月刊バスケットボール6月号

Wリーグ

2022.09.05

選手に気持ちを寄せ、社会人チームを率いるWリーグのOGたち

 9月2日から4日まで、高崎アリーナ(群馬県高崎市)でWリーグ オータムカップが開催された。オータムカップはWリーグの開幕前に行われるプレシーズントーナメントで、Wリーグチームに加え、社会人チームも6チームが参加している。その一つ、紀陽銀行のヘッドコーチを務めているのが永田睦子。現役時代はシャンソン化粧品のエースとして活躍。日本代表としてもアトランタ、アテネと2回のオリンピックに出場するなど、長く日本の女子バスケットボール界を牽引してきたスター選手だ。飛び抜けた身体能力の高さを持ち、力強いプレーで縦横無尽に活躍した。

 

選手たちを励まし続ける永田睦子HC(紀陽銀行)

 

 そんな永田は現役引退後、クリニック活動やテレビ解説などを務めてきたが、4年前から紀陽銀行のヘッドコーチとなった。「クリニックで個々の選手の育成に触れてきましたが、徐々にチームをコーチすることに興味が湧いてきて、そんなタイミングで紀陽銀行さんから声がかかったので」とコーチの道に進んだと言う。

 オータムカップでは初日にWリーグのデンソーに敗れたものの、2日目には社会人チームのミツウロコに勝利した。先行するも追い付かれる接戦。ベンチの永田は、選手がミスをしても「大丈夫。慌てないで」と選手を励まし、味方がボールを奪えば「走れ~」と一緒に走りださんばかりに大声を張る。

「試合中に怒ったところで、ミスは取り消せませんから。今大会のような注目される場でやる機会は少ないですし、なかなか力を発揮できないですよね。プレッシャーをかけるよりは、励ました方がいいかなと感じています。もちろん、タイムアウトや試合後などでは、悪かったところを指摘したり、修正するように指示したりはしてますよ」と話す。

「でも『明るいチーム』って思われているみたいで、そうした雰囲気から、うちのチームでやりたいって思ってくれている選手も多いんです」と前向きな姿勢が、チームとしての好評価につながっているとも言う。

 一方で、試合中であっても、細かなステップワークやボールのもらい方などを身振り手振りで指導する。

「ファンダメンタルってカテゴリーにかかわらず大事なことですから、ファンダメンタルにはうるさいと思います。結局そうしたところから負けたり、勝ちのチャンスを拾ったりすると思っています」とこだわりを見せる。

「いろいろな指導者の影響を受けて、それをトータルに自分の中で消化し、指導しているつもりではあるんですが、やっぱり中川さん(中川文一氏/シャンソン化粧品時代のHC。アトランタ五輪の日本代表HC)の影響が大きいなって気付くことが多いですね。中川さんもファンダメンタルはとても大切にしていましたから」と、日本リーグからWリーグをまたぎ、10連覇を成し遂げたシャンソン化粧品の名将からの影響は少からずあることを自認する。

 

 

 日本のトッププレーヤーとして世界と伍してきた永田に、現在の選手たちに物足りなさを感じることはないかと水を向けると「もっとできるだろうって瞬間的に感じることはあります。でも、彼女たちは昼は仕事をして、それが終わってからバスケットボールの練習に来ているんです。単純に忙しいというだけではなく、職場ではフラストレーションもあると思います。そうしたことをコートに持ち込まずに、バスケットボールと向き合っているんです。私はバスケ一本槍できたので、そんな彼女たちを尊敬してるんです。ほんとにすばらしい子たちなんです」と永田は思いを口にした。

 

 もう一人、社会人チームを率いてきた元Wリーガーがいる。山形銀行の木林稚栄だ。山形銀行のヘッドコーチとなって2年目の木林は、現役時代はENEOS (当時はJOMO→JX →JX-ENEOS)で、連覇を続ける常勝集団の中で8シーズンプレーし、日本代表にも名を連ねたトッププレーヤーだ。引退か現役続行かと悩んでいるときに、アシスタントコーチにとの声をかけられENEOSで4シーズンアシスタントコーチを務めたあと、山形銀行のヘッドコーチに就任した。



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