月刊バスケットボール5月号

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2021.02.05

中村太地、MVPも受賞した韓国KBLでのここまで

1月22日、中村太地は日本人プレーヤーとして初めてKBL公式戦のMVPを受賞した(写真 ©︎KBL / 協力 Will)

 

日本人プレーヤー初のKBL公式戦MVP獲得

 

 昨夏韓国プロリーグKBLの原州DB PROMY(ウォンジュ・ディービー・プロミ)にアジア枠で入団した中村太地が、1月22日に行われたアウェーでの高陽オリオン戦にスターターとして出場し、この試合でのMVPに輝いた。中村はKBL史上初の日本出身プレーヤーであり、日本人プレーヤーが同リーグ公式戦でMVPを獲得するのももちろん史上初のことだ。
#0を背負う中村はこの試合で26分13秒プレー。3Pショット3本を含む13得点に5リバウンド、さらにはチームハイの5アシストと持ち味を発揮し、92-90という僅差の勝利に貢献した。
原州は立ち上がりこそ高陽オリオンにリードを許したものの、ベンチメンバーを含めた全員バスケで得点を重ね第1Q終盤に逆転。そのままリードを保って前半を43-42で終えると、第3Q半ばには一時14点差をつけて優位に立つ。第4Qに入ると高陽オリオンの怒涛の反撃で一度はリードを奪い返され、残り9秒でも同点の状況だったが、きわどく勝利を収めた。一丸となって掴んだ勝利と異国の地で初めて手にした勲章。この日の活躍は中村にとって忘れられないものになるだろう。

 

KBLキャリアハイは18得点、ダブルダブルも1度達成

 

 中村所属の原州は韓国東北地方江原道原州市にあるプロチーム。1997年にKBLが創立されて以降、直近の2007-08シーズンを含め3度KBLチャンピオンになっているほか、2017-18シーズンを含め9度のファイナル進出経験を持つ。今シーズンは2月3日時点で12勝24敗と低空飛行だが、中村がMVPを獲得した1月22日以降は3勝2敗と上向きだ。中村の獲得は、今シーズンからKBLが採用したアジア枠でのものだ。
新型コロナウイルス感染抑止対策の下でチームとの合流が大幅に遅れただけでなく、言葉の壁も立ちはだかる環境も手伝って、ここまでの中村は決して思い通りの活躍とは言えない。ただ、バスケットボール以外の様々な要素を鑑みれば、37試合中31試合に出場して平均5.6得点、2.2アシスト、2.1リバウンドという数字は、ことさらに心配なものではないだろう。昨年10月31日の対仁川電子ランドエレファンツ戦ではKBLでのキャリアハイとなる18得点を記録しており、続く11月1日の対安養KGC戦では14得点、10アシストで自身初のダブルダブルも達成している。
名門福岡大大濠高校から法政大学に進み、1年生として在学していた時点から特別指定枠(シーホース三河、富山グラウジーズ、横浜ビー・コルセアーズ)とプロ契約(4年生時・京都ハンナリーズ)でBリーグの舞台を踏んだ。日本代表としても2017年の第39回ウィリアム・ジョーンズカップ、2018アジアパシフィックユニバーシティチャレンジ、第18回アジア競技大会(2018年)、第41回ウィリアム・ジョーンズカップ(2019年)と場数を踏んでいる。190cm、83kgのビッグガードとしてKBLでも貴重な経験を積むとともに、原州に貢献できるだけの能力は持っている。
韓国の伝統的な文字であるハングルで「なかむらたいち」は「나카무라 타이치」と書く。なじみがないと言葉の壁も感じるだろうが、それも楽しみながらチーム公式サイトなどで最新情報を追いかけてみてはどうだろう。それはある意味、中村のたどった道の追体験だ。


原州DB PROMY(ウォンジュ・ディービー・プロミ)チーム公式サイト

https://promy.kbl.or.kr/

 

言葉や文化を学びつつ、コロナ対応に苦労しつつのシーズンだが、今後の糧になることは間違いない(写真 ©︎KBL / 協力 Will)

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)



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