月刊バスケットボール5月号

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2021.04.14

中村太地(韓国KBL原州DB PROMY)帰国インタビュー - チームの意識、プロ意識を再認識したKBLでの1年を振り返る

4月9日に帰国した中村は、その当日夜にインタビューに応じてくれた

 

 韓国プロバスケットボール・リーグKBLの原州DB PROMY(ウォンジュ・ディービー・プロミ)で1シーズンを過ごした中村太地が4月9日に帰国し、YouTubeライブ配信でファンに向けた報告を行うとともに、オンラインでメディアの取材に対応した。
中村は福岡大大濠高校から法政大学に進んだ後、1年生時からBリーグの舞台を踏んでいる。最初の3年間は特別指定選手枠でシーホース三河、富山グラウジーズ、横浜ビー・コルセアーズに、4年生時はプロ契約で京都ハンナリーズの一員として活躍。法政大学卒業後の昨オフにはアジア枠でKBL原州入りを表明し、言葉や文化の壁だけでなく新型コロナウイルスのパンデミック下における困難も伴うチャレンジに立ち向かった。
韓国のバスケットボール熱の高さは相当なもの。「関心はすごく高いと思います。『スポTV』というチャンネルがあって、テレビでもNBAはばんばんやっていますし、地上波でKBLの試合も全試合見られます。CMに登場したり、アイドルのような扱いを受ける選手もいます」といった環境下、見る側の目も肥えている。その中でどのような手ごたえを得られたのだろうか。


あらためて認識したチームコンセプトとプロ意識

 

――挑戦前に思っていたことはどれだけできましたか?

 

 行く前はもっとできないと思っていました。あまり試合には出られていないイメージで行きましたね。最初にうまくいった試合が多くて乗っていけるかとも思いましたが、体がもたないというか…。そんな時期もありました。
技術はもちろん大事ですが、体がもっと大事。自分のコンディションをどれだけ持っていけるか。自分のためにチームがあるのではなくチームのために自分のコンディションを合わせるというか…。自分のコンディションで試合をやるのではなく、勝つためのコンディションに毎試合持っていくのがプロの世界だというのを、すごく認識しました。
韓国のスケジュールは僕にとってものすごくタフなものでした。アウェイとホームの行き来も多くて…。日本では遠征に出たらその場にとどまって試合をしますが、韓国はより凝縮されているような感じを受けます。そこが大変でした。

 

――言葉や文化の違いの克服はどれくらいできましたか?

 

 韓国のチームは雰囲気を大事にする文化が濃いと思います。負けた翌日にそれを引きずってしまうようなときには、雰囲気の良し悪しをみんながすごく言います。それで乗っていけるかどうかがすごく大事でした。良かったのに急に落ちたり、悪かったのに急に上がるとかがあるので、チームのアップダウンを大事にしなければいけないと感じました。
僕はマイペースで自分のやりたいことをやって合わせていた部分もあるんですけど、最初はわからないことが多くて…。聞いてもわからないことも多かったですしね。多くを感じとって行動しなければいけないので、苦労しました。
言葉がわからないと戸惑いがあり、やっぱり気になりますよね。すごくそれがストレスにもなったりして。自分で勉強してわかるようになれたら一番なのですが、やっぱりメインはバスケなので語学留学のように勉強の時間がたくさんある状況でもなく、自己流で対応するのも難しかったです。
ただ、(言葉や文化の壁を)乗り越えたときに見える景色が絶対にあると思っています。だからハングルの勉強は粘り強く続けていきたいですね。

 

――中村太地の「ここは負けない」と思う点はできましたか?

 

 ないです…。まったくありません。自分が求めるレベルが高すぎたのかも知れないですけど、「あそこは決めておきたかった」、「もっとこうすればよかった」、「あそこでこうしていれば…」みたいなことが自分の中で多くて…。一つ一つの判断というか。
開幕当初に比べればもちろんよくなっている印象はあるんです。それでもやっぱり、自分の求める内容に達していなくて、まだまだ足りません。伸びた部分はあるんですよ。でも「これだけは負けない」と確立されたものはまだありません。そういう意味ではもろに食らった感じです。
日本にいたときも同じなのですが、「今年はこれができた」みたいな、手応えと収穫はありました。自然に自分の思い描いていたとおりにできたところもありました。

 

――このまま韓国で長期的なキャリアを考えていますか?

 

 ここで長年やるのは相当しんどいですね。慣れというのももちろん大事ですけど、その先に求める刺激も変わってくると思いますし。慣れた場所で成長して活躍というよりは、どんな環境でも力を出せるような生きざまが理想です。史上初と言うのも好きですし。だからいろんな環境に飛び込んで、自分でいろいろ感じて吸収していきたいです。
そういう気持ちなので、いろんな世界を知りたいですね。僕の知らない世界がいろいろとあると思うので、それを知るために実力をつけて成長していきたい気持ちが強いです。

 

――お疲れ様でした。


もう、僕も日本語が喋りたくて…。いろいろと話をするにも練習しておかないと(笑)

 

 中村はサイズとスキルを兼ね備えたビッグガードとして、日本代表としても活躍が期待される存在。原州DBでは日本人初のKBLプレーヤーとして#0のユニフォームで37試合に出場し、平均15分49秒の出場時間で4.6得点、1.9リバウンド、1.9アシストのアベレージを残した。既報(https://www.basketball-zine.com/taichimvp)のとおり、1月22日に行われた高陽オリオンとのアウェイゲームでは、その試合のMVPにも選出されている。
プレーヤーとしての成長はもちろんあるだろう。しかし会話していると、韓国でのさまざまな体験を通じて自らの生き方に自信をつけて帰ってきたような印象を受けた。今後の動向は未確認だが、去る2月22日にBリーグが開催したB.LEAGUE U18 TIP-OFF CONFERENCEにゲスト登壇者として参加した際には、ヨーロッパでのプレー機会のモサクを含め未だ目にしていない新境地での活躍を志向するようなコメントもしていた。スケールの大きな成長と飛躍に期待したい。

 

帰国報告のYouTubeライブでの中村(左)は木村嗣人(右=3x3 team WILL)との掛け合いで笑顔をはじけさせていた(画像をクリックすると公開中のYouTubeライブ映像を見られます)


取材・文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



タグ: KBL

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