月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.01.27

トレイ・ヤング(ホークス)が語る1.26の“ロゴスリー” - The proof is in the pudding(練習はうそをつかないということ)

 

シューティング・レンジの拡大こそ生きる道

 

 アメリカ現地時間の1月26日に行われたアトランタ・ホークス対ロサンジェルス・クリッパーズの一戦は、ゲームハイの38得点を挙げたトレイ・ヤングの活躍などでホークスが108-99と勝利を収めた。98-90の8点リードで迎えた第4Q残り2分3秒、結果的に勝負を決めたビッグショットを決めたのもヤング。ゴールに向かってセンターサークルのやや左側、32-foot(9.75m)の距離から放たれた、いわゆる“ロゴスリー”だった。

 試合後、シューティングに関する自信について聞かれたヤングは、これまでの取り組みを誇らしく話した。「とにかく練習です。これまでの人生で、数えきれないほどの時間を費やしてシューティング・レンジを広げようと頑張ってきました。僕は世界一大きいわけでもないので、レンジを広げることがゆくゆく助けになるとわかっていましたからね。反復練習を欠かさずにいつもやってきました。練習はウソをつかないということで、その成果が出ているんです」

 ヤング自身の英文のコメントは以下のようなものだった。

“I’ve trained countless hours throughout my life just trying to continue to expand my range. I knew I wasn’t the tallest guy in the world. So, for me, just being able to expand my range, I knew that’s going to be something that helped me along down the road and for me just continue (to) put up the repetitions, I always work on it. For me I know the proof is in the pudding. So, the work is gonna show off so…”

 訳中で「練習はうそをつかない」としている部分は「The proof is in the pudding」という面白い慣用句。「プリンがおいしいかどうかは食べてみて初めてわかる」というのが本来の意味のようだが、「練習しているかどうかは試合を見ればわかる」といった意味合いでとらえれば当たらずも遠からず、だろう。

 

息づくマンバ・メンタリティー

 

 このショットを決めた後、ヤングはセンターサークルを指差し、さらに胸をたたいて右手で「2」、左手で「4」を示した。「2」は1年前のこの日、悲劇のヘリコプター事故で帰らぬ人となったコービー・ブライアントの次女ジアナの背番号であり、「2」と「4」で作られる#24はブライアント自身がキャリア後半の10年間、ロサンジェルス・レイカーズで着用したジャージーの背番号だ(デビューした1996年からの10年間は#8)。

 2018年にNBA入りしたヤングは、2016年に引退したブライアントと同じ試合でプレーしたことはない。しかし、2019-20シーズンにブライアントは、ジアナを連れてヤングの試合に2度姿を見せていた。ヤングがジアナのお気に入りのプレーヤーだったからだ。尊敬するレジェンド親子とヤングは、事故の前日にもやりとりをしていたほど親しかった。それだけに1年前の悲劇はヤングにとって胸が張り裂けるほどつらかったと想像できる。

 あの日のヤングはワシントン・ウィザーズとの試合に、普段の#11ではなくブライアントの#8で登場。ティップオフで最初のオフェンシブ・ポゼッションを得たホークスは、バックコートでヤングがボールを保持して8秒間たたずみ、意図的に「8秒バイオレーション」を記録させてブライアントへの哀悼の意を表した。

 45得点。152-133の勝利。それでもすべてが暗闇での出来事のようだったにちがいない。しかしあの日も、1年が過ぎた今年の1月26日も、そのパフォーマンスはマンバ・メンタリティーがヤングの中に息づいていることを感じさせるものだった。

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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