月刊バスケットボール5月号

バスケットボール女子日本代表世界一への3つのカギ(2) - 身長差

渡嘉敷来夢がリハビリに専念した第2次合宿で、身長185cmの高田真希は谷村里佳、赤穂ひまわりとともにプレーしたメンバーの中では最長身だった(写真/©JBA)

 

 直近2度の世界大会だった2016年のリオオリンピックとその2年後に開催されたFIBA女子ワールドカップ2018における各国のロスターを比較すると、日本の小柄さがどのくらいのものかが明確に見える。5年前、日本代表はリオオリンピック出場12チーム中で平均身長が最も小柄な177cmだった。フロントライン(フォワードとセンター)とバックコート(ポイントガードとシューティングガード)に分けると、フロントラインが181cm、バックコートは164cmとなる。
平均身長よりも長身プレーヤーの人数のほうがわかりやすいデータかもしれない。例えば5年前金メダルを獲得したアメリカ代表には、12人のロスター中に190cm以上が5人おり、そのうち一人はWNBAで活躍する203cmのセンター、ブリトニー・グライナーだった。グライナーはFIBA女子ワールドカップ2018にも出場していた。
日本はこのチームに勝つのだ。ちなみに5年前、中国代表には190cm以上が6人おり、これが大会最多人数だった。3年前のFIBA女子ワールドカップ2018では中国に200cm越えが2人いた一方で、身長190cm以上が一人もいなかったのは日本だけだった。

 

※F/C、PG/SGそれぞれの右側の数字は登録人数

※太字は東京オリンピック出場権保持チーム

※FIBA女子ワールドカップ2018の表中のチームはグループラウンドを勝ち抜いた12チーム

 

 このギャップが顕著に反映される項目は何といってもリバウンドだ。「バックボードを制する者が試合を制する」という金言に従えば、日本はどうしても、ここを克服しなければならない。しかし5年前のリオオリンピックを振り返ると1試合あたりの平均リバウンド数28.7本は参加12チーム中の最下位。オフェンスとディフェンスに分けると、オフェンスの7.2本が10位タイ、ディフェンスの21.5本が11位という厳しいデータが並ぶ。3年前のFIBA女子ワールドカップ2018はどうかというと、一試合あたりの総リバウンド本数33.0はグループリーグを勝ち上がった上位12チーム中の最下位で、オフェンス・リバウンド7.8本も最下位。ディフェンス面の25.3本が9位タイというデータだった。
高田真希(デンソーアイリス)は、この点の危機感を次のように語った。「やっぱり世界を相手にすると身長が低くなってしまいますし、自分のポジションでも10cm、20cmの差が出てしまいます。自分を含めチームディフェンスがすごくカギになると思います。特にリバウンドを簡単に取られてしまうと、すぐに点数を与えてしまうことになるので、アグレッシブに、ハードにディフェンスして、しっかりボックスアウトしてリバウンドを獲り、そこから日本の持ち味である速いバスケットに繋げていかなければいけないです」
日本はどうするべきか。リバウンドを獲るためにも、個々の能力が高い海外勢を相手に1対1で守るのではなく、継ぎ目のないチームディフェンスを高い精度でやる必要があると高田は語った。また、谷村里佳(日立ハイテククーガーズ)は、「自分が取れれば一番いいと思うんですけど、それよりも自分のマークマンに獲らせないようにボックスアウトすること」と別の視点からのコメントをしてくれた。

 

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リバウンドでは相手に獲らせないことも重要と谷村(中央左)は話してくれた(写真/©JBA)


190cm以上の長身プレーヤーが代わるがわるベンチから登場して、そのたびごとにスカウティングに沿って対応しなければならないのは本当に難しいことに違いない。高田と谷村が話してくれたポイントを40分間、すべての試合で継続する必要があることを、チームの全員が感じているはずだ。
一見圧倒的と思われる身長差なのは間違いない。しかしひるむ必要はないことを、NCAAの強豪ルイビル大で2シーズンを過ごした今野紀花のコメントが感じさせる。会見で今野は日本代表のフィジカルさが本場に引けを取っていないことをこう話した。「アメリカではフィジカルも強くて、その中でプレーしていたことが自分の良い経験にすごくなっているというのを、代表に来て感じました。でも、代表の方々もやっぱり世界で戦っている経験があったり、同じくらいフィジカルが強いので、代表の合宿についていくにもアメリカで経験したことがすごくよかったと思います」。NCAAトーナメントでエリートエイトまで戦って間もない段階で帰国した今野が、本場に負けないほど強いと感じるフィジカルさが、このメンバーにはあるのだ。
2017年のアジアカップ(翌年のワールドカップ出場権をかけた大会)では、日本は準決勝で中国を、決勝ではオーストラリアを破っている。2年前のFIBA女子オリンピック プレ・クオリファイイング・トーナメント2019では、前述のグライナーと並んでWNBAでも圧倒的な能力を見せているエリザベス・キャンベージ(203cm)を擁したオーストラリアも倒した。FIBA女子ワールドカップ2018の準優勝チームだ。

 

アメリカでフィジカルなプレーを2年間経験してきた今野紀花。日本代表のフィジカル面の強さを感じると同時に、スピード感へのアジャストが必要なことも話していた(写真/©JBA)

 

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取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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