川崎のクラブハウスはアイスバス完備遠征にもバスタブ持参の“完全武装”
アイシングは従来からスポーツの世界でも広く実施されており、決して新しい知識ではない。バスケットボールでも、熱中症などを防止するための体温コントロール、突発的なケガへの応急処置や故障予防、疲労回復などの用途で広く実践されている。練習や試合で激しい運動をすることで毛細血管が切れて、炎症を起こしたのと同じ状態になった関節や筋肉を、局所的に冷やすことで血流を抑えてリカバリーを促進する効果を期待するのがアイシングの原理。専門的な知識は別として、ユース世代にもアイシングという言葉を知っている選手は増えてきているかもしれない。ただし、実際に日常の活動に取り入れている例はそれほど多くはないというのが現状ではないだろうか。
無論プロレベルでは、アイシングは盛んに取り入れられている。今年1月、「ロックアイス」を販売する小久保製氷冷蔵株式会社とBリーグがパートナーシップを発表したのも、氷ならではの“冷やすチカラ”でBリーグが掲げる「バスケで日本を元気に!」をサポートしようという考えが背景。そして実際に、多くのBリーグクラブが「ロックアイス」を活用したアイシングを実践しているのだ。
今回取材させてもらった川崎のクラブハウスには、板状の「ザ・板氷」を山ほど収納したフリーザーがあり、浴場にはアイスバス専用のバスタブも設置されている。選手たちは痛みや疲れを感じる部位に直接アイシングをしたり、冷水と「ザ・板氷」を入れたアイスバスと熱めのお湯に交互につかる交換浴など、日常的にアイシングを行っている。

フリーザーには大量の「ザ・板氷」などが常備されている

川崎のクラブハウスに設置されたアイスバス専用のバスタブ
ケガや故障でバスケ人生を左右されないために
取材当日は篠山竜青、野﨑零也、米須玲音の3人に、アイシングについてそれぞれの取り組みや考えを聞かせてもらった(下記参照)。おおむね共通している点は、ケガや故障の有無と無関係に、アイシングによって身体的なコンディションの改善が期待できるということ。また、篠山と米須は大きなケガという代償を経てアイシングの重要性を強く認識したことが共通している。篠山はワールドカップ2019に参加している間に左足親指を骨折し、最後の2試合を欠場したが、そこでアイシングを取り入れたリハビリを経て短期間での復帰を実現した。米須は大学1年生のときに特別指定選手として川崎に在籍した期間に右肩脱臼。復帰に向けた取り組みの中でアイシングを活用した。
野﨑も、学生時代に軽度のねん挫でアイシングを行ったことが初歩の知識を得るきっかけだったようだ。自らのケガをきっかけにアイシングを取り入れた彼らは、口をそろえるように「次世代にはばたく若い子たちには、ケガやアクシデントに遭う前にアイシングの重要性に気付いてほしい」と訴える。
一方で、アイシングは「ロックアイス」を使ってとても簡単にできる。下記に紹介する3人の言葉に耳を傾け、アイシングを実践してみてはどうだろう。「重要性に気付いた者勝ち(篠山)」「ケガしてプレーできなければライバルに差をつけられる(野﨑)」「人から見えないところの努力が大事(米須)」──実力者たちこんな言葉を聞き逃さず、ぜひともあなたの飛躍の糧としていただきたい。

川崎のクラブハウスに設置されたアイスバス専用のバスタブ