中学(U15)

2024.03.26

秋田ノーザンハピネッツU15が2代目女王に!Bユース女子は部活動、町クラブに並ぶ女子バスケ界発展の新たな育成環境となるか?


大会ベスト5(左から茨城U15坂本、三遠U15星野、秋田U15高橋、嶋森、森田)

各チームのステップアップと下級生の躍動

三遠を筆頭に、今大会は各チームの成長が形になって表れた。U15世代は高校や大学のカテゴリーとは違い、県を跨いで選手が集まることはそう多くない。特にBリーグのユースは基本的には拠点とする都道府県内、あるいは練習場の周囲の地域の選手を集めてチームを構成している。つまり、毎年安定して才能豊かな選手が現れる保証はなく、各チームの育成力が試されるわけだ。

その中で三遠や川崎、立川といったチームの飛躍は目覚ましく、川崎は1〜5位リーグでは白星を挙げられなかったものの、優勝した秋田に49-50、三遠に55-58と肉薄。茨城と山形にもそれぞれ好勝負を演じており、試合内容としては優勝していてもおかしくなかった。


U15川崎の選手たち

立川も昨年の主力が着実に成長し、中でも2年生エースの#16 近藤悉月(165cm)は、よりオールラウンドに進化。昨年はドライブやクロスオーバーからの得点が主な武器だったが、今年はそこにミドルレンジシュートやオープンコートでのドリブルプッシュ、味方へのアシストなどを加え、中でも外でも攻撃の起点になれる選手となっていた。

また、越谷も3日間で白星こそなかったが、徐々にチームの統率が取れ始め、選手個々もレベルアップ。所属メンバーも増え、他チームとの差を確実に埋めてきている。

選手個人に目を向ければ、下級生の活躍が印象的な大会でもあった。特に、秋田#21 高橋は、大会MVPをチームメイトの#3 嶋森と最後の最後まで争う高パフォーマンスを継続。優勝を決めた三遠戦ではチームハイの18得点に加え、力強いリバウンドや足を使ったディフェンスでも大きく貢献。大会ベスト5に選出されている。

高橋は秋田での自身の成長と大会の振り返りを、以下のように述べている。

「入ったときはビジョンも全くなかったし、ドライブだけの選手でした。でも、2年生になってからはよりパスやジャンプシュートの向上を心がけてやってきました。この大会では自分のスタイルも出しながら、秋田のバスケットを貫き通すこと、そして仲間を生かすプレーができるように頑張りました」


秋田U15 #21高橋

三遠は #14 星野以外は全員が中学2年生以下。その中で1年生コンビの#8 西村や#6 深津雛(149cm)はドライブや3Pで相手を引っかき回し、2年生の#10 北郷も大きな戦力として準優勝に貢献。単なるベンチメンバーではなく、完全な主力として彼女たちが経験を積んだことは、今後のU15、U18世代の明るい未来を感じさせる出来事だった。

まだまだ発足から間もないチームもあり、実力や選手層にはバラつきがある。主力が下級生であるチームや、小学生をベンチ登録しているチームもある。だからこそ、主力がフル出場するのではなく、若い選手も早い段階から公式戦に出場するチャンスを得られる。これはユースチームの大きな魅力の一つだろう。しかも、より下級生の出場機会を増やすべく、今大会から6分ハーフのU14交流トーナメントも開催されている。

秋田・内村コーチも下級生の育成を一つのテーマとして今大会に臨んでおり、「今回は下級生たちに『お前たちが試合を決めなさい』と話して、負けたときの責任は全て自分が取るくらいのことを伝えました。その方針を3年生も理解してくれて、3月までに1、2年生が目指していきたいバスケットをやって、そこで何ができるかをチームで練習してきました」と語っている。

三遠の小畑コーチも「私が指示をしてフォーメーションなどで勝つことはできるかもしれませんが、それでは選手たちで勝ったのではなく、私が勝ったことになってしまう」と、細かな指示は極力出さずに選手個々の技術と思考による問題解決を求めていた。主体的に取り組みながら各チームが1年を過ごしてきたからこそ、チームと個人の両面でのレベルアップにつながったわけだ。

昨年の第1回大会でMVPを受賞した齋藤凌花(聖和学園高/福島U15出身)は、福島のスクールからU15に上がった生え抜き選手で、高校カテゴリーでも早速活躍。主力の一人としてインターハイとウインターカップでのチームのベスト8入りに貢献し、U17日本代表のエントリーキャンプにも招集されている。

Bユース女子の認知度や注目度は、まだまだ中体連の部活動や町クラブよりも低いのが現状だ。だが、今後も齋藤のような選手が輩出され、いずれはWリーグで活躍する選手や日本代表入りする選手が出てくる可能性もある。そうなれば、U15世代のBユース女子は関係者も見逃せない新たな育成環境として、より認知されていくはずだ。この大会に関しても、すでにBユース女子を新設する複数のクラブから大会参加への問い合わせが来ているそうで、来年以降、さらに規模が拡大していくことが予想される。ファン目線で見たときにも、今からBユース女子をチェックしておけば、未来の女子バスケ界をより深く楽しむことができるかもしれない。

【大会最終結果】
◼️優勝
秋田ノーザンハピネッツU15
◼️準優勝
三遠ネオフェニックスU15
◼️3位
茨城ロボッツU15

【個人賞】
◼️MVP
嶋森 羽奏(秋田U15 #3/175cm/F/中3)
◼️MIP
北郷 愛莉(三遠U15 #10/169cm/F/中2)
◼️ベスト5
森田 心花(秋田U15 #1/165cm/F/中1)
嶋森 羽奏(秋田U15 #3/175cm/F/中3)
高橋 志奈(秋田U15 #21/157cm/SG/中2)
星野 伶奈(三遠U15 #14/160cm/F/中3)
坂本 莉良(茨城U15 #30/163cm/G/中3)

写真/山田勉、取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)

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