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2023.06.05

【第2回WUBS】アテネオ・デ・マニラ大(フィリピン)を見逃してはいけない3つの理由

ボールドウィンHCとの忘れがたき2006年の因縁

もう一つ、このチームを追いかける上で重要なのは、ヘッドコーチを務めるタブ・ボールドウィンという人物と日本との縁だ。日本でも30歳代以上のファンやバスケットボール関係者ならば、彼の名前に聞き覚えのある人が相当いるのではないだろうか。



アテネオ・デ・マニラ大を率いるタブ・ボールドウィンHCは、2006年のワールドカップで日本代表を倒したニュージーランドの指揮官だった人物だ(写真/©WUBS)

なぜなら彼は、大げさでもなんでもなく、日本の男子バスケットボールの歴史を変えたと言ってもいい存在だからだ。ボールドウィンは、2002年のFIBAワールドカップでニュージーランドを同国史上最高の4強入りに導き、日本開催だった2006年の大会でも16強入りを果たしている…といえばピンとくるかもしれない。

あの大会でニュージーランドは、グループラウンドで開幕から3連敗と苦戦した。4試合目は1勝2敗の日本との対戦だったが、その試合を落とせばグループラウンド敗退が決まる。逆に日本は、勝てばグループラウンド突破決定という状況。前半を終えて38-20…。18点の大量リードを奪っていたのは日本だった。しかしボールドウィン率いるニュージーランドは後半怒涛の反撃で逆転に成功し、最終的に60-57で勝利を手にしたのだ。

息を吹き返したニュージーランドはパナマに快勝を収めグループラウンドを突破。消沈した日本は2日後のグループ最終戦でスペインに大敗して決勝ラウンド進出を逃した。チームを率いたジェリコ・パブリセヴィッチHCは大会後に解任。以降日本のバスケットボール界は、国内で分裂したトップリーグの対立に象徴されるガバナンスの欠如からFIBAの制裁を受けるなど、暗黒と称すべき低迷期に突入していく。もしも日本代表がベスト16に名を連ね、母国のファンの前で決勝ラウンドを戦うことができていたら、どうなっていただろうか。もしかしたら、まったく異なる機運の高まりもあったかもしれない。そんな「たられば」の尽きない日本バスケットボール史の帰路に、ボールドウィンHCは立っていた。


フィリピン代表級の新戦力も加わったブルーイーグルス

そのボールドウィンHCが率いる今シーズンのアテネオ・デ・マニラ大はどんなチームだろうか。昨シーズンの主力からは、東海大との試合で14得点を挙げたデイブ・イルデフォンソ(Dave Ildefonso)、ファイナルMVPに輝いた身長208cmのリム・プロテクター、アンジ・クアメ(Ange Kouame)らが抜けたが、フィリピンのメディアを見てみると、新戦力として何人かの注目すべき名前が挙がっている。


FIBAワールドカップ2023アジア地区予選でのメイソン・エイモス(写真/©FIBA.WC2023)

メイソン・エイモス(Mason Amos)はシューティングタッチの良い身長201cmビッグマンで、FIBA U18アジア・チャンピオンシップ2022で平均21.2得点、5.8リバウンド、1.5アシストというアベレージを残したプレーヤーだ。FIBAワールドカップ2023アジア地区予選でも2試合に出場しており、レバノン戦で13得点、2リバウンドと活躍を見せた。身長193cmのプレーメイカーで秀でたボールハンドリング能力を持つカイル・ガンバー(Kyle Gamber)も、エイモスとともにU18アジア・チャンピオンシップ2022に出場したプレーヤーだ。ほかに、カリフォルニア出身のガードフォワードでリーダーシップに定評があるショーン・トゥアノ(Shawn Tuano)も新たに加わる。

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FIBA U18アジア・チャンピオンシップ2022でのカイル・ガンバーは、平均6.8得点、3.2リバウンド、2.3アシストのアベレージを残している。チームとしては6位だった(写真/FIBA.U18Asia2022)

ブルーイーグルスは新たなロスターで5月からプレーシーズンゲームに臨んでいるが、最初の2試合は黒星だった。ただ、8月のWUBSまでにもUAAPのシーズン86が開幕する秋口までにも、まだ時間がある。フィリピン・メディアの報道でも、ボールドウィンHCが現段階で欠点が浮き彫りになったことを肯定的に受け止めるコメントが紹介されており、焦りや誤算といったことはなさそうだ。

WUBSでのブルーイーグルスと日本勢の対戦がかなえば、それは将来の日本代表とフィリピン代表の前哨戦としても、ボールドウィンHC2006年の借りを返す機会という意味でもおもしろい。近い将来Bリーグにやってくるタレントもいるかもしれず、見どころの尽きないチームとして追いかけることをお勧めしたい。



文/柴田 健(月刊バスケットボールWEB) (月刊バスケットボール)

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