月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.03.26

八村 塁(ウィザーズ)、3.26ニックス戦でジュリアス・ランドルにリベンジなるか?

 

「ランドルにやられた」とブルックスHC


マンハッタンエリアで1日おきに3試合をこなす“ニューヨーク・ロードトリップ”の最終日となる日本時間3月26日(アメリカ時間25日)に、2日前に続くニューヨーク・ニックスとの“シリーズ第2戦”を戦うワシントン・ウィザーズ。113-131で敗れた前回の対戦では八村 塁とニックスのオールスター・フォワード、ジュリアス・ランドルとのマッチアップが一つの焦点として挙げられていたが、今回もそれは一つの注目ポイントになるだろう。
前回の対戦では、試合開始から最初の4分間だけみれば、チームとしてのウィザーズも八村も、なぜ負けたのかわからないような良い入り方をしている。14-8とリードしたその時間帯に八村は5得点2リバウンド(どちらもオフェンシブ・リバウンド)を記録していた。しかしラッセル・ウエストブルックが2本のフリースローをはずした第1Q残り8分から流れが悪くなった。このタイミングでニックスはエルフリッド・ペイトンに代えて直近5試合で好調を保っていたアレック・バークスを投入し、その後じりじりと点差を詰め、追いつき、一気に突き放していった。
その中で八村とランドルのマッチアップに注目すると、ランドルの37得点という数字を見れば十分対抗できたとはいいがたい。スコット・ブルックスHCは試合後の会見で、八村の名前を挙げることはなかったものの、「ランドルはフロアのいたるところからショットを決めていました。1本目も2本目も…彼らは我々がいないように感じていたでしょう(Randle was making shots all over the floor. First one, yeah, second one. They didn’t feel us.)」とディフェンス面の不出来を指摘した。

 

ブルックスHCは対ニックス戦でのウィザーズのディフェンスに厳しい評価をしていた


ただ、八村も11得点を奪い6試合連続で2ケタ得点記録するとともに、チームハイの7リバウンドと数字上はまずまず。また、ディフェンス面でもランドルとの真っ向勝負で、相当できた部分もあったと感じられる内容だった。

 八村はティップオフ直後からランドルとマッチアップし、ピックに対してスウィッチを行うウィザーズのチームディフェンスの中でRJバレットやエルフリッド・ペイトンらガードに対応する場面も多かった。また第3Q半ばからは身長213cmのセンター、ミッチェル・ロビンソンとフォワード・センターで身長208cmのナーレンズ・ノエルにマッチアップしていた。
ランドルはその第3Q半ばまでに30得点以上を稼いだが、その主なダメージは10本中7本を成功させた3Pショット。「昨オフにシューティングに多く時間を費やして自信をつけた」というランドルは、この日の試合を終えた時点で昨シーズン27.7%だった3P成功率を14ポイント以上向上させ、今シーズン42%台の数字を残している。アテンプトも3.6本から4.7本へとアベレージで1本増加。これはどちらもキャリアハイだ。従来はたくましく屈強な体を使ってぐいぐい押し込む強さと、レフティーであることが大きな武器だったが、今やレンジが伴い、相手ディフェンスをアウトサイドに引きずり出せるプレーヤーに成長している。

 

試合後の会見に対応したランドルは、自身の3Pショットの向上に自信を見せていた

 

ドライブは止められたが3Pショットにコンテストできなかった


この日の八村のディフェンスでランドルの3Pショットを止められなかった理由の一つは、十分なコンテスト(ショットのコースを変えるためにシューターに接近して阻止するディフェンス)がなされていなかったことだ。特に第1Q、ティップオフから約5分半で10得点を奪われた流れでは、シューティング・モーションに入ったランドルに厳しくコンテストできたケースが1本もない。まさにブルックスHCのコメントどおりの状態だ。
ランドルの技能は光っていた。少しでもクローズアウトが遅れれば躊躇なく3Pショットを狙う。八村がピックにかかったと見れば、インサイドで待つビッグマンとの間合いを図りながらオープンショット。スクエアアップした状態では巧みなジャブステップでタイミングを外して、やはりオープンルックを作り出す。こうしたランドルの技に八村は苦戦した。
ただしこれらの中で、フィジカルなやり合いでは、ランドルが力で押し込んできても簡単に決めさせない強さを見せていた。第1Q残り5分30秒にランドルがトランジションからフィニッシュに持ち込んだ場面では、レイアップにうまくコンテストしてファウルすることなく得点を阻止。第2Q残り6分40秒に右ハイポストでランドルをカバーした際には、激しいポジション争いの後ボールを入れられたものの、ゴールとランドルの間に立ちはだかりドライブさせなかった(ジャブステップからミドルを打たれたがミスショット)。
残り3分20秒以降第2Q終了までにランドルとの1対1勝負の機会が2度あり、最初はクロスオーバードリブルで押し込まれフェイドアウェイジャンパーで得点され、次の機会は強烈にコンタクトしてきたランドルを八村がそれ跳ね返して対抗し、ミドルジャンパーを失敗に終わらせている。
八村はランドルとのマッチアップで、ドライブからのレイアップを簡単に許していなかった。やられたのは残り5分50秒のマッチアップで、ハイピックに来たミッチェル・ロビンソンについていたモー・バグナーとスウィッチしたときだけだ。対峙した相手が八村からバグナーに変わったところで、ランドルはアグレッシブなドライブを仕掛けゴールを奪っている。
その部分が八村のディフェンスでのポジティブと捉えられるが、ランドルは前半終了時点で21得点(フィールドゴール成功率57.1%、3P成功率75.0%)で±が+19。試合は49-69の20点差までになっていた。続く第3Qは、このクォーターだけ16得点を奪ったランドルを軸にニックスが30点以上の大量リードを積み上げ、勝負をつけてしまった。
つまり、そのポジティブだけでは不十分ということだろう。この日の結果は「オールスター・レベルになりたいなら、ドライブを止めるだけではなく3Pショットも打たせないようにならなければいけない」というメッセージとしても受け止められる。そんなディフェンスが次のニックス戦で見られるか、またしても見どころのある試合になりそうだ。

 

文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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