月刊バスケットボール5月号
[caption id="attachment_78109" align="aligncenter" width="300"]

保岡 龍斗
G/188cm/秋田ノーザンハピネッツ、
SEKAIE[/caption]

 

[東京2020 3x3 男子日本代表の横顔]

ファイトと貪欲さでオリンピックに向けて急成長

 

 トーステン・ロイブル日本代表ディレクターコーチが、代表の選考にあたり「最も成長した選手」と評価するのが保岡龍斗だ。「彼のパフォーマンスは本当に安定していて、ペネトレーションのスピードなどは、国際的にも止められる選手はいないと思えるほど素晴らしい。また、ボールマンに付いた時のディフェンスもとても強くなった。彼がここまで成長したことはいい意味で驚き」と称賛を惜しまない。

 Bリーグ秋田ノーザンハピネッツに所属し5シーズンを戦ってきた保岡。「秋田ではディフェンスを非常に鍛えられて、それを3x3でもうまく発揮することができ、自信にもつながっている」と保岡自身も手応えを実感している。「自分に求められているものはディフェンスの強度。世界のどの選手よりもアグレッシブなディフェンスを見せたい。オフェンスでは、ドライブが練習でもいい感じでできているので、自分が起点となる日本のクイックオフェンスを見せていきたい」と意欲を見せる。

 小学校1年からバスケットを始めた保岡。エースを務めていたミニバス、中学時代には「入らないときも打ち続けろ」と教えを受けて育った。その教えを貫き、日体大柏高3年のとき(2013年)には、同校として初めてのインターハイとウインターカップ出場を果たし、両大会とも1回戦を突破する原動力となった。その後、進学した江戸川大では、3年(2016年)のリーグ戦で466得点を記録。総得点、1試合平均得点、3Pシュート成功数、スティールの4部門で1位を獲得する活躍を見せた。この年、チームは2部リーグ2位となってインカレ初出場を果たし、2回戦に進出している。

 そうした保岡の成長を温かく見守り、試合にも熱心に足を運んでくれた祖父が、昨年亡くなった。病に伏していた祖父に、保岡は「オリンピックに出る」と誓ったという。「祖父には約束を果たせたことを伝えたい。自分が夢の舞台で戦う姿を、天国から見ていてくれていると思う」。競技に対する強い信念を感じさせる保岡の姿勢は、そんな祖父への思いから生まれてくるものなのだろう。

 今回の東京オリンピックから正式種目となる3x3。日本代表の1人として、ロイブルコーチは保岡の中に“日本らしさ”を見出している。「彼は日本選手の素晴らしい一例。特段の運動能力を持っていたわけではないが、努力でここまで成長してきた。ファイトする心、勤勉さ、スキルアップに対する貪欲さで日々成長を止めない。日本人として非常に高い価値を持つ選手」。

 このオリンピックで初めてチームを組む日本代表だが、その戦いぶりに“日本らしさ”を感じることができるとしたら、それはきっと保岡が醸し出すものであるに違いない。

(村山純一/月刊バスケットボール)



PICK UP