サンアントニオ市長ロン・ニレンバーグが語るスパーズとチャンピオンシップ・シティーの魅力
「街の大きな魅力である多様性を、スパーズが体現している」
——スパーズについて話を聞かせてください。街はどのようにチームを受け止めているのでしょうか?街とスパーズの関係はとても深いように映ります。
スパーズは街にとって必要不可欠なものです。文化的アイデンティティとも言えます。国際的な街として、チームが国外から選手を受け入れ続け、インターナショナルなステージで存在感を高められたことは街にとって贈り物のようなものです。これまでのチーム運営や、オンコート・オフコートでの彼らの立ち振る舞いをサンアントニオは誇らしく思っています。
スパーズはチャンピオンシップ・フランチャイズで、我々も街をチャンピオンシップ・シティだと認識しています。アメリカ内でも自身の街をチャンピオンシップ・シティと呼べることはユニークなこと。マーク・トウェイン氏(「トム・ソーヤーの冒険」などを書いた小説家)も過去に「サンアントニオはアメリカで最もユニークな街の一つだ」と語ってくれたことがありました。スパーズはスポーツの世界で最も認知度が高いブランドの一つであり、サンアントニオとテキサスも認識されやすいブランドなので、チームと街の関係はスポーツ界で比類のない関係だと心から考えています。
2014年のファイナル第5戦で、スパーズがマイアミ・ヒートを倒して5度目のNBAタイトルを獲得した直後のホームアリーナの様子。これが現時点では直近のチャンピオンシップ獲得の記憶だ。アリーナは当時AT&Tセンターという呼称だったが、昨夏からフロストバンク・センターに変わっている(写真/©石塚康隆 月刊バスケットボール)
こちらは2014年のファイナル第5戦で5度目の王座獲得を決めた後の様子。ご存じのティム・ダンカン、マヌ・ジノビリ、トニー・パーカーを中心に笑顔が弾ける。グレッグ・ポポビッチHCの後ろには、当時アシスタント・アスレティックトレーナーを務めていた山口大輔の姿も見える(写真/©石川康隆 月刊バスケットボール)
——スパーズはこれまでもアメリカ国籍以外の選手が多く在籍していましたが、今シーズンはビクター・ウェンバンヤマが加入したことで、街の注目度合いがいっそう高まり、活性化もさらに進んだのではないですか?
近代のスパーズには様々な国籍の選手が在籍していました。街自体も国際色豊かで、いろんな文化が集合しています。スパーズがバスケットボールコートで見せてくれる国籍や文化の多様性は、街そのものを鏡に映し出しているように見えますね。
この街でスパーズに向けられる熱狂が再燃していることには、ウェンバンヤマやスパーズの若いロスターが大きく関係しています。チームは現在の過渡期を経て、既に次の支配的な時代に向けて疾走を始めました。彼らのオンコートでの成功は街のモラルの向上に繋がります。チームの成功はただの希望的観測ではなく、近い将来現実になることが見えてきています。街とスパーズの成長のタイミングが程よい時分に一致しているので、今は改めて街やチームに対しての興味を喚起できるエキサイティングな時期です。
——サンアントニオでの日本のコミュニティについて教えてください。確かトヨタがサンアントニオに大きな工場を持っていると思います。
日本人に限ったことではなく、サンアントニオにとってアジア系アメリカ人コミュニティはとても大切です。私自身もサンアントニオ初のアジア系アメリカ人の市長です(ニレンバーグ市長は母親がフィリピン人)。実は街の人口の中でもアジア系アメリカ人が一番早いスピードで増えているんですよ。人口の規模はまだ小さいですが、大きくなっています。日系アメリカ人や日本人もその一部で、日本のビジネスや文化を象徴するものも存在していて、トヨタは大きなプレゼンスですね。
先ほども話した通り、街の民族性が多様なのと同じようにスパーズも民族性に富んだクラブなので、我々自身もスパーズが街を象徴してくれていると思えるし、チームをどんどん応援したくなります。
——あと熊本市はサンアントニオの姉妹都市だと耳にしました。具体的にはどのような交友関係にあるのでしょうか?
私は熊本が大好きで、何度が訪れたこともあります。姉妹都市関係は、数十年に渡って継続しています。(サンアントニオと熊本市が姉妹都市として盟約を結んだのは1987年)我々は兄弟だと思っていますし、私自身も熊本のコミュニティや熊本市のリーダーシップチームと建設的な関係を作ってきました。熊本市の大西一市長とも素晴らしい関係にあります。最後に熊本を訪れた際には、大西市長にレプリカのスパーズチャンピオンシップリングをプレゼントしました。彼もスパーズの大ファンでとても温かい関係です。
——国外からサンアントニオを訪れる人々に、お勧めのスポットなどがあれば教えてください。
まずは世界遺産にも認定されているサンアントニオ・ミッションズ。リバーウォークがありますし、公共の公園やリニアパークもたくさんあります。文化についてより知りたい方には、グアダルペカルチュラル・アートセンターをお勧めします。リバーウォークのアーネソンシアターももうすぐ再オープンしますよ。
私が個人的によくお勧めするのは、ダウンタウンにほど近いパール地区にあるジャズテキサス(Jazz TX)というところです。地下に120席ほどあるジャズクラブで、ワールドクラスのジャズパフォーマンスが毎晩楽しめます。20年前にはサンアントニオには存在しえなかった場所かもれません。今のサンアントニオは21世紀型の大都市です。まだ街を訪れたことのない人も、再度訪れる人も、今のサンアントニオはとても楽しめる街です。この20年で街は大きく成長しました。
——最後に今後日本からサンアントニオを訪れる人たちに向けて一言メッセージをいただけますか?
いつでもサンアントニオがあなたの家だと思って遊びに来てください。タロウさんが今回来てくれたことは、非常にうれしいです。いつでもお待ちしていますよ!
ニレンバーグ市長が触れているリバーウォークの風景。これは2014年6月、スパーズが5度目の王座獲得に向けヒートとのファイナルを戦っている期間の様子で、スパーズのフラッグが誇らしく掲げられている(写真/©石塚康隆 月刊バスケットボール)
最後の下りでニレンバーグ市長は、スペイン語の「Mi Casa, Su Casa(私の家はあなたの家)」という言葉を使って思いを伝えてくれた。フレンドリーで温かみのあるサンアントニオという街の特徴を、首長の人柄も物語っている。
この企画は、スパーズのスーパーファンとして知られる小谷太郎さんが立ち上げた「Paint it Silver & Black!」プロジェクトの一環として小谷さんの全面的協力の下でスパーズ周辺の様々な話題を取り上げています。不定期ながら随時楽しい企画をお送りしていきますので、乞うご期待!
取材・文・写真/小谷太郎(Paint It Silver &Black!)
タグ: サンアントニオ・スパーズ