【福岡県予選(男子)】福岡第一が強敵・福岡大附大濠を撃破しウインターカップ第1シードを死守!

 

「去年とは違いますね」

 
11月3日、アクシオン福岡で行われたウインターカップ福岡県予選の最終日。注目の男子は福岡第一の5連覇という結果で幕を閉じたが、井手口孝コーチは試合終了シーンについてそう口にした。確かに、ホッと胸をなで下ろすようにして静かに迎えた優勝の瞬間は、選手たちが雄叫びをあげて喜びを爆発させた1年前の県予選とは対象的だ。どちらかといえば挑戦者の立場だった昨年と違い、今年は夏の県予選を制して、そのままインターハイでも頂点に駆け上がった絶対的王者の立場。静かに健闘をたたえ合う選手たちの姿からは、負けるわけにはいかない王者のプライド、そしてあくまで見据えるのはウインターカップ本戦の頂点だという、揺るぎない意志が伝わってきた。

 

 両校すでにウインターカップの出場権を獲得しているとはいえ、日本中から注目を集めた福岡第一vs.福岡大附大濠のライバル決戦。試合は序盤から福岡第一がリードし、それを大濠が何度も追い上げるという白熱の展開となった。

 

 立ち上がりから、大濠は珍しく1-3-1のゾーンディフェンスを敢行。片峯聡太コーチはその意図について「福岡第一さんをリスペクトして、いかに戦うかを考えたときに出した答えが、自分たちの高さや手の長さを生かせるあのゾーンでした。その際、マンツーマンとゾーンを併用しようとすると、選手たちも曖昧になってしまうかなと。そういう“何となく”が通用する相手では絶対にないと思ったので、『今日はゾーンでいく』と覚悟を決めさせるためにも出だしからゾーンで入りました」と語る。これは福岡第一としても「予想していなかった」(井手口コーチ)ことで、序盤こそ外角シュートで得点を重ねたが、次第にサイズのあるゾーンの攻略に手を焼くことに。

 

 

 それでも、ここで頼もしかったのがエースガードの#8轟琉維だ。「ゾーンでくるとは思ったんですけど、1−3−1とは思っていなかったので少しびっくりしました。相手は大きい分、パスが出しにくかったです。でもガードが慌ててしまったらほかのみんなも慌てると思ったので、冷静にいこうと。みんなに声をかけながらやりました」と、この慣れない事態にも落ち着いて対処。徐々にアジャストし始め、ドライブで相手を2〜3人引き付けてからシューターやセンター陣にパスをさばいて得点を演出していく。こうしたゾーンアタックは「東海大九州と練習試合をして、ゾーンにはパスフェイクが効くことなどをいろいろ勉強しました」と#8轟。ゾーンに定評ある元炳善監督率いる大学生に胸を借りたことが、この大勝負で大いに生きたようだ。予期せぬ事態にもしっかりと対応した#8轟について、井手口コーチは「時々ミスもありましたが、ずいぶん成長しましたね。立派なガードになりつつある」と太鼓判を押す。

 

 対する福岡大附大濠も、相手に先行されながらも我慢強く付いていった。#14川島悠翔や#13湧川颯斗がマークされる中、#7広瀬洸生が果敢にドライブでアタックして苦しい時間帯をつなぐ。また、今年の大濠はスタメン平均身長195cmという超高校級の“高さ”が注目されがちだが、要所でブレイクに走れる機動力も大きな強み。この試合も、得点にはつながらなかったとしても要所で何度となく速攻を試み、3Q残り6分半にはシックススマンで出た#5芦田真人のブレイクで50−48と一時逆転に成功する。

 

 

 だが、この勝負どころで再び息を吹き返したのは福岡第一だった。「(逆転されたときに)タイムアウトを取ろうと思ったのですが、うまくボールを引っ掛けられた。流れを相手に渡し切らなかったのは、ディフェンスが良かったと思います」と井手口コーチが言うように、前からプレッシャーを仕掛けて相手のミスを誘い、14−0のランに成功。結局、68−56とリードを12点に押し戻して3Qを終えると、4Qは#87ンバアイ・ムスタファが高さを生かしてリバウンドを掌握。ロングリバウンドも周りのガード陣が取り切り、追いすがる大濠の反撃の芽を摘んだ。最終スコアは83−76。ライバルの挑戦を退け、ウインターカップの第1シードを死守した。

 

 試合後、悔しさをにじませながらも「狙いどおりにやれている部分もありますし、ここで終わりではなく、チームはまだまだ進化の途中。そういった意味では、夏の県予選よりも内容のあるゲームができたかなと思います」と収穫を語った片峯コーチ。「選手たちにも試合前に話したのですが、周りからは『(大濠と福岡第一の試合が)高さか、速さか』みたいな勝負に見られるかもしれないけれど、実際はそんなものではないよ、と。ボールを取りたい方が取るし、勝ちたい方が勝つ。今日の4Qで、中も外もリバウンドやルーズボールを取られましたが、あそこに我々の弱さが表れていたと思います。もっとガメつく、飛び込んでマイボールにして走り切る強さが必要。良い戦いはできても、本当の勝負はもう少し違うところにあったということを、このゲームを機に学んでほしいと思います」。

 

 両校に多くの収穫をもたらした注目のライバル対決。昨冬は大濠、今夏は福岡第一と、頂上からの絶景を知る彼らは、再びの優勝を目指してそれぞれ残り1か月半でさらに進化を遂げるはずだ。

 

 なお、福岡第一が今年の九州大会とインターハイを制したことにより福岡県男子の出場権が3枠に広がり、県予選3位の八女学院がウインターカップ初出場を決定。松本龍次コーチは「自分たちは福岡代表なんだという気持ちで、福岡第一さん、大濠さんに続く形で頑張らなければいけない。全国に出ることが目的ではなく、出てからが本当の戦いだと選手たちに言っています。ウインターカップでは『八女学院、ここにあり』というところを見せたい」と意気込みを語っていた。

 

 

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○取材・写真/中村麻衣子(月刊バスケットボール) 

 



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