月刊バスケットボール6月号

比江島慎「完璧だった男が苦難の末につかんだ栄光と自信」[リバイバル記事]

宇都宮への電撃移籍そして、初めての海外挑戦


FIBAワールドカップ2023での日本代表の戦いに胸を熱くしたという方も少なくないはず。結果的に日本代表はアジア1位の成績を残し、48年ぶりとなる自力でのオリンピック出場権奪取という歓喜のエンディングを迎えた。3勝の内の一つ、ベネズエラ戦では宇都宮ブレックスの絶対的エース比江島慎が4Qだけで4本の3Pを含む17得点と爆発。逆転勝利に導いた。常に世代のトップを走り続けてきた男、比江島は海外挑戦や宇都宮のシステムへのアジャストという”“壁”を乗り越え、一昨季ついに自身初のリーグ制覇を成し遂げた。宇都宮移籍という決断からの比江島のキャリアを振り返った。
※『月刊バスケットボール』2023年2月号「宇都宮ブレックス特集」掲載記事を再編集した記事になります

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比江島慎という男のキャリアは完璧なように思える。
百道中時代は全中3位にジュニアオールスター優勝、洛南高ではウインターカップ3連覇、青山学院大でも王朝の中心としてタイトルを総なめにし、在学中に日本代表に選出された。トップリーグでも巧みなステップを生かしたドライブ、ゲームメイク、アウトサイドショットと多岐にわたる活躍を見せ、2017-18シーズンにリーグMVP、昨季は自身初のBリーグ制覇とチャンピオンシップ(CS)MVPも獲得。国内の主要タイトルは網羅したといってもいいだろう。

そんな比江島が宇都宮ブレックス(当時は栃木ブレックス)にやってきたのは5年前、18年の夏だ。国内では敵なしでも世界に出れば自分の力がなかなか通じない。日本代表でそれを感じ取っていた比江島は、「もし、あのタイミングで海外に挑戦しなかったら一生後悔しただろう」と、チャレンジを後押ししてくれた宇都宮への移籍、並びにオーストラリアNBLのブリスベン・ブレッツへの挑戦に踏み切った。



だが、現実は過酷。ブレッツでは言語の壁や慣れない環境への苦戦もあり、出場僅か3試合、平均出場時間もたったの1分でシーズン途中に帰国し、宇都宮に加入。翌年はニューオーリンズ・ペリカンズの一員としてNBAサマーリーグに挑戦するも、こちらも満足な結果にはつながらなかった。
それでも、「決して通用しなかったとは思っていませんし、日本でも成長できると信じて戻ってきました」と比江島。立場を追われてやむなく帰国したというわけではないと強調する。常にトップを走り続けてきた比江島にとって、数少ない“壁”となったこの経験はある意味では新鮮で、発見でもあった。「成功したとは言えない結果でしたが、行かないと分からなかったこともあったし、練習では通用すると感じた部分もありました。世界との戦い方を肌で感じられたので、本当に気持ちもすっきりしています」。アスリートのキャリアは短命で、特に全盛期とされる時期は5年ほど。チャンスがあるうちに飛び込んだからこその“リアル”を体感した意味は大きい。

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取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)、写真/石塚康隆(月刊バスケットボール)、再編集/広瀬俊夫(月刊バスケットボールWEB)

タグ: 比江島慎

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