月刊バスケットボール5月号

NBA

2021.02.01

八村 塁も貢献、ウィザーズが奇跡の残りハチ秒大逆転で今シーズン4勝目


NBAのオールドファンならば、“ミラータイム”というフレーズになじみがあるだろう。若い世代にもわかってもらえるかもしれないし、そうあるべきだとも思う。

 これはインディアナ・ペイサーズのレジェンドで3Pショットの名手として知られるレジー・ミラーが、大一番の重要局面で類い希な勝負強さを発揮してたびたびペイサーズに勝利をもたらしたことから、そんなミラーの活躍ぶりを指す表現として世界中のファンの間で定着したフレーズだ。

 最も有名なのは、1995年のNBAプレーオフ、ニューヨーク・ニックスとインディアナ・ペイサーズの間で行われたイースタンカンファレンス・セミファイナル第1戦ではなかろうか。アメリカ現地時間の同年5月7日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたこの試合、99-105のペイサーズ劣勢で迎えた第4Q終盤残り18.7秒からのわずか8.9秒間にミラーは一人で8得点を奪い、ペイサーズを107-105の大逆転勝利に導いたのだ。パトリック・ユーイングらニックスの面々の愕然とした表情や、コートを取り囲む大観衆の騒然とした様子がいまだに忘れられない。
しかし今日(日本時間2021年2月1日、アメリカ現地1月31日)からは、「第4Q」「終盤」「8秒」「逆転」ときたらワシントン・ウィザーズがらみのフレーズが連想されるようになるかもしれない。この日ワシントンD.C.のキャピタルワン・アリーナで行われたウィザーズとブルックリン・ネッツの試合で、ウィザーズが残り12.3秒から141-146の劣勢をはね返し、149-146で奇跡的な勝利を手にしたからだ。
しかも記録上は“ミラーの8.9秒”より短い8.1秒間の逆転劇。ブラッドリー・ビールが距離の長いスリーを沈め、直後のインバウンドパスをギャリソン・マシューズがスティールし、マシューズからのパスを受けたラッセル・ウエストブルックが逆転のスリーを沈め、最後はビールがフリースロー2本を決めて勝利を決定づけるというエンディングだった。
この約8秒間に八村 塁の名前は出てこないのだが、実は八村の大きな貢献に触れずしてこの日の勝利は語れない。試合全体のスタッツとしても八村は9得点、5リバウンド、2アシストで、戦列復帰後2試合目として決して悪くない。しかし何より重要なのは、第4Q残り2分を切ってからの攻防で5得点を奪ったことだろう。
八村は残り1分26秒に136-139と3点差に迫る追撃のフリースロー2本、そして残り1分10秒には、139-141とさらに点差を縮める大きなスリーを成功させていたのだ。これがなければ当然、ウィザーズの勝利はなかった。
この試合を見て、ついつい1995年のあの試合の映像も見始めてしまった。やっぱり何度見てもものすごい。もう26年前の出来事なのに、今見返してもミラーの輝きにはゾクゾクさせられる。

 今から26年後、この日のウィザーズ対ネッツ戦の映像を同じような思いで目にする人々がいるに違いない。生きていれば私自身ももちろんだ。その人々に、「ミラータイム」に代わるフレーズを用意するとしたら何だろうか…。「ビールタイム」だと“ミラータイム”の後継フレーズとしてある意味おもしろそうだが、それではマシューズとウエストブルックが入らないし、ぜひとも八村も想起させられるフレーズであってほしい(汗) 残りハチ秒を何とか入れ込んで…。書き終えるまでに結局考えつかなかった。良い案が出てきたら発表させていただくとしよう。

 ウィザーズはこれで今シーズン4勝目。そのうち2つはネッツからのものだ。


文/柴田 健(月バス.com)
(月刊バスケットボール)



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