月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2024.02.09

窮地の川崎ブレイブサンダースで益子拓己が真のヒーローになるとき

©KAWASAKI BRAVE THUNDERS

川崎ブレイブサンダースが窮地に立たされている。27日の琉球ゴールデンキングス戦に75-87で敗れた時点で、通算成績2017敗(勝率.541)の中地区4位。上位争いどころか、8チームのみが進出できるチャンピオンシップのスポット争いで10番手と圏外に押し出されてしまっている状況だ。


今シーズン限りの引退を発表したニック・ファジーカスの花道を、是が非でもクラブ初のBリーグ制覇で飾りたい。しかしこともあろうに、そのファジーカス自身が左膝関節内側側副靭帯損傷(全治6週程度)で1月上旬から離脱中。21日には、特別指定選手として加わる予定だった山内ジャヘル琉人(大東文化大学在学中)が右大腿二頭筋肉離れの診断を受け、チーム入りを断念するという残念なニュースもあった。不運はこれで終わりではなく、琉球戦当日のティップオフ2時間前には、23日の京都ハンナリーズ戦で右足関節捻挫の負傷を負ったジョーダン・ヒースの離脱(全治1ヵ月程度)も発表されている。

レギュラーシーズンは残すところあと23試合。チャンピオンシップのワイルドカードは射程圏とはいえ、ホームコート・アドバンテージまで狙うのは、よほどの快進撃が始まらない限り難しいと言わざるを得ない。多くのブースターが、ヒーローの登場を心待ちにしているのではないだろうか。





彗星、益子拓己現る

そこに彗星のごとく一人の若者が登場した。福岡県出身のシューティングガード、益子拓己だ。拓殖大時代には、3年生のときに第70回関東大学バスケットボール選手権大会で3P王に輝いており、3x3U23日本代表として国際大会で優勝した経歴もある。昨夏の8月からは川崎のトップチームの練習に参加。Bリーグデビューはそれ以前に、京都の特別指定選手として昨シーズン済ませている。

22日、川崎は益子とのプロ契約を発表した。「切り替えの速いトランジションと、確率の高い3Pシュートが持ち味で、常にチームファーストを考えプレーできる」——この評価が最高峰の実戦でも変わらないことを、益子がコート上で証明するときがやってきたのだ。

プロとしてのデビュー戦となった古巣の京都とのGAME1は、第2Q313秒コートに立ったものの数字的に際立った活躍はしていない。チームとしても77-81で黒星を喫している。しかし翌日のGAME2では、3Pショット5本中2本成功、フィールドゴール全体でも8本中4本を成功させて11得点を記録。試合自体101-64とチームの爆発力を感じさせる勝利だったが、益子の活躍もクラブに新風を吹き込むような痛快なものだった。


2月4日、古巣の京都ハンナリーズ相手に益子は11得点を記録した(©KAWASAKI BRAVETHUNDERS)

京都とのGAME2で特に活躍が際立ったのは、81-51とリードして迎えた第4Qだ。このクォーターのスターターとしてコートに立った益子は、最初のオフェンスで篠山竜青からのアリウープパスを受けプロ初得点に成功した。ロスコ・アレンのスクリーンアシストでぽっかり空いたゴール下に走り込み、ふわっと空中に浮きあがってボールをつかんでバックインさせたフィールドゴールだ。





「あれはダンクに行きたかったですね(笑) 緊張していてあれが精一杯でした」というのが試合後の弁。しかしこのプレーで心身ともにほぐれたのか、益子は10分間フルにプレーしたこのクォーターで、ミスショットを1本のみに抑えて得点を11まで伸ばしたのである。「(第3Qまでに3本外して)ベンチに戻っていたときに、先輩たちが『全然いいよ、いいシュートだよ』と言ってくれたので、その後気持ちよくシュートを決めることができたと思います」。このクォーターの活躍を益子はこう振り返っている。



文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 川崎ブレイブサンダース 益子拓己

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