NBA

2021.05.03

渡邊雄太(ラプターズ)に見るマヌ・ジノビリ(元スパーズ)級のポテンシャル

 

 ジノビリはスパーズの2000年代のダイナスティーを支えたビッグ3の一人で、1999NBAドラフトでスパーズから2巡目28位(全体57位)の指名を受け、その後2002-03シーズンにスパーズの一員としてNBAデビューを果たした身長198cmのシューティングガードだ。2002-03のレギュラーシーズンでは69試合に出場したがそのうちスターターは5試合だけ。平均20.7分間の出場で、アベレージとしては平均7.6得点、2.3リバウンド、2.0アシスト、1.4スティールといった数字が並ぶ。フィールドゴール成功率は38.6%、3P成功率は38.4%だった。
ジノビリのデビューシーズンに、スパーズは1999年以来となるフランチャイズ2度目のリーグ制覇を成し遂げている。その中でジノビリはベンチから攻守両面でスパークをもたらす“ハイエナジー・ガイ”として頭角を現したのであり、役割としては現在の渡邊と共通している。左利きでアメリカ国外からやってきたという点も同じだ。
このデビューシーズンを含めスパーズで4度の優勝に貢献したジノビリと現在の渡邊をまるごとそのまま比較するのは無茶というものだが、渡邊には将来、ジノビリとは異なる形ではあっても同じようなインパクトをもたらす存在になりうるポテンシャルがあると思う。

 2002-03シーズンのジノビリと今シーズンの渡邊の、“Per36Minutes(1試合当たり36分間出場した想定での補正スタッツ)”を確認すると、遜色ないとは言わないが、そういった可能性を感じることができる数字が並んでいる。

 

得点 ジノビリ 12.3 渡邊 11.0
リバウンド ジノビリ 5.0 渡邊 8.2
アシスト ジノビリ 3.8 渡邊 1.8
スティール ジノビリ 2.2 渡邊 1.2
ブロックショット ジノビリ 0.5 渡邊 1.1

 

 渡邊は3月29日に行われた対デトロイト・ピストンズ戦以降5月1日の対ジャズ戦まで18試合に連続出場しており、4月に入ってからはすべての試合で最低でも13分28秒以上コートに立つことができている。プレーぶりを見れば、故障がなければシーズン終了までこの傾向は続きそうに思える。

 現状のラプターズのチーム事情からすれば是が非でも、一つでも多く勝ちたいのであり、勝つためにプレーヤーに望むものも大きいはずだ。ナースHCが渡邊に対しても堅実でレベルの高いプレーを望んでいるのは間違いない。ただ、「今日ジノビリみたいにやってもらわないと困る」というように急いで渡邊に重すぎる負荷をかけているわけではなく、長期プロジェクトとして期待をかけていること、また現状のプレーがナースHCの期待に一定以上応える内容であることが渡邊の出場時間とナースHCのコメントから感じられる。

 毎試合が小さな実績を積み重ねる機会。見る側にとっては一歩一歩の足取りを楽しみながら見守る機会だ。

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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