月刊バスケットボール8月号

Bリーグ

2020.06.11

王者A東京のリーダー正中岳城、13年の現役生活にピリオド

 

 6月9日、A東京の正中岳城が現役を引退することが、クラブ公式HPにて発表された。2007年に青山学院大からA東京(当時トヨタ自動車)に入団した正中は、13シーズンにわたってA東京の中心選手として活躍。入団4年目の2011年からは10季連続でキャプテンを務め、常勝軍団をリードした。

 

 本日行われた引退会見に先立ち、その姿を間近で見てきたA東京の林邦彦社長は「アルバルク東京、躍進の功労者」と正中を讃えると「正中選手とは4年の付き合いになります。私が社長に就任し、初めてスポンサー様にご挨拶に行くとき、緊張している私に穏やかな関西弁で話しかけてくれたことは忘れません」と続け、キャプテンへの感謝を述べた。

 

 引退会見で、正中がまず口にしたのは感謝の気持ちだ。「JBLで6シーズン、NBLで3シーズン、Bリーグで4シーズン、合わせて13シーズンにわたってアルバルク東京でプレーし、毎シーズンをかけがえのないシーズンとして、多くの方々とともに戦い、素晴らしい時間を共にできたことに感謝申し上げたいと思います。スタッフ、コーチ、チームメイトと共に生涯忘れることのできない瞬間に巡り合い、かけがえのない素晴らしい時間を共にできたことに対し、皆様にお礼申し上げたいと思います」と一言一言を紡ぐように語った。

 

チャンピオンチームの中心には常に正中の姿があった

 

 A東京がBリーグ連覇を達成できた要因はエースの田中大貴や名将ルカ・パヴィチェヴィッチHCの存在が大きく影響していることは間違いないが、その裏には常に声を出し、チームの雰囲気を作り上げてきた正中の存在がある。引退を公にして以降、SNS等でチームメイトをはじめとする多くの選手から次々と感謝の言葉が寄せられたことが、何よりの証拠だろう。

 

 正中自身はキャプテンとして「この10年の間にもたくさんのリーダーがチームを引っ張ってくれました。僕が特別、大きなことをやったわけではありません。しっかりと目標を持ったチームだったことで大きなトラブルもなくここまで来ることができましたし、その時々にしっかりとしたリーダーと共にチームを導いてきたことが影響しています。今のチームにもたくさんのリーダーがいます。誰でも(キャプテンを)やれると思うし、やっていく必要があると思っています」と、これからのA東京への期待、自身の退団後にリーダーとなる選手たちへの期待を寄せた。

 

 明石高時代はほとんど無名の存在。その後も決して順風満帆のキャリアを過ごしてきたわけではないが、正中ほどのキャプテンシーを持った選手はそうそう現れるものではないだろう。13年間、常にプロフェッショナルであり続けた正中は、トヨタ自動車という大企業に復職し、次のキャリアに挑む。

 

 A東京入団時にもプレータイムが保証されない中で、あえて厳しい環境に身を置き、それを自身が成長する糧としてきた。ビジネスマンとしての再出発も大きなチャレンジだが、またいつか、正中がバスケット界に関わる日を期待しながら、この門出を見守りたい。

 

(月刊バスケットボール)



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