月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2019.11.21

日本大豊山高でクリニックを開催した篠山竜青が高校生にエール「君たちの世代が八村塁たちの全盛期とプレーする」

 

 八村塁がNBAドラフトで指名され、9月には男子日本代表が13年ぶりにワールドカップを戦った。Bリーグも開幕から4シーズン目に突入し、日本バスケットボール界は今、大きな変化の中にある。

 

「僕が学生の頃にはプロというもの自体がなかった。でも、今の学生は『将来プロになる』という夢を持てる」。事あるごとにこの言葉を口にしてきたのは、日本代表、そして川崎ブレイブサンダースのキャプテン篠山竜青だ。

 

 11月18日、日本大豊山高にて、その篠山が現役高校生を対象にクリニックを実施した。Bリーグのシーズン真っ只中であり、この時期にこういったクリニックの開催は異例。毎週の試合や移動、練習などの負担を考えれば、わざわざこの時期にやる必要はなかったのかもしれない。それでも今、現役部活生に伝えたいことがあった。

 

 クリニックには日本大豊山高のほか、近隣の日本大鶴ヶ丘高、桜丘高から、50人以上の選手が集まった。内容はオフェンス、ディフェンスのそれぞれに1つのポイントに絞った練習の指導と、篠山本人への質問コーナー、記念撮影などを含めた約2時間。

 


(篠山の話を真剣な眼差しで聞く選手たち)

 

 その中で、印象深い言葉があった。それはクリニック冒頭、篠山が選手たちに最初に語ったことの一つだ。現在31歳、来年の東京オリンピックの時期には32歳を迎える篠山は「僕は多分、東京の次のオリンピックは狙えない。今は八村塁選手(ウィザーズ )と渡邊雄太選手(グリズリーズ)がNBAで、馬場雄大選手(レジェンズ)がGリーグで頑張っています。彼らが全盛期を迎えたとき、彼らと共に戦っているのは僕らではない。君たちの世代が、八村選手たちの全盛期とプレーする世代です」と、次代を担うかもしれない選手たちに力強いエール。

 

 

 さらに「現時点でのうまい、下手ではない。これから先、どれだけ成長するかで未来が変わってくる」と続け、最後には「進学の際に選んでほしいのは環境。充実した施設があって、しっかりとした食事が取れて。日大はオススメですよ!」と、さりげなく母校を宣伝。

 

 練習内容も、特にディフェンスの練習は実に篠山らしかった。常にハードにプレッシャーをかけ、ルーズボールにも飛び込む彼が、まず教えたのは対人ディフェンスについて。「ファウルになってもいいからハードに当たってボールを取りに行く」ことだ。それに対してオフェンス側はピボット(もしくは決められたエリア内でのドリブル)のみで、ボールを死守する。1セットの時間も短く、より試合に近い状況の中で追い込むスタイルだ。

 

 

 そのほかにもハーキーステップのドリル、オフェンスでは、フローターのスキルを伝授。これら練習法をセレクトしたのには、やはり世界で戦った経験から来るものもある。「世界のものさしと比べたときに日本はまだまだ。使える技術やテクニックは使ってほしい、早いうちから世界に目を向けてプレーすることも大切」と、篠山。

 


(真剣にプレーしながらも、選手たちの表情は楽しさにあふれていた)

 

「もっと大きな夢を持ってほしい。世界にいる自分たちと同世代の選手が、どういうモチベーションで、どういうことに取り組んでいるのかを知ることが大切。それも含めて、国内のトップであるBリーガーが今、後悔していることや学生時代にやり残したこと、やっておけばよかったことなどは発信していきたい」。これが冒頭に述べた篠山が今、伝えたいことであり、自分自身が痛感していることなのだ。

 

 篠山竜青の一言一言を真剣な眼差しで聞く選手たちにも、その思いは伝わったことだろう。今回のクリニックに参加した選手の中から将来、日本を背負って立つ選手が現れるかは分からない。

 

 それでも、世界と戦い、国内のトップクラブで活躍する選手と触れ合えたこと、生の声を聞けたことは参加した選手たちにとって大きな財産となるはず。

 

 Bリーガーがより身近な存在として、全国のバスケットに励む学生の間に浸透していくことを願うばかりだ。

 

 

(月刊バスケットボール)



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