月刊バスケットボール6月号

NBA

2020.04.03

【コービー・ブライアント追悼コラム】2.24 Celebration of Life

ヘリコプター墜落事故の衝撃から1ヶ月も経たない2月24日、コービー・ブライアントを含む事故の犠牲者9人の追悼式『Celebration of Life』がステイプルズ・センターで執り行われた。まさかの事故からこの追悼式、そして現在の新型コロナウイルス感染拡大によるNBAシーズンの中断。ファンにとっては受け止めるのが難しい状況に違いないが、ここではその式典の状況を振り返りつつ、コービーへの想いを綴りたい。

文=なんでも鑑定団鑑定士(ペンネーム)

 

2月24日の告別式で来場者に配布されたアイテム(著者所持品)

 

自身の歴史そのものだったコービー、やすらかに…

 

 私がロサンジェルスに移住したのは1993年。コービー・ブライアントがレイカーズに入団したのが1996年。当時学生だった私は、ベンチから登場するこの若者に目を奪われていた。荒削りだけど…なんだか明らかにスゴい。私にとってコービーとレイカーズの歴史は、自身のロザンゼルスにおける歴史そのものだった。

 

 追悼式典が行われたステイプルズ・センターは最大で約2万人を収容できるのだが、それでもこの式典の入場チケットを入手できたのはレイカーズチーム関係者、シーズンチケット所有者、そして抽選で当選したごくごく一部のファンのみだった。ロサンジェルスの人口は1000万人。世界には4億人以上のバスケットボール・プレーヤーがいると言われている。それを考えれば、会場に足を踏み入れられたことは非常に運が良かった。

 

 入場にはスマホ端末の携帯アプリを使わなければならなかった。チケットを一切転売できない仕組みになっており、行き届いたマネジメントの下で執り行われた式典は、厳かに進行した。

 

 2月24日はアメリカでは平日(月曜日。日本では天皇誕生日の振替休日)で、しかも追悼式は午前10時から。それにも関わらず、ステイプルズ・センターの周辺は多くのセキュリティーに囲まれ異様な雰囲気だった。チケット保有者以外は会場に近くことすら許されない。

 

 場内は当然のごとく満席。入場時には、来場者全員に追悼式記念グッズが配布された。Tシャツと全26ページの写真集、記念チケットにピンバッジという4点セットだった。

 

 後日談だが、閉式後にオークションサイトで出品されたこれらの非売品アイテムに、会場に行けなかったファンの申し込みが殺到するという出来事があった。某有名オークションサイトでは、一時5,000ドル(約550,000円)まで金額が跳ね上がった例が出るほど熱を帯びたため、告別式記念グッズを出品禁止とする措置を取っている。それだけコービーへの思いが強いファンが、世界にたくさんいることを改めて感じさせるエピソードと言えそうだ。

 

 式典の内容については様々なメディアを通じて知ることができるので、ここでは割愛させていただく。ただ、オープニングを飾ったビヨンセのパフォーマンスから、ヴァネッサ・ブライアントをはじめシャキール・オニール、マイケル・ジョーダンら近親者による追悼のスピーチまで、真に心が動かされる式典であった。

 

 コービーの死を目の当たりにして、あらためて命の大切さを感じ、1日の重みを心に刻んでこれからの大変な時代を生き延びようと思うようになった。

 

 それにしても、今の世界情勢は皮肉にさえ思える。もし、コービーの事故よりも先に新型コロナウイルスの流行が来ていたら…。運命は全く異なる世界を我々に見せてくれているのかもしれない。

 

あまりに早すぎる別れを惜しんで…

R.I.P Kobe Bryant

 

<著者プロフィール>

著者:なんでも鑑定団鑑定士(ペンネーム)

バスケットボール専門店SLAM代表。アメリカ在住30年。クリッパーズのシーズンチケット所有歴18年(1999〜2017)からの、レイカーズのシーズンチケット所有歴ピカピカの一年生…。

 

 

コービー追悼特設ページ『Dear Kobe Bryant』

↑画像をクリックして特設ページへ↑

 

(月刊バスケットボール)



PICK UP