W杯男子日本代表12人の今——海外組(渡邊雄太、富永啓生)とポイントガード編(河村勇輝、富樫勇樹)

世界では通用しないというステレオタイプを吹き飛ばすダブルユウキ


河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)


©FIBAWC2023

ワールドカップで平均13.6得点と大会全体3位対タイの平均7.6アシストを記録した河村は、Bリーグでは平均24.0得点、5.6アシスト、1.4スティールがいずれもリーグのトップを争う数値だ。得点に関しては、昨シーズンの平均19.5得点から4.5ポイントジャンプアップ。アジア地区予選段階からトム・ホーバスHCに得点への意識を強く求められたことに奮起した成果が大いに見てとれる。

1028日の広島ドラゴンフライズ戦で沈めた第4Q終盤のクラッチ3Pショットは、フィンランド戦終盤に成功させた一撃をほうふつとさせたし、115日の仙台89ERS戦でも、タイトなディフェンスを相手にトリッキー、スピーディーかつ正確なドリブルからプルアップ・ジャンパーやレイアップを何度も沈める様子は圧巻だった。ディフェンスの強度も落ちていない。ただしチーム成績が今一つ(115日まで56敗)。それだけに、今後の横浜BCが怖い存在に感じられる。

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富樫勇樹(千葉ジェッツ)


©FIBAWC2023

日本代表でキャプテンを務めた富樫も、河村と同じく昨シーズンから個人成績を大きく向上させている。平均22.2得点は昨シーズンから7.2ポイントの「爆上がり」。スティールも昨シーズンの0.7本から1.2本へと上昇している。EASL(東アジアスーパーリーグ)で、台北富邦ブレーブス(チャイニーズ・タイペイ)相手に、3Pショットを9本成功させて38得点を奪い、チームを勝利に導いた活躍も記憶に新しい。

河村の横浜BCとは事情も異なるが、千葉Jもややスロースタートで115日時点では65敗と貯金が一つだけだ。EASLとの並行日程でチームのコンディショニングが難しいことなど、言い訳しようと思えば様々な要素が浮かぶだろうが、富樫としても悔しいはず。今後どのようにチームをけん引していくかは、司令塔としての腕の見せどころだ。





世界的に比較するとかなり小柄なポイントガード二人が、力を合わせて日本代表をけん引した直後の国内リーグでそろってレベルアップを感じさせている事実は、世界で勝つことを心底信じて戦うこと、そして実際に勝つことの意義を感じさせる。また、彼らの活躍は、小柄なガードは世界で通用しないというこれまでのステレオタイプが幻想でしかないことを証明している。これからの時代は、身長170cm以下、あるいは170cm台のガードがBリーグのトップで君臨し、世界をあっと言わせるような活躍をし、NBAの関心さえ引いても、喜ぶべきことではあっても驚くべきことではない。今、小さな子どもたちが、彼らの背中を見ながら成長してくると思うと、男子バスケットボールの将来が夢いっぱいに思えてくる。



文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

タグ: 渡邊雄太 河村勇輝富永啓生富樫勇樹FIBAワールドカップ2023Akatsuki Japan

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