイトたちの「レッツゴー・アルファーズ!」の声が力強さを増した。
次に長谷川の時間が訪れたのは第4Q残り約8分半から。コートに入って早々の残り7分58秒、長谷川がこの日2本目の3Pショットをヒットし、越谷のリードを60-52の8点差に広げた。「我らがキャプテン」のビッグショットに、アルファメイトの一画から一段と大きな歓声が沸き起こったのは言うまでもない。
この後、A千葉の猛反撃があり、点差は徐々に詰まっていく。長谷川の2発がなかったら…、異なる筋書きが待っていたかもしれない。
こちらが第4Qの「ザ・ショット2」。自らの執念、指揮官の信頼、チームとクラブの関係者とアルファメイトの願いが宿ったボールは、美しい弧を描いてネットに吸い込まれた(写真/©B.LEAGUE)
チーム一丸の勝利に花を添えるビッグショット
B1昇格とファイナル進出を決める激闘に決着がついた後、安齋HCは以下のように長谷川の活躍を称えた。
「本当にどっちに動くか分からない展開の中で、やっぱり(長谷川が)何か持っているものあるんじゃないかなと思っていました。背中でずっと引っ張ってきたヤツがこういう舞台に立つのを、アルファメイトの皆さんも本当に期待していたと思います。その期待に応える智也もやっぱり『持ってるな』と。本当に良かったです」
やはり安齋HCは、「キャプテン長谷川とアルファメイトの方程式」を理解していたのだ。人生最大と言えるビッグゲームで3Pショット2/2の6得点。シーズンアベレージの約半分にあたる6分12秒のコートタイムで、長谷川はその「答え」を出してみせた。
クラブにかかわるすべての人々の願いを乗せたようなビッグショットだったが、試合後バスケットLIVE!のインタビューに登場した長谷川は、そんな質問に「本当にそのとおりだと思います」と答えていた。「普段あんなに入らないので、自分の中でも正直びっくりしました。あんなシュートを決められて本当に光栄です」
奇しくも5年前の2019年に越谷がB2昇格を決めたのと同じ5月12日の勝利に、ヒーローはもちろん長谷川以外にも複数いた。彼ら全員が称えられるべきであることを最後に記しておきたい。アルファーズは一つのチームとして戦った。長谷川はそのグループの力をキャプテンとして最大限に引き出し、自らの輝かしい2本のショットで栄光に花を添えたのだ。
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