琉球ゴールデンキングスの「2つの顔」がどう出るか――EASL2023-24いよいよ大詰め、1/24(水)に沖縄アリーナで2度目の“キングス対決”
勝ち試合と負け試合の波が大きい2023-24シーズンの琉球
EASLにおける二面性は、琉球はホームでは負けていないがアウェイでは一つも勝てなかったという事実が端的に示している。要因を挙げるのは簡単ではないが、アウェイでの苦戦には現地のゲームマネジメントやコールの感覚的な違いに、メンタル面の一貫性をやや欠いてしまった側面はあったかもしれない。故障者の影響も大きかっただろう。しかし、レギュラーシーズン最後の“キングス対決”はホームであり、その観点からは勝利を期待したくなる舞台設定だ。
しかしもう一つ、Bリーグの2023-24シーズンにおける二面性は、そう単純な話でもない。1月21日に第18節を終えた時点で、琉球は21勝10敗(勝率.677)の成績で西地区首位に立っている。これは決して悪い成績ではないが、勝ち試合と負け試合が以下の通りまったく異なるデータを呈しているのが気になる点だ。
☆勝ち試合: 平均得点83.3、平均失点73.5
★負け試合: 平均得点70.7、平均失点80.8
勝つとき、負けるときの対照的な試合の集計なのだから、ある意味では当たり前と捉えることもできるかもしれない。しかし10敗のうち3試合が20点差を超える大敗。平均でも点差が10.1というのは、差が大きすぎはしないだろうか。
実は昨シーズンの琉球にも同じような傾向があった。シーズン全体の成績は48勝12敗だったが、正月7日までに喫した7つの黒星のうち、5試合で点差を2桁以上離されていた。7試合平均は13.9点差で、今シーズンの負け試合における平均よりも大きい。
ところがそれ以降は、同じ黒星でも数字的にはまったく異なる。敗れた試合は5試合だったが、最終的に5点差以上での負けはその中に一つもない。勝率が上がっただけではなく、負け試合でも簡単には折れないチームになっていたことがうかがえる。前半戦で必要なテストを重ねながら作り上げた土台が、後半戦でさらに強固に踏み固められていったことを示しているように見えるのだ。
今年も同じ経過をたどるとすれば、キングスはここからぐんぐん力を発揮していく。今村佳太がレギュラーシーズンでのキャリアハイとなる得点力でチームをけん引し、闘志あふれるプレーでチームを鼓舞する若手の植松義也が頭角を示し始めていることなどが、その希望を膨らませる。岸本隆一が地元でのオールスターゲームでMVPに輝いたことも、弾みをつけるニュースに違いない。
オールスターでのMVP受賞は、岸本隆一にとって後半戦でのパフォーマンスに弾みをつける出来事に違いない(写真/©B.LEAGUE)
しかし、EASLでの苦戦も一つの兆候として、チーム状況が順調とも思いにくい。1月6日のファイティングイーグルス名古屋戦に57-68で敗れた後、桶谷大HCはロッカールームでチームに「ふざけんな!」と 喝を入れたことを、翌日のインタビューで明かしている。令和6年能登地震の発生で平穏な日常を奪われた人々がいる中、バスケットボールをできるという恵まれた環境でのふがいない結果に、感情が爆発したという側面もあるだろう。しかしチームが期待すべき状況ならば、勝敗だけではそうならなかったはずだ。
その後琉球は、17日に名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの接戦に75-77で敗れ、さらに翌18日にはカール・タマヨとの契約解除を発表。タマヨは10日のニュータイペイ戦で16得点を挙げる活躍を見せ、オールスターブレイクのアジア・ライジングスターにも出場していただけに、この発表はブースターを驚かせたことだろう。この流れを含むBリーグでの直近10試合で、琉球は4勝6敗と負け越している。
この状況で、NBAチャンピオンの勲章を持つジェレミー・リンを擁するニュータイペイをホームに迎える“キングス決戦”。はたして我々が目にするのは、ホームで強い琉球、ディフェンスとリバウンドを土台に最後まで戦い、勝ち切る王者のカルチャーだろうか。それとも、負けが込んで不安定な状態を引きずる姿だろうか。注目の一戦は、琉球のBリーグにおける今後を占う試金石とも言えそうだ。
文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)