Bリーグ

2023.10.28

チャンピオンシップ・メンタリティーを自問する越谷アルファーズ

転機としたい宿敵アルティーリ千葉からの勝利


爆発的な得点力を持つLJピーク。10月22日のアルティーリ千葉戦ではゲームハイの26得点で勝利に貢献した(写真/©B.LEAGUE)


3節で戦ったアルティーリ千葉は、アルファーズにとっては宿敵とも呼ぶべき相手だ。昨シーズンの対戦成績は33敗と互角で、最終節に東地区王座とB2最高勝率をかけて対戦した。お互い隣県のクラブ同士でもあり、両ホームタウンでファンの行き来も活発に行われている。そのライバリーの発展自体、非常に興味深く意義深いものといえるだろう。

そんな相手との対戦を控えた第3節までの練習は、前週よりもずっと密度の濃い練習ができたと安齋HCは話した。それでもアルティーリ千葉とのGAME180-87の黒星。しかも、チームの強みであるはずのリバウンドで29-44と圧倒され、その二次的産物であるファストブレークからの得点で8-22と圧倒されるという悔しい負け方だった。

ただ、最大13点差のリードを奪われながら粘って追い上げることができた点は前向きな要素だったし、50%を割ったフリースロー成功率がもう少し高ければ勝負はわからない展開であったのも事実だ。その粘りは翌日のGAME2での勝利につながる。89-71の白星で、連敗は2で止まった。「昨日あまり良いところが出せなかった部分も(今日は)しっかり出せたのかなと思います。アルティーリさんは本当に強いチームなので、そこに対してそういうゲームができたというのは自信にして良いのかなと思います」。安齋HCの「自信」という言葉に、チームの前進が感じられる。







前日からの修正点は意識の持ち方に尽きた。真に強いチームなら、無意識のうちに意識すべき姿勢が行動に現れる。まだまだの状態とはいうものの、この日はそれが40分間できたのだという。数字的に見れば、前日圧倒されたリバウンドで49-34とアドバンテージを奪い、セカンドチャンスでの得点では29-6と圧倒していた。ここをベースにして、意識しなくても毎回の練習でも毎度の試合でも継続し、40分間徹底していきたい。

戦い方に関しては、「LJ(ピーク)の得点が伸びないときに勢いがなくなっていく」ことへの対策が一つの課題だというが、それも含めてこの日の安齋HCは、チームの伸びしろを良い意味で語る言葉が多かった。新加入の笹倉怜寿も意識で変えられる部分について「コーチ陣が準備して僕らがコートで発揮することの中にあるのは1日、1秒、瞬間で変えられることばかり。今日はそこを意識して試合に入り、それをうまく出せて良かったと思います」と語っている。

この試合では新戦力のLJピークがゲームハイの26得点を挙げ、既存戦力のアイザック・バッツが13得点に21リバウンドのダブルダブル。長谷川や二ノ宮康平らもここぞの場面で好プレーを見せ大きな力となった。「そこが僕の期待していたところ」と安齋HCは話した。


アルティーリ千葉戦勝利でのアイザック・バッツは、得点とリバウンドのダブルダブル。しかし実はオフェンス・リバウンド10、ディフェンス・リバウンド11で隠れたトリプルダブルを記録していた(写真/©B.LEAGUE)

「アイク(バッツのニックネーム)は昨日の悔しさもあって、今日は出だしからアタックモードでした。二ノ宮、長谷川はプレータイムもどんどん少なくなってしまっていて 、本人たちに悔しさもあるでしょう。自分のプレーが出せていない一方で、チームをベンチからまとめるっていうすごく重要な仕事はやってくれている。今日はチャンスにしっかりと自分のプレーを遂行する役割を果たしてくれました。二ノ宮はガードとしてコントロールしたし 、智也も、シュートも良かったんですけどリバウンドとかディフェンスをめちゃめちゃ頑張っていた。既存の選手たちがそういうところを頑張れるようになってきたのが、僕はすごく嬉しいです。それに対して新しく入った選手たちがもっともっと伸ばしていくっていうチームになればいいのかなと思います」

チーム完成度は「意識のところは半分くらい」というのが率直な感触だ。その日その日に波があり、勝つと無意識の意識が出なくなる。しっかりできればリーグのトップチームを圧倒するポテンシャルがあるが、できないと正反対に向かってしまう。そんな中で飛び出した既存戦力の奮起は、勝ち切れなかったチームが、内面に染みこんだネガティブな勝ち癖を“解毒”し始めた兆候なのかもしれない。


10月22日の一戦では長谷川智也も短い出場時間ながら攻守に活躍した。既存プレーヤーの奮起が求められる中、価値ある貢献だった(写真/©B.LEAGUE)





チームの仕上がりは「50%くらい」

安齋HCはチームとの関係を、「選手たちの、どうなりたいかっていうのが正直僕もまだそこまで見えていない」と話している。4択の質問――A: このチームでB1に上がって最高峰で勝ちたいのか、B: B1に上がれれば満足なのか、C: あるいはプロとしてのそれなりのキャリアを積むことに主眼を置いているのか、D: それ以外なのか――をしたら、どんな答えが返ってくるか。あるいはどんなパフォーマンスでそれを体現してくれるのか。指揮官としては、ここで答え(思い)を一つにしないと、チームを導く明確な計画が立てられない。答えがAならばまず、「B1のトップチームと同じことをやってもダメなんですよ。それ以上やらないと追いつけるわけがない」という安齋HCの考え方を、全員に浸透させることが必要になるだろう。

現時点でのアルファーズは、それをできるチームかどうかをまだ見極めている状態に思える。「僕がやり始めて崩れることも全然ある。今までのよかったと言える状況からダメになる可能性もあると思っています。それをしないようにどうにか、僕のやり方も変えるか、変えないか。どうチームを作っていくかというのがチャレンジです」

上記の4択質問で答えがAならば、語られるのはチャンピオンシップ・メンタリティーということになるが、明らかに安齋HCはそれを語っている。はたしてチームはどうなのか。第3節までの戦いぶりと結果、様々なコメントから、チームもその答えがAだと認識していることは伝わってくるが、それを望まれるレベルで体現することが非常に難しい。


10月22日のアルティーリ千葉戦勝利後の安齋HC(写真/©B.LEAGUE)

「その意識を選手たちにどれだけ植え付けていくことができるか。やり続けていかないと良いチームにはなれません。まだまだこういうのでは勝てないっていうことを 、今日(アルティーリ千葉戦GAME2)みたいな意識を本当に毎日の練習や自主練習でも常にやり続けて、突き詰めていけば可能性があるでしょう。だから50%くらい。どっちに転ぶかまだわからないです」。安齋HCの言葉には、もどかしさ、自信、意欲、期待、覚悟といった様々な思いや感情が現れていた。

※越谷アルファーズは10月24日に、あらたに小寺ハミルトンゲイリーという経験豊富でフィジカルな身長206cmのビッグマンをロスターに加えることを発表した。今後の戦いぶりが非常に楽しみになる補強だ。翌25日には、その小寺のデビュー戦となった新潟アルビレックスBBとの試合に99-70に快勝を収めている。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

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