月刊バスケットボール5月号

【ウインターカップ2019】福岡県同士の“最終決戦”を制した福岡第一が冬の連覇達成

 最終決戦――。まさにそんな言葉にふさわしい対戦カードとなった『Softbank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会』の最終日。男子決勝は2019年の高校バスケット界をリードしてきた絶対王者・福岡第一(福岡①)と、その福岡第一に阻まれ続けてきた最強にして最大のライバル福岡大附大濠(福岡②)の“福岡対決”となった。

 

 多くのメディアが報じるように、この福岡対決はインターハイとウインターカップを含めて史上初、同県対決でも通算で史上3度目という稀有な組み合わせとなっている。

 

 前日の記者会見で「子どもたちには意識させず、目の前のディフェンスとオフェンスをしっかりとやらせたい」と福岡第一を率いる井手口コーチが言えば、大濠を指揮する片峯コーチも「福岡対決ということで変に力み過ぎないようにしたい。福岡県のレベルの高さを明日のコートで目一杯表現できれば」と、互いに意識を強く持ち過ぎないように、という趣旨の言葉を口にしていた。

 

会場は超満員で立ち見も多数という中でティップオフ

 

 そんな一戦には連日以上の多くの観客が詰めかけ、電車内や駅から会場までの道中でも「福岡第一」「大濠」という言葉が異様とも言えるほどに飛び交っていた。福岡第一の高速バスケットが炸裂するか、それとも大濠が「第一をたたき潰す」(大濠#14横地)のか。注目の対決がついにティップオフ。

 

 先制点は福岡第一。#8河村から#60スティーブへのホットラインで試合を動かすと、大濠も#8木林、#14横地のドライブで対抗。それでも大舞台の経験値に勝る福岡第一がスティーブと#46小川を起点に得点を積み重ね、福岡第一がリードを生み出す。

 

#60スティーブは30得点、20リバウンド、11ブロックのトリプルダブル

 

 2Qに入ると福岡第一が徐々に試合のテンポをコントロールし始める。河村の鋭いドライブや#13神田の3Pシュートで最大20点のリードを作る場面も見られた。対する大濠も#6田邉、#10平松が何とかつなぎ、13点差(42-29)で前半を終えたが、エースの横地はわずか3得点(試合をとおしても9得点)。#54内尾がフェイスガードでエースを封じ込めたことは大濠にとって大きな誤算だったと言える。

 

 迎えた後半、大濠が勝負に出る。オールコートプレスで福岡第一のリズムを乱すと、ここまでインサイドで無類の強さを見せていたスティーブに対してもダブルチーム、トリプルチームで対応し、ターンオーバーを誘発。攻めては味方のミスを田邉がフォローし、一時9点までリードを縮めた。それでも動じなかった福岡第一は河村、スティーブ、小川の3本柱を起点に冷静なボールコントロール。大濠も木林、平松の3Pシュートで何度も打開のチャンスを得たが、あと一本が決まらない。

 

#8河村を起点に福岡第一は大濠に流れを渡さなかった

 

 みるみる時間が経過し、10点差で迎えた残り11.2秒。勝敗が決した大濠の最後のオフェンスは横地のアイソレーション。片峯コーチ、そしてチームメイトたちは、この3年間の大濠を支えた横地にラストプレーを託した。「自分が腐ったときでもチームメイトは声をかけてくれたし、先生も見捨てずに指導してくれた」と話したエースの最後の3Pシュートはきれいな軌道を描いてリングに吸い込まれた。

 

 タイムアップ。福岡第一が大濠を退け、令和初のウインターカップ王者に。大きな期待とプレッシャーの中、チームを率いた井手口コーチは「ホッとしています。彼らは日本の高校生の中で一番練習をして、いろんなものを犠牲にしてきた。選手たちを褒めてあげたい」と最大限の賛辞を送った。

 

 大濠の2年生ガード#10平松は「試合の後、河村さんに『来年は絶対に第一を倒します』と言いました。そうしたら河村さんは『やってみろ!』と返してきた」と明かす。史上初の福岡対決となった今大会の決勝戦は、最終決戦であると同時に新たなスタート。バトンを託す者と託される者。最後の最後までライバル関係むき出しの、1年を締めくくるにふさわしい一戦となった。

 

(月刊バスケットボール)



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