月刊バスケットボール5月号

男子バスケU16日本代表、なるか2度目のW杯出場 - 6.12(日)からFIBA U16アジア選手権

 6月12日(日)から19日(日)までドーハ(カタール)で開催されるFIBA U16アジア選手権に出場するバスケットボール男子U16日本代表が、最終合宿を終える6月9日に日本を立つ。この大会はFIBA U17ワールドカップにつながるアジア地区予選の意味合いを持つ重要な大会で、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で中止となった2019年の大会を除き、2009年から2年に1度開催されてきた。


☆男子U16日本代表のFIBA U16アジア選手権での戦績
2009年 ジョホールバル(マレーシア) 6位
2011年 ニャチャン(ベトナム) 3位
2013年 テヘラン(イラン) 3位(FIBA U17ワールドカップ2014に出場)
2015年 ジャカルタ(インドネシア) 4位
2017年 仏山(中国) 6位
2019年 開催中止
2022年 ドーハ(カタール)

 


2017年大会の代表メンバーたち(写真/©FIBA.U16AsiaChampionship2017)


是が非でもつかみたいU17W杯出場権


13チームが出場する今大会は、4強に入れば今年7月にマラガ(スペイン)で開催されるFIBA U17ワールドカップ2022に出場できる。当然これがU16男子日本代表のチームとしての大きな目標だ。男子U16日本代表は上記のとおり、パンデミック前の2017年大会までの5大会すべてに出場し、最高成績は3位(2011年、2013年の2度)。これまでベスト8進出を逃したことはないが、4強入りを逃した大会が2度ある。


また、各回の翌年に開催されてきたFIBA U17ワールドカップには、2014年にアラブ首長国連邦のドバイで行われた第3回大会に一度だけ出場している。このときU17男子日本代表は16チーム中14位とチームとしての成績は振るわなかったが、八村 塁(当時明成高校、現ワシントン・ウィザーズ)が平均22.6得点で大会の得点王に輝く快挙を成し遂げた。


ジェイソン・テイタム(現ボストン・セルティックス)らを擁したアメリカ代表との試合では38-122という屈辱的な大敗を味わったが、八村はその試合でも25得点、4リバウンド、2スティール、2ブロックを記録し、その後の飛躍への足掛かりを得ている。八村の活躍とその後の飛躍は、世界の感覚を肌で受け止めるとともに海外のバスケットボール関係者の目に留まる機会にもなるアンダーカテゴリーのワールドカップ出場が、日本のバスケットボール界の将来に大きな影響を及ぼすことを如実に物語る。その舞台につながるFIBA U16アジア選手権2022は、個々のプレーヤーにもいわゆる業界にも、非常に大きなチャンスをもたらすステップだ。

 


新任のマルティネスHCの下、大会初日にクウェートと対戦


4月からアンダーカテゴリーの新任としてチームを率いているアレハンドロ・マルティネスHCは、U17ワールドカップの開催国スペイン出身で、リッキー・ルビオ(インディアナ・ペイサーズ)ら同国の有力プレーヤーを指導した経験がある。アンダーカテゴリーの指導歴も国際経験も豊かで、昨シーズンまでは中国のプロリーグCBAでコーチングにあたっていた。あいにくのコロナ禍もあってか、中国では臨むような生活ができなかったことも伝えられていたが、来日後の生活は充実しているようだ。


マルティネスHCの下、U16日本代表候補は「ターンオーバーを減らすこと」「全員でボックスアウトをし、ディフェンスリバウンドを確実に獲ること」「1on1の強いディフェンス」「ボールをシェアして5人全員でオフェンス」の4つを基本のコンセプトとして強化を進めてきたことが、公益財団法人日本バスケットボール協会(JBA)公式サイトのレポートで明かされている。マルティネスHCは合宿参加メンバー全員について「一つひとつの練習で貪欲に吸収する姿勢は素晴らしかった」と話しており、勤勉さをはじめとした日本の若者たちの特徴に手応えも感じている様子だ。


アンダーカテゴリーのタレントに関する国際的なスカウティング情報の量は、プロレベルなどに比べればごく自然に少なくなる。JBAが発信しているコーチやプレーヤーのコメントなどからも、対戦相手の特徴を十分把握できた上での戦いというよりも、どんな相手であれ自らの特徴をより強くコート上で表現することに、より重点を置いた強化策が取られていることが感じられる。

 

 崎濱秀斗(福岡第一高校2年)らクイックネスに長けたバックコート陣と、身長200cmの川島悠翔(福岡大学大濠高校2年)、204cmの渡辺伶音 らフロントラインを含むロスター12人の平均身長は189.4cm。機動力を生かし適切なスペーシングを行うこと、200cm前後のプレーヤーの高さも武器としてオフェンスを組み立てることなどがJBAの合宿レポートで語られている。


プールラウンドで同組となるのはフィリピンとクウェートの代表チーム。FIBA世界ランキング(ボーイズ)では日本(32位)に対してフィリピン(24位)は格上で、アメリカ系フィリピン人のケイラム・ハリスという身長196cmのスモールフォワードをはじめとした平均身長189cmの12人のロスター(および3人のリザーブ)が明らかになっている。サイズ的には日本に近いチームだ。


ハリスは豪快なダンクも繰り出す運動能力の高いプレーヤーで要注意の存在。最長身のアレクサンダー・クヌーフ(201cm)は登録としてはセンターだが、映像を見る限りシューティングレンジが広くストレッチファイブとして柔軟性の高いプレーをしそうなプレーヤーだ。ハリスとクヌーフはいずれもアメリカでプレーしており、今大会に臨むU16フィリピン代表で核となるのはこの二人かもしれない。


日本と同グループのもう一つのチームであるクウェートは、ランキング上は69位で日本からは格下。ただ、アンダーカテゴリーのランキングはU16世代の成績に特化した算出方法でもなく、個別の大会での戦力を示すデータとは言い難い上にメンバーの情報が少ない。日本が初日に対戦する相手だけに、落ち着いて自己表現を全力で40分間しっかり行うことがカギに違いない。マルティネス新HC以下コーチングスタッフがいかにプレーヤーたちのポテンシャルを引き出すか注目だ。


今大会では13チームが4つのグループに分かれて総当たりのグループラウンドを戦い、各グループ上位2チームが決勝トーナメントに進出できる。以降は8チームによるノックアウト方式の決勝トーナメントで王座を競う。

 

U16男子日本代表メンバー


☆FIBA U16 アジア選手権大会 カタール 2022(FIBA U16 Asian Championship Qatar 2022)
大会公式サイト
開催期間: 2022年6月12日(日)~6月19日(日)
開 催 地: カタール(ドーハ)
組み合わせ:
POOL A: オーストラリア、バーレーン、インド、カタール
POOL B: イラン、レバノン、インドネシア
POOL C: フィリピン、日本、クウェート
POOL D: 韓国、ニュージーランド、カザフスタン


JBA合宿レポート

 


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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