Bリーグ

2024.04.03

金久保翔(金沢武士団キャプテン)インタビュー——「今は本当に頑張るしかない」

七尾からの激励


——今の金久保選手たちは、すぐそばに震災の影響で非常に困っている人々がたくさんいて、毎朝その人たちの厳しいニュースに接するような日々を過ごしながら、ご自身は仕事としてバスケットボールに向き合っているのだと思います。気持ちの整理がものすごく難しいのではないですか?

東日本大震災のときに僕は埼玉にいたので 強い揺れは感じたのですが被災という感覚はありませんでしたが、今回は自分が住んでいるところが初めて被災するという経験でした。

気持ちを切り替えるという感覚はなくて、本当におこがましいことですけど、こんなに強く誰かのためにバスケットボールを頑張ろうと思ったのは今回が初めてなんです。いろいろと考えたんですけど、僕らにできることは本当に限られています。被災地に行ってもその場その場のプロフェッショナルがいて、その場の改善に取り組まれているので、その方々のサポートしかできませんでした。やっぱり歯がゆい気持ちがありました。

僕らにできることが何かと言ったら、バスケットボールで元気になってもらうことしかなくて…。練習を再開してからは毎日自分ができる目の前のことをまず120%やっていこうということだけを意識して今日までやって来ています。それが自分のためにもなるし、被災地のため、チームのためにもなるのかなと。気持ちを切り替えるというよりは自分ができることにフォーカスすることを突き詰めようとしています。


©月刊バスケットボール

——地震が起こった時はどんな状況にいらっしゃったんですか?

僕は富山県にいて、震源とは離れていたんですけれど、それでも震度6の揺れでびっくりしました。

——震源に近い現場の方々に対してなんだか申し訳ないような気持ちでプレーされている選手もいるのかなとも思ったりします。

東日本大震災でも熊本地震でも被災地域のチームはシーズンを中断して支援に回っていたと思うので、僕らがバスケットボールをしていていいのかな…という気持ちはずっと、今でもあります。でもやらせてもらえるということになったのであれば、そこに全力を尽くすべきだと思っています。ただ、複雑な気持ちもありますね。

僕らだけ七尾を離れて安全なところに行かせてもらって、何不自由なく今は暮らさせてもらっています。一方で、今でも七尾の人たちは避難所にいます。本当に僕たちを子どものようにかわいがってくれた人たちがいまだに避難所にいて、家を壊すのか、建て直すのか、ずっと避難所にいるしかないのかという選択を迫られています。それを自分ごとに考えると、本当に先の見えない不安でいっぱいだと思います。

そんな状況なのに、先週月曜日に七尾に戻ったら、また大根とか野菜を持ってきてくれるんです。そんな皆さんの顔を見たら、やっぱり頑張らなければと思うんですよね。

——期待に応える価値がありますね。

今は本当に、頑張るしかないんです。シーズンが終わったら、七尾に戻って手伝えることが何かあるでしょう。それをやりたいと思っています。


金久保の自分への問いは「頑張れるかどうか」の前に「頑張っていいのだろうか」だったのかもしれない。しかし、被災した地域から金久保に今も「頑張れ」と言ってくれる人に何ができるのか。それは「今、頑張ること」しかなかった(写真/©月刊バスケットボール)

金久保も金沢武士団も、被災地に暮らす人々に寄り添われている。同時に何とかして、自分たちとしての寄り添い方でその人々に前向きな力を届けようとしている。どちらもお互いを必要としているのではないだろうか。

島田慎二Bリーグチェアマンをはじめとしたバスケットボール界の関係者も、チャリティーマッチに協賛したスポンサーも、ファンも、その思いを何とかして後押ししようと懸命だ。この両日、代々木にはその思いから発散される熱量が満ち溢れていた。


GAME1終了後、両チーム関係者だけでなく来場した人々もコートに招き入れて行われた記念撮影色とりどり、様々なチームのユニフォームを着たバスケットボール好きが、被災地の一日も早い復興の一助にと聖地代々木で心を一つにしていた(写真/©能登半島地震復興支援チャリティマッチ運営事務局)






GAME2の試合中、コート奥の2階席に設置された金沢武士団のフラッグ周辺を、来場者が持ち寄った様々なチームのユニフォームが埋めていた(写真/©月刊バスケットボール)






取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 金沢武士団 B3リーグ

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