月刊バスケットボール5月号

NBA

2022.03.17

2015年9月、ステフィン・カリーが初来日で見せた究極のプロフェッショナリズム

 今年の9月30日(金)と10月2日(日)にさいたまスーパーアリーナでNBA Japan Games 2022 Presented by Rakutenが開催されることが決まり、来日するゴールデンステイト・ウォリアーズのスーパースター、ステフィン・カリーがさっそく日本のファンに向けたメッセージを発信している。予定どおりならこの秋は4度目の来日となる。

 

 

 カリーが初めて来日を果たしたのは、レギュラーシーズンMVPに輝きチームに40年ぶり4度目のチャンピオンシップをもたらした2015年。『UA ROADSHOW featuring Stephen Curry』と題したアンダーアーマーのワールドツアーで、自身のシグニチャー・シューズであるカリー2のプロモーションが目的だったが、とにかく世界最高峰の王者となりリーグMVPに輝くにふさわしいプロフェッショナリズムを感じさせた滞在だった。

 

 まずすごかったのは究極的に過密なスケジュールだ。日本に降り立ったのは9月4日の未明。その数時間後の午前中にはさっそくアンダーカテゴリーの男子日本代表を対象としたクリニックを行っていた。集まったファンを前に、疲れをまったく感じさせない快活なインストラクターぶりを見せたあとは、当時の下村博文文部科学大臣を表敬訪問。さらにその後、いくつものメディアとのインタビューに応し、夜は関係者を集めての懇親会で締めて、その足で空港に向かい次の開催地へ飛んでいくという流れだった。

 

 しかし最も驚いたのは、この過密日程の最初に行われたクリニック中にカリーが披露したパフォーマンスだ。NBAのオフシーズンで、地球の反対側から飛んできたばかりのコンディションとはとても思えないキレッキレの身のこなしから多彩なフィニッシュで放たれるショットが、次々とゴールに吸い込まれていった。

 

 

 極めつけは、カリーが普段からよくやっていると紹介し、実際にその場でやってみせたシューティング・ワークアウト。これは右コーナー→右ウイング→トップ→左ウイング→左コーナーと5ヵ所の3Pエリアからそれぞれ3本連続でショットを成功させ、続けて今度は逆回りで5ヵ所から2本連続で決めて元の右コーナーまで戻り、さらに左から右へと1本ずつノーミス(5本連続)で成功させるゲームだった。最後の5連続は、1本でもミスしたら元の左コーナーに戻って始めなければならないルール。カリーはこれを3分半の制限時間内にやってみせると豪語し、「もしできなかったら腕立て伏せをします」と宣言した。

 

初来日時のカリー(写真/加藤誠夫 HOOP・月刊バスケットボール)

 

 さて、実際にこのワークアウトに臨んだカリーは、制限時間内にすべてのショットを成功できなかったのだが、3本連続×5ヵ所、2本連続×5ヵ所を決め抜き、最後の1本×5ヵ所の2つ目のスポットまで到達していた。3分半の間に放ったショットは45本。成功は33本で成功率は73.3%ということになる。来場したファンはその精度に度肝を抜かれ、カリーに大歓声と大喝采を浴びせていた。

 

 来日した当日朝のワークアウトで3Pショットを7割越えの確率で決めた後、驚きに包まれたコート上で、カリーは約束どおり腕立て伏せをしていたが、その律儀な姿勢を含め、カリーが見せたワークアウトやデモンストレーションは、プロ中のプロにしかできないエンターテインメントだった。

 

 その後2018年、2019年にいずれもアンダーアーマーのプロモーションツアーで日本を訪れているカリーは、この秋初めてチームを引き連れてやってくる。プレシーズンとはいえ実戦を戦う機会が2度ある今回は、2015年以上に熱気を帯びたエンターテインメントを披露してくれることだろう。

 

 

文/柴田 健(月バス.com)

(月刊バスケットボール)

 



PICK UP