月刊バスケットボール5月号

Wリーグ

2022.10.18

Wリーグいよいよ開幕。戦力拮抗で混戦模様

 

 

 10月19日(水)、2022-23シーズンのWリーグが開幕する。ここ数年の流れを見るとENEOSがリーグ記録の11連覇を達成したあと、19-20シーズンはコロナ禍によりプレーオフが中止(ENEOSがレギュラーシーズン1位)、20-21、21-22シーズンとトヨタ自動車が連覇を遂げた。昨シーズンは富士通がファイナルに進出し、ENEOSは15シーズン続いていたファイナル進出を逃し3位、成長著しいシャンソン化粧品が4位に食い込んだ。

 そうして迎える今シーズン、勢力図はどうなっているだろうか。10月13日のシーズン開幕会見で、目標を「優勝」と掲げたチームを中心に見ていきたい。

 まず、3連覇を目指すトヨタ自動車だが、三好南穂、長岡萌映子、馬瓜エブリンら主力のベテラン勢が引退や移籍などで抜け、ラインナップは大きく若返った。今シーズン、アシスタントコーチから昇格した大神雄子ヘッドコーチは「一からのスタート」と語る。とはいえ、昨年のファイナルでブレイクしたシラ ソハナ ファトー ジャ(187cm)に加え、ENEOSから梅沢カディシャ樹奈(190cm)を加えたインサイド陣は破壊力がある。また、馬瓜ステファニー、山本麻衣、平下愛佳といった主力メンバーは日本代表に選出されており、戦力は充実している。代表組が合流し、チームワークの醸成がどこまで進むかがポイントとなりそうだ。

 昨シーズン準優勝の富士通は、得点源の篠崎澪、3Pシューターの内野智香英らが引退したほか、オコエ桃仁花が海外リーグにチャレンジすることになりチームを離れた。移籍2シーズン目でキャプテンとなった宮澤夕貴は「ディフェンス、リバウンドはもちろん、今シーズンはプラス得点面でも」と、これまで以上にオールラウンドなプレーと、経験面で貢献すべく気持ちを引き締める。若手のステップアップともに、WNBAから戻ってきた司令塔の町田瑠唯と宮澤のコンビをさらに磨き上げていくことが、頂点を狙うには必要な要素となる。

 女王返り咲きを目指すENEOSは、満を持して渡嘉敷来夢がキャプテンに就任。「ここ2シーズン勝ててないのは自分の責任。もっと積極的にリングにアタックすることや、流れが悪いときにディフェンス面でチームを支えることが必要」と自らやるべきことを挙げ、どんなときでも自分がいれば大丈夫と思ってもらえるような姿を練習から見せることで、サンフラワーズを力強く引っ張っていく覚悟を表した。日本代表で司令塔を務めた宮崎早織は、昨シーズンのプレーオフでは悔しさを口にしており、渡嘉敷と共にリベンジを期しているに違いない。トヨタ自動車から長岡萌映子を加え、得点力のある奥山理々嘉、ポイントガードの星杏璃ら若手も力を付けてきているが、3Pシューターの林咲希、ベテランガードの岡本彩也花が、故障からどのようなタイミングで戻ってくるかも大きく影響してくるだろう。

 

 

 注目なのがオフシーズンに大型補強をしたシャンソン化粧品。谷村里佳、北村悠貴が日立ハイテクから、宮坂桃菜が新潟から、さらに188cmと高さのある栗林未和が富士通から加わった。栗林はこれまでケガで出場機会が限られてきたが、それ以外の3人は元のチームではスターターとして活躍してきた実績のある選手たちだ。吉田舞衣、野口さくらといった日本代表や、代表候補となる成長著しい若手たちと、経験豊かな新戦力がかみ合えばチーム力は一気に上昇する。チーム生え抜きのキャプテン・小池遥も「目標は優勝」と05-06シーズン以来の頂点を視野に入れる。

 昨シーズンはチームのコンディション不良も影響しプレーオフクォーターファイナルでシャンソン化粧品に敗れ、ベスト4入りを逃したデンソーだが、皇后杯では準優勝を果たしておりチーム力は十分。日本代表の大黒柱・高田真希、若手のエースとして活躍する赤穂ひまわりを擁し、元日本代表の本川紗奈生、赤穂さくらも健在。引退した司令塔の稲井桃子の代わりは昨シーズン頭角を現した若手の高橋未来、移籍加入の永田萌絵らが切磋琢磨する。若手、中堅、ベテランとバランスの良い布陣で悲願の初優勝を目指す。

 やはり日本代表で成長著しい東藤なな子が牽引するトヨタ紡織は、その東藤の台頭とともにチーム力を上昇させてきている印象がある。加藤優希、坂本美樹らチームのコアメンバーは昨シーズンと同様。加えて河村美幸がトヨタ自動車から移籍加入したことで、インサイドに厚みをもたらしている。昨シーズンは皇后杯で初のベスト4入りを果たし、上位チームと互角に戦えるチーム力を証明。今シーズンはダークホース的な存在だ。

 同様にチーム・ディフェンス&オフェンスに磨きをかける三菱電機も2018-19以来のファイナル進出、そしてその先にある優勝を目標に描いている。アイシンから三間瑠依(185cm)、ルーキーのダフェ ハディ(188cm)と高さを加えた。西岡里紗(186cm)らサイズのあるインサイド陣と渡邉亜弥ら得点力のあるガード陣がバランスよいプレーを展開しそうだ。

 ざっと俯瞰してみても、今シーズンはどこかのチームが飛び抜けている状況ではない。またコロナ禍で実現できずにいた全国各地での試合開催が3シーズンぶりに復活する。10月19日のトヨタ自動車対ENEOS戦(@国立代々木第二体育館/東京都 19:00~)を皮切りに、北は北海道から南は沖縄県まで、レギュラーシーズン182試合が開催される。また、ファイナルは武蔵野の森総合スポーツプラザ(東京都)で2023年4月15日~17日に開催予定。昨シーズン記録した過去最高入場者数7151人を超える集客に挑戦するという。シーズンを戦い抜き、ファイナルの舞台に立つのはどのチームか。世界の舞台で再び輝くために、国内でのし烈な競争が幕を開ける。

 

(文・飯田康二 写真・石塚康隆/月刊バスケットボール)



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