大学

2023.04.25

大胆な変革で前へ進む日体大・藤田将弘監督「10年、20年と続く日体大バスケ部の文化を築き上げていくのが責務」

──藤田HCは「日本の大学バスケをアメリカのNCAAのようにしていきたい」という思いを持っていると伺いました。冒頭の小川選手のプロ転向というのは、ある意味ではNCAAに近付いているという見方もできます。

「そうですね。卒業を待たずにプロの世界に挑戦することに対しては、大学サイドとしてはポジティブな面もあれば、そうでない面もあります。もし、これから先にポジティブではない面が色濃く出ていくようであれば、何らかの制度を作っていかなければいけないとは思います。

4年先まで見据えて選手に声をかけているということと、選手個人の将来性というところのバランスは難しい部分で、今はまさにその狭間の時期という感じです。当然、選手に声をかけるときは日体大に必要な人材として大学に迎え入れているわけですし、彼らも私の許可で入学してきたわけではないです。大学入試や教授会を経て承認されて入ってきていて、中には奨学金をもらって入学してくれる学生もいます。そういう背景があるからこそ、道半ばで違うステージに行ってしまうというのは、私の心の中では財産を失ってしまったような気持ちにはなりますね。

でも、学生たちはBリーグでプレーしたいという夢を抱きながらバスケットをしていますし、そういう夢がある中で若くしてお声掛けいただけるというのはすばらしいこと。Bリーグと大学の双方が規定や規約などで何かを守っていかなければいけない時代はいずれ来ると思います」


守護神として日体大を支える#23ムトンボ・ジャンピエール

──今がまさに過渡期というわけですね。日体大としては2019年に1部に復帰して、今年で4年目になります。1部復帰後の歩みは順調ですか?

「私としては計画的にやってこられているので順調な歩みだと感じています。周りからは『少し遅かったね』『もう少し早く』というさまざまなご意見をいただきますが、私の中では今がベストです。上がっていくためにはチームとしての文化を作らなければならないですし、それを継承していく必要があります。その年だけのチーム作りではなくて、これから先の10年、20年と続く日体大バスケ部としての文化を築き上げていくのが我々の責務。時間をかけてしっかりと地に根を張って、強い幹を育てていくという思いで今は取り組んでいます。毎年ベストが尽くせたと実感するようにしていますね」

──今後、目指していく日体大の姿はどんなものでしょうか?

「競技としてはもちろん日本一というのがありますが、学生たちが『日体大を選んで、ここを卒業できてよかった』『みんなと一緒にバスケットができて良かった』と思われるチームになっていきたいです。その上で、そういう気持ちを抱ける仲間のみんなと優勝を目指す。この時間が大切だと思うんです。ゴールではなく、ゴールまでの道のりを大切にしたいなと思っています」



──昨年のインカレでは東海地区の中京大と名古屋学院大がベスト8に名を連ねました。年々、関東地区以外のレベルも上がってきていますが、大学バスケ全体の底上げという面ではどのように感じますか?

「だんだんと関東に集まるということだけではなくなってきていると思いますし、そうあってしかるべきこと。だからこそ、関東以外のチームがインカレの上位に入ってくるのはすばらしいですし、逆に関東の代表として我々も出場しているので負けられないという思いも強くなりましたね。

それから少し違う話ですが、見られる、見せるというところももっと意識していきたいです。試合のハイライトなどはもちろんですが、ロッカールームなどのコート外のところで彼らがどれだけアツい思いを持って過ごしているのかを皆さんに見ていただけるような仕掛けをしていきたいですね。人が何かに打ち込んでいる姿や思いを感じ取っていただけるようなシーンはぜひ見てほしいです」

──ありがとうございます。では最後に、今シーズンの展望や目標を教えてください。

「バスケットのところでは先ほども話した日本一を目指すことと、時間をもっと大事にしていきたいなと思います。この新しいロゴとウェアたちと共に瞬間、瞬間を前向きに生きられるようにしていきたいですね。今年は優勝を狙うべきチームになりつつあると思うので、優勝を奪還したい。選手にとっては『優勝したい』だと思うんですけど、僕にとっては“奪還”ですね」




新ロゴマークに込めた思い

昨年までは横向きのライオンをロゴにしていたのですが、今回は正面のライオンにしています。そこには前に向かって走りたいという思いを込めました。制作当時は意識的にその思いを込めたということはなかったのですが、無意識のうちに私の中で前に進むという思いがあったんだと思います。このロゴと共に、とにかく前へ前へ進んでいきたいですね。


スポルディング・ジャパン
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取材・文/堀内 涼(月刊バスケットボール)

タグ: 日本体育大学 スポルディング筑波大学日筑戦

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