月刊バスケットボール6月号

Bリーグ

2021.05.21

【特別対談】篠山竜青がU18川崎のキャプテンへエール「自分の得意な部分以外でハードワークできる選手、切り替えができる選手になってほしい」

川崎ブレイブサンダースのキャプテン、篠山竜青選手が月バス本誌で連載中の『篠山センセーの上手くなりたきゃ、考えろ!』のコーナーで、U18川崎チームのキャプテン小泉駿之介との対談を実施しました。ここでは本誌に載せ切れなかった2人の掛け合いを含め、インタビューの全てを公開します。U18世代の悩みを篠山センセーがバシッと解決!

 

取材日/2021年4月7日

 

SPECIAL CROSS TALK

篠山 竜青 × 小泉 駿之介

 

––こういった対談は初めてだと思いますが、まずは篠山選手、小泉選手、今の心境を教えてください。

篠山 チーム以外の人と久しぶりに会えたなぁって感じですね、取材もオンラインが多かったので(笑)。ユースチームの子たちにもなかなか会えないので、こういう機会はありがたいですね。

小泉 …めちゃくちゃ緊張しています。昨日の夜は結構ぐっすり眠れたんですけど、学校から帰ってきて「今日が対談だ」となったときに一気に緊張してきました(笑)。でも、実際に篠山選手にお会いして、接しやすい雰囲気だったのでホッとしました。

篠山 良い回答ですね!(笑)

 

篠山の言葉の一つ一つが小泉(右)にとっては大きなものとなったはずだ

 

「トップチームという最終的に目指すべき存在が身近にいる環境は、すごく良い」

 

––Bリーグでは来季からU15に加えU18チームの保有もB1ライセンス取得の条件として加わります。篠山選手はこういった仕組みに関してどう思いますか?

篠山 やらなければいけないことだと思いますし、もっとスピード感が求められるんじゃないかなと思います。Bリーグが開幕して以降、さまざまな面でサッカーのJリーグがモデルになっているケースが多いと思います。どのJリーグクラブも欧州のクラブをモデルにユースのカテゴリーに力を入れているので、そういう前例があるからこそ、バスケット界はもっとそこに対してスピード感を持って取り組んでいかなければなりません。

 

––小泉選手はなぜU18川崎に入ることを決めましたか?

小泉 もっと高いレベルでバスケットをしたいと思ったのが素直な理由です。今はまだ部活動の方がレベルは高いですが、プロ選手になりたいと思っている中でこういったすばらしい環境で練習させていただけてありがたいです。

篠山 高校生になった当初は高校のバスケ部に入っていたの?

小泉 いや、最初から川崎U18に入っています。中学3年生になるときに部活動を辞め、セレクションを受けてU15チームに入りました。その後、今度はU18チームのセレクションを受けて、高校もここでやることになったという流れです。中学は市大会で1回戦負けとかで、推薦の話なども全くなかったのでユースチームでやろうと思いました。

 

––篠山選手は昨年のウインターカップ決勝では解説も務めましたが、高校界でもBユース出身の選手も多くなってきました。

篠山 僕が子どもの頃は本人はうまいのにチームが勝てず、最終的にはバスケットから離れてしまう選手をいろいろなカテゴリーで見てきました。Bユースの存在によってそうした選手を受け入れる間口が広がるというのはすごく良いことだし、日本のバスケット界の強化につながると思います。ちなみにU18チームはどれくらいの頻度で練習しているの?

小泉 週6回で3時間くらいずつ練習しています。緊急事態宣言中は少し短めでしたが、学校が終わって一度家に帰ってそこから練習に向かうのがいつもの流れです。トップチームという最終的に目指すべき存在が身近にいるので、そこを意識して練習できる環境はすごく良いなと思います。Bリーグの試合もめっちゃ見ます! 

篠山 おっ、試合も見てるんだね。結構、日本のバスケットを見ない子も多いみたいで、僕も学生の頃はどちらかというとNBAを見る機会が多かったし、米須(玲音)も同じ感じだと言っていました。ちなみに、川崎のユースチームはトップチームと同じ体育館で練習するので、選手同士の距離が近いのが特徴です!

 

米須は高校在学中に川崎でB1の舞台に立った。近年は特に若い世代の台頭が目覚ましい

 

––今、米須選手の名前が出ましたが、高校生世代の選手がトップチームでプレーしているのを見てどう感じましたか?

小泉 姉が米須選手と同い年なので、年が近いのにこういうすごい選手がいるんだなって思って見ていましたし、自分がユースチームでプレーしている中で同じ高校生がトップチームでプレーしている姿はすごく刺激になりました。

篠山 米須もしかり、バスケット界のレベルがものすごく上がっていると思います。特別指定選手制度というのはBリーグ初年度からありましたが、その制度を使って加入した選手が即戦力として活躍するというのはなかなかないことでした。でも、今はクラブ側が特別指定選手を戦力として獲得するのが普通になってきていますよね。

 これまでは高校の全国大会で結果を残して関東1部の大学に進み、そこで活躍した5、6人がトップリーグに入れるような仕組みでした。でも、高校でそこまでの結果を残せない、試合に出られない選手たちに対してBユースが受け皿になる仕組みができたことで、より多くの選手にプロを目指すチャンスを与えることができています。まさに川崎フロンターレが今、そういう時期に来ています。U24の日本代表にフロンターレのユース上がりの選手がたくさんいるので、僕らもそれを目標に活動していく必要があると感じています。

 特に都心は学生数が圧倒的に多く、うまいけど日の目を見ていない選手がたくさんいるはずです。そういう選手をどんどんすくい上げられればいいなと思います。

 

篠山自身が見てきたこと、直接経験したことがあるからこそ、言葉にも熱がこもる

 

「自分のプレーを振り返ることの積み重ねが自信につながり、迷いや悩みがなくなる」

 

––小泉選手は、U18川崎での学びの中で一番自分の身になっていることはどんなことだと感じていますか?

小泉 一番は大人と接する機会が多いことです。学校ではバスケットに関わるところだと顧問の先生とほかに数人ほどですが、ユースチームではコーチもトレーナーさんもたくさんいるし、体育館に入ればトップチームのスタッフさんともすれ違うことが多いです。小さなことですが、そういうときに挨拶などの礼儀がより身に付いたと思います。

篠山 回答が100点(笑)。プレーはどんな感じ?

小泉 僕はオフェンスがあまり得意ではなくて、どちらかというとディフェンスを頑張って試合に出してもらうような感じです。オフェンスをしているときに次に何をすべきか迷って止まってしまうことがあるが悩みです…。

篠山 オフェンスについては自分の試合の映像をいっぱい見るのが大事だと思うよ。その場面で自分が何を考えていたのかを思い出しながら、第3者目線で映像を見たときに、「このとき、こういう選択肢もあったな」とか「ここはシュートを打ってもよかったな」とか、一つずつ答え合わせをすることで身に付くことも多いから。改めて自分のプレーを見てどう感じるのか、分からないことがあればコーチに聞くとか、そういう習慣を身に付けるとオフェンスの改善にもつながるかなって。

 

––まずは自分自身を知ることが大切ということですね。

篠山 そうです。「悩むから人間なんだ」(書籍『親鸞と生きるー悩むから人間なんだー』より引用/紀野一義・PHP文庫)っていう言葉があるんですけど、悩むということは考えてやろうとしているということ。「悩んだらダメだよ」って言うのは簡単だけど、悩むことで成長する部分もあるので一概に悪いことではないと思います。あとは先ほど話した振り返りの大事さを学んで、その積み重ねが自信につながって迷いや悩みがなくなる。そうするとオフェンスの楽しさがもっと分かってくるはずです。

 

「出だしからフルスロットルでプレーして相手にファーストパンチを与えよう」

 

––ここからは小泉選手から篠山選手への質問タイムにします!

小泉 今年、U18チームのキャプテンになったのですが、篠山選手がキャプテンとして練習中や試合中に意識していることを教えてください。

篠山 うーん、逆に今はどんなことを考えているの?

小泉 みんなを引っ張れたらいいなって思っていて、キャプテンでなくても声出しなどはすると思うんですけど、人一倍声を出すとか、そういうことを意識しています。

篠山 一緒だよ、それそれ。正解です! トップチームの佐藤賢次HCも「全員がリーダーシップを持てるチームになろう」っていうことを大事にしていて、自分自身もそう思っている。その中でキャプテンとして一番声を出して、明るいエネルギーをチームに与えられるように意識しているから、一緒!

小泉 ありがとうございます。二つ目に今、手首のケガをしてしまっているのですが、ケガをしたときの立ち直り方や、練習ができないときに、どういうモチベーションで過ごしているのか教えてください。

篠山 リバビリの期間ってケガをしたところ以外の部分を上達させるチャンスだと思っているんだよね。元気なときってどうしても目先のこと、今自分の調子が良いのか悪いのかを考えがちだけど、ケガをすると普段のような練習ができなくなるからそういう考えがなくなるじゃん。もっと長い目で見たときに今自分に足りないものは何なのかを考えて、それを上達させるチャンスなんだよね。自分自身、スネを骨折したときは股関節周りと肩甲骨周りの柔軟性を上げるトレーニングをして、左肘を脱臼したときはひたすら右手のハンドリングの向上を目指して取り組んだりとか。自分の伸ばしたいところにフォーカスできるチャンスだと思って過ごすと前向きになれると思うよ!

小泉 もう一つ、試合への気持ちの持っていき方をどうしているのか聞きたいです。今、試合をするときに出だしがすごく悪くて、そういうときに自分も周りも盛り上げるのにやっていることはありますか?

篠山 悩みのレベルがほぼ一緒だなぁ(笑)。出だしが悪かったり、緩くなるときってちょっと様子見をしていたりするのが影響しているんだろうなと感じていて、逆に良いときは開き直って「やるしかない」っていう心の持ちようの差だと思うんだよね。トップチームの前半戦の課題も入りの悪さで、そういうときによく言っていたのが“フルスロットル”と“ファーストパンチ”っていう言葉。「とにかく最初から全力で、最初の3分でフルエナジーでプレーしてその結果、ファウルが込んでも息が上がってもいい。そうしたら一度代えるから」って。出だしからフルスロットルでプレーして相手にファーストパンチを与えようって。そうなると交代で出た選手もそのエナジーをつないでプレーしてくれるんだよね。その悩みってトップチームでも同じだから、今言ったことをユースチームでもぜひ浸透させてください!

小泉 分かりました。ありがとうございました!

 

いつの日か、このマッチアップがリアルになる日が来るだろうか?

 

「もっとうまくなって、ここにたどり着きたい」

 

––篠山選手からU18世代の選手へ「これを身に付けておくべし!」というものがあればアドバイスをお願いします。

篠山 高校生くらいになってくるとうまい選手は本当にうまいし、トップリーグでプレーするような選手も出てきます。だからこそ、調子が悪い日に何ができるのかです。シュートがうまいのもハンドリング技術が高いもの分かったけど、「じゃあ君は調子が悪い日に何ができるのか?」。その答えを持っておいてほしいです。ディフェンスであったりルーズボールだったり、ミスをした後、自分が納得のいかないプレーが起こった後に何ができるのかが重要です。僕自身、いろいろな経験をしてきた中で思うのは、ミスをしたときにその選手がどんな顔をしているのかって意外とみんな見ているぞってことです。

 一目散にディフェンスに戻っているのか、それとも歩いているのか、審判の文句を言っているのか。ハイライトプレーは多いけど、一試合通して見たら全然ディフェンスをしない選手だったとか。もったいないなって思いますし、それを見られていることを理解して頑張れる選手になってほしいです。そうなれれば絶対に誰かが見ていてくれる、最終的にはそれができる選手が生き残っていくんです。そういったメンタルを高校生のうちに持ってほしいし、逆にそれ以上先にはこういう部分を変えるのは難しいですよ。いくらプロになってから指摘されてももう変えられないんですよ。10代のうちに自分の良さを伸ばすことも大事ですが、それと同時にほかのところでハードワークできる選手、切り替えができる選手かどうかは大切な要素だなと思うので、それができる選手になってほしいですね。

 じゃあ、最後に駿之介の今後の目標・夢を教えてもらって締めにしましょうか!

小泉 昨年はコロナ禍で試合がほとんどありませんでした。今年は試合が増えていくと思うので、チームとして勝ちたいです。僕が中学3年生の頃に出場した「B.LEAGUE U15 CHAMPIONSHIP」では1勝もできなかったので、まずは公式戦で1勝すること。そしてもっとうまくなって、最終的にはここ(川崎)にたどり着けたらなって思っています。

 

 

対談写真/山岡邦彦

取材・文/堀内涼(月刊バスケットボール)



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