NBA

2021.05.23

2021-22渡邊雄太、「ラプターズのチャンピオンシップシーズンに貢献」の決意

ラプターズのニック・ナースHCは、シーズン中の会見でたびたび渡邊について高評価を語っていた


この中で特に大きなポイントとなるのは、渡邊が当初から武器として認識しているディフェンスと3Pシューティングだと思われる。また、ディフェンスについては開幕当初から高い能力を発揮し続けることができていたのに対し、3P成功率が大幅に上昇したのは4月に入ってからだったことを思えば、3Pショットの安定感と確率をさらに高めることが最重要事項ではないだろうか。このほかの課題を改善するのが大事なのは当然だが、それについてラプターズと渡邊がおろそかにすることはないだろう。
渡邊は自身の3Pシューティングについて、「今シーズンでいうと、目標だった(3Pショット成功率)40%は達成できているんですけど、試投数(アテンプト)が圧倒的にまだまだ少ないので」と話した。「そこを増やしていく中で40%をキープして、さらに42%、43%、45%とかで決めていければ、コーチ・ナースがいう『脅威となるシューター』になれると思います。今回40%決めたからといって満足はしていないですし、チームがそういうことを僕に求めているのならば、さらにその上を行く選手になれるように、また今からしっかり努力していくしかないかなと思います」
今シーズン、NBAの3Pリーダーはジョー・ハリス(ブルックリン・ネッツ)の47.5%。上位5人はいずれも45%以上だ。ハリスは今シーズン69試合に平均31.0分間出場して、444本のアテンプト中211本を成功させていた。平均得点14.1は、ジェームズ・ハーデン、カイリー・アービング、ケビン・デュラントのビッグスリーに次ぐチーム4位。そして何より、ネッツはイースタンカンファレンス2位でプレーオフに進出している。
これに対し渡邊は50試合に平均14.5分間出場して90本中36本を成功させての40%。平均得点は4.4だ。渡邊に即刻ハリス級になることを要求するのは酷かもしれないが、似たような脅威を身につけることには十分可能性がある。
渡邊の3Pショットが当たり始めたのは4月8日の対シカゴ・ブルズ戦以降だ。この試合以降出場した18試合に限ると、渡邊の確率は46.9%(49本中23本成功)に跳ね上がっていた。

 ハリスはシーズンを通じてこれができているのだ。それによる信頼度から出場時間も長く得られるために、自然と得点のアベレージも高くなっている。来シーズンのキャンプから前半戦にかけて、渡邊がディフェンスでこれまでと同じパフォーマンスを見せられることを前提として、3P成功率をこのレベルで達成し場合、チャンピオンシップを狙うラプターズに及ぼすインパクトは計り知れない。渡邊は2020-21シーズンを終えて、考えられないほど大きな夢が見られる位置に立っている。

 

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一体感のあるラプターズで家族を喜ばせる活躍をしたい

 

 ラプターズを特にシーズンの後半に取材する中で、フロントとチームの一体感が非常に強いことがたびたび感じられた。前述のウジリ氏の会見では、彼自身がチームに対する愛情を語りながら涙ぐみ言葉に詰まるシーンがあったほどだ。そのようなチームに入れたことも、渡邊にとっては幸運だったのではないだろうか。こちらから、ルーキーとして今シーズンからチームに加わったマラカイ・フリンと、長年チームを率いたリーダーのカイル・ラウリーについてのエピソードを振ってみたところ、以下のような回答をしてくれた。
「面白かったエピソードはすごくあるんですけど…。マラカイ・フリンはメチャメチャ良いヤツなんで、確かに顔立ちが怖くてプレーも強気ですけど、普通にしゃべったらどちらかというとシャイなヤツで、コート上とコート外では人間が少し変わるような感じです。カイルはもう、見たまんまですね。コート上でも常に審判としゃべっていたりとか、相手チームの誰かとしゃべっていたりとかしていると思うんですけど、コート外でも常にしゃべっている人間で…。説明できるようなジョークが言えないんですけど…。でもそうやって、リーダーでいる彼が、僕も含めて若い選手たちにみんなと一切壁なく接してくれるので、だからこそほかの選手達も含めて全員が本当に溶け込んでいきやすいチームだと思います」
チームに加わった初日から雰囲気の良さを実感し、そのままシーズンを終えられたことについて、北米の記者たちへの英語でのインタビューでは「今年のラプターズは最後までチームとして戦った。これまでの2年間見せてもらっていたの同じ闘う姿勢を最後まで通した」ということも話していたが、この日も「いいチームに巡りあえました」とあらためてチームに対する感謝を表していた。
よいチームに恵まれ、多くの収穫を得て終えた2020-21シーズン。渡邊を支えた最も身近で大きなファンとして、日本から活躍を見守る家族の存在も非常に大きかったことを渡邊は自身の手記でも明かしていた。本契約を手にした今、何か親孝行のようなことを考えているかを最後に聞かせてもらった。こうした思いも、来シーズンに向けた決意を一層強くする要素になることだろう。
「今までも何かとやってきてはいるんですけど、(両親は)二人とも、物を買ったりするのを嫌がるというか、あまり欲しがらないんです。コロナがなければ一緒に旅行に行ってゆっくりしたいなとか思っていたんですけど、やっぱり今はそういうのもなかなかできないですし。いつも二人と電話をしていて思うのは、僕が試合に出て活躍をし始めると、本当にすごくうれしそうに僕に話してくれるんです。とにかくうれしそうなので…。僕ができる最大の親孝行は、コート上で僕が今までしてきた努力を全部しっかり出して最大のパフォーマンスをすること。それが二人にとって一番うれしいのかなと思うんです。物を買ったりとかでの恩返しも当然していきたいですけど、今できる親孝行は僕がしっかりと健康でNBAのコートに立って活躍することかなと思っています」

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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