NBA

2021.02.03

渡邊雄太(ラプターズ)活躍の明確な理由 - コートIQの高さを示す3つの事象

グリズリーズ在籍時は思うような機会を得られなかったが、ラプターズでは状況が大きく変わってきている(写真/石塚康隆)

 

ラプターズの弱点“インサイド・プリゼンス”を補う存在感

 

 次に目をやったのは、ラプターズのチームスタッツだ。今シーズンのラプターズはいわゆる“インサイド・プリゼンス”がいないことを懸念材料に挙げられていた。かつて頼りにしていたマルク・ガソール(現ロサンジェルス・レイカーズ)もサージ・イバカ(現ロサンジェルス・クリッパーズ)もいないペイントのディフェンスは迫力に欠けるのだ。
リバウンドはリーグの30チーム中の下から5番目の平均43.0本、ブロックは下から6番目の5.8本という数字だ。開幕前の懸念は現実のものとなっている。
渡邊が買われる要因がここにもあることがわかる。体を張り、走り、飛び、決して“ボールホグ”のようにはならないアンセルフィッシュなプレーぶりがチームに必要なのだ。
渡邊のリバウンドは、全員の数字を36分間出場したと仮定した補正値である「Per 36 Minutes」のデータで見てみると、リバウンドはチーム3位の9.7本だった(つまり平均36分出場すれば毎試合9.7リバウンドを期待できる)。ブロックはと言うと現存ロスターの中では2位となる2.2本である(ウィザーズに移籍したアレックス・レンの2.8本も含めると3位)。
チーム事情としてラプターズが是が非でも強化したいポイントにドンズバでニーズを満たす要素を、大いなるハッスルぶりとともに渡邊は提供している。加えてもう一つ加えるなら、3Pショット成功率(48.0%)も現存ロスターの中で上から4番目とよい位置にいる(これもアレックス・レンの50.0%を含めると5位になる)。


ショットチャートの美しさに見る落ち着きとIQ

 

 リーグ全体のツーウェイ契約プールでエリートな数字をたたき出していること、チームニーズにドンズバで応えていることの2つが、渡邊がこれだけ使われるようになった理由だと思う。…が、なぜそれができるのかを最後に無理やりこじつけてみたい。

 

アメリカ現地2月1日までのデータによる渡邊のショットチャート(NBA公式サイトより)


そのヒントはショットチャートにある。こちらの図はNBA公式サイトで保存した渡邊のショットチャートなのだが、明らかに渡邊が3Pショットとペイントアタックにフォーカスしていることが推察できる。ここまでの全試合で、渡邊はそれ以外のショットを1度しか放っていないのだ。
これは渡邊がラプターズのゲームプランを沈着冷静に遂行しているだろうことを示している。自分のやるべきことが理解できているからこそ、徹底できるのだろう。集中が途切れてついつい流れでミドルレンジから放ってしまうようなことがほとんどないのだ。状況判断とコートIQがいかんなく発揮されている。
今後の活躍を占うには、渡邊のショットチャートを日々追いかけて、ブレの兆候がないかをチェックしてみるといいかもしれない。今の傾向がさらに顕著になるようなら、当然「×」も今より目立たなくなるだろう。そうなればツーウェイ契約を脱してフルの複数年契約が自然と転がり込んでくるはずだ。

 

(月刊バスケットボール)



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