月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2023.10.28

チャンピオンシップ・メンタリティーを自問する越谷アルファーズ

アルティーリ千葉を破った10月22日の一戦でアグレッシブにゴールに向かう喜多川修平(写真/©B.LEAGUE)

安齋竜三HC兼アシスタントGM体制下での初シーズンを迎えている越谷アルファーズは、開幕から3連勝後にホームでの青森ワッツ戦GAME2とアウェイでのアルティーリ千葉戦GAME1に連敗を喫し、翌日のGAME2でそこまで開幕から5連勝だったアルティーリ千葉に今シーズン初めて土をつけるという、やや波のある序盤戦となっている。第3節を終えた時点での42敗はB2東地区3位。コーチ陣が入れ替わり、ロスターも大型補強をして臨んでいる今シーズンのスタートとして、決して悪くはない。しかし最高でもない。はたしてこの先どのような戦いを繰り広げていくだろうか。


クラブ史上最多入場者数記録を更新する4,121人という大観衆で埋まった越谷市立総合体育館で、今シーズン初黒星となる逆転負け(最終スコアは77-81)を喫した1015日の青森戦後、安齋HCは「たくさんの方々に見に来ていただいた中で、ホームで勝ち切れなかったのが申し訳ない。その責任は僕にあるので、これを反省として次に繋げていかなければいけないと思っています」と敗戦を総括した。

100点を奪い接戦をしのいでつかんだ前日の勝利(最終スコアは100-95)から一夜明けたGAME2、アルファーズは前半の早い時間帯に2桁点差のリードを築きながら、第2Q以降相手にペースを徐々に持っていかれて、最後に逆転された。安齋HCによれば、実はこの2試合の内容はあまり変わらないのだという。「ターンオーバーと不用意なファウルからフリースローで相手に得点を与える状況や、判断がなかなかできていないというところは今週の練習でずっと課題として出ていました。どうやって変えればよいのか、僕もしっかり考えなきゃいけないと思います」


今シーズン初黒星を喫した10月15日の青森ワッツ戦で、ベンチから戦況を見守る安齋竜三HC兼AGM(写真/©B.LEAGUE)

「今のままではB1昇格はあり得ない」――安齋竜三HC兼AGM

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日の会見における安齋HCのチーム評は、自身の在り方も含め非常に厳しいものだった。敗因には、B1クラブとの対戦が続いたプレシーズンに自分たちが追いかける経験ばかりを重ねてきたために、勝ちゲームを勝ち切る展開に不慣れだったことにも触れ、日程を組んだ自分自身の反省点と語った。また、序盤戦でチーム全般に大きな波があり、クロージングで誰を出すべきかが定まっていないこと、その判断に自身としてもブレがあることも明かしていた。

チームに関しては、自身の哲学をトップチームのレベルで全員に求めているもののその手応えが思うほど得られていない様子だ。「修平(宇都宮から移籍してきた喜多川修平)や祥平(アルバルク東京でB1連覇に貢献したベテランの菊池祥平)が一番多く練習しているのが現状。それを僕が望むカルチャーにどう変えていけるかというところです」。連勝しても余裕などありえない。そういうレベルのチームじゃない。いい補強もできて、世間は勝てると思っているかもしれないが、自分の中では一切そんなことはない…。

「今のチームでB1に上がれるなど100%ない。どれだけ毎日フォーカスして努力を積み上げられるか。意識を変えていけるか。それがあれば少し可能性が出てくるぐらいです」。本当に厳しい言葉が次々と飛び出した。「勝っていくチームはやり続けている。昨シーズン中の長崎(ヴェルカ)も佐賀(バルーナーズ)も、ずっとやり続けているなというのを感じていたんですが、それがこのチームにはなかった。本当に全然強いと思っていないです。それを強いチームにしていくために、僕自身もどう頑張っていくかという状況です」

翌週対戦するアルティーリ千葉戦の印象などを質問しても、この日の安齋HCはいつの間にか青森戦での自分たちの振り返りになっていた。「強さ的には相手(アルティーリ千葉)が上。そこに対して僕らはチャレンジをしていかなければいけないチームなのに、今日もやっぱり全然チャレンジしている時間が少なくて」。青森戦を控えた一週間の練習では、普通にやっていれば勝てるだろうという感覚が伝わってきたという。これではどこと戦っても結果は同じ。それが安齋HCの思いだった。




勝ち癖がネガティブな作用として働いている?

アルファーズは直近3シーズン連続でレギュラーシーズンを勝率5割以上で終えており、昨シーズンはB2全体2位タイの4515敗(勝率.750)だった。ただ、プレーオフ・クォーターファイナルでは、レギュラーシーズン序盤に苦しみ勝率が5割に届かなかった西宮ストークス(現神戸ストークス)とのホーム3連戦を12敗で落として、シーズンを終えている。

成績としては十分昇格を狙える力を示していながら、現実は結果がすべてを物語っている。しかしこの現状認識に落とし穴があるようだ。間違いなくアルファーズは負けた。にもかかわらず、勝ち癖がついているのだ。近年の好成績がネガティブに作用してしまっていることを、「それがずっとですね。このチームの特徴だと思います。それをどう脱出していけるか」と安齋HCも認めている。

安齋HCの考え方を熟知している喜多川は、チームの意識の持ちようについて以下のように語った。

「昨シーズンの成績は良かったですけど、中に入って思うことは、勝ちたいという思いは持っているけれど、チームになれているようでなれていない部分があるということです。言葉にするのが難しいですが、一つの目標に向かう全員が外れないようにしなければ。例えば、ミスが続けばチームがしゅんとしてしまいますし、違うことを考える選手が出てくると思うんです。それでも、よい時も悪い時もチームなので、そこでどれだけ自己犠牲を払ってやれるか、それを皆が理解して作り上げていくのが大事だなと思っています」。それは試合だけではなく、質の高い、強度の高い練習の継続で作り上げていくものなのだと喜多川は言う。



取材・文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

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